「人民の、人民による、人民のための政治をもたらそう!」

米政界にも「イジメ」があるようだ。

「ヒラリーとその金持ちで権力のあるエリートの一味は私を追いかけ『黙って決まったことだけを守っていろ。さもないと破滅させるぞ』と言っている。しかし、我ら人民(合衆国憲法の書き出し)は黙ってはいない。一緒に民主党をあるべき姿に取り戻し、人民の、人民による、人民のための(リンカーンのゲティスバーグ演説の一節)政治をもたらそうではないか」

ハワイ州第2区選出の民主党下院議員で、来年の大統領選に名乗りを上げているトゥルシー・ギャバードさんが21日こうツィッターで訴えた。



(トュルシー・ギャバードさんの公式ツイッターより)

ツィッターには彼女のビデオメッセージもついており、ヒラリー・クリントン元国務長官は前回2016年の大統領選で自分が民主党内でヒラリー元長官の対立候補であったバーニー・サンダース上院議員を支持したことを今だに根に持って、大手メディアと一緒に私の追い落としを図っているが、私は負けないと言っている。

「(ギャバード氏は)ロシアの戦力なのです」

ヒラリー・クリントン氏
ヒラリー・クリントン氏
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これに先立つ18日、クリントン元長官は民主党系のポッドキャストのインタビューに対してこう語っていた。
「彼ら(ロシア)はまた第三党を使って選挙妨害をするでしょう。今から予言するつもりはありませんが、彼らは民主党から大統領候補に名乗りを上げている者に目をつけて『彼女』を第三党の候補者に仕立てると思います。彼女はロシアから好まれていてウエブサイトやボットを使って『彼女』を支持してきています。彼女はロシアの戦力なのです」

クリントン元長官は名指しこそしなかったが、現在民主党の大統領候補に名乗りを上げている『彼女』は5人いるが、記者団が元長官の報道官に「ギャバードさんのことか?」と問い詰めると「マトリョーシカ(ロシアの入れ子人形)のようにぴったりはまったらね」と否定しなかった。

というのもその前日の12日、ニューヨーク・タイムズ紙は「トゥルシー・ギャバードはいったい何を目論んでいるのか?」という記事を掲載し、その中でギャバードさんが米国の孤立主義を支持していることについて「トランプと同じ路線だ」と批判、またロシアの通信社RTが泡沫候補のようなギャバードさんのことをよく取り上げると暗にロシアの支持を受けているかのように伝えていた。

サンダース氏を支持してヒラリー氏と対立

ギャバードさんはバーニー・サンダース上院議員を支持
ギャバードさんはバーニー・サンダース上院議員を支持

確かにギャバードさんは米国の海外の紛争への関与に否定的で、15日行われた民主党候補選びの討論会でもシリアからの米軍撤兵について問われると「ニューヨーク・タイムズ紙やCNNは、私たち帰還兵が政権転覆のための戦争を止めるよう主張するのを中傷している」と自説を強調していた。

ギャバードさんは38歳のサモア系のヒンドゥー教徒で、ハワイ州議会議員などを務めた後2013年以来下院議員を務め、この間ハワイ州兵としてイラクやクエートへ派兵され現在も予備役の陸軍少佐だ。その中東での経験から「他国の政権交代に手を貸すべきではない」と米国の海外の紛争への介入は否定的で、一昨年には議会の承認を得た上でシリアへ渡航してバシャード・アサド大統領と面会し対シリア強硬派から批判されていた。

また、2016年の大統領選では民主党全国委員界の副委員長になったが、バーニー・サンダース上院議員の支持を表明して辞任しヒラリー前長官とは対立する立場になった。

ギャバードさんの支持率は21日現在1.2 %で 民主党の大統領候補に選ばれる可能性はほとんどないと言って良い。また「第三党からの出馬は考えていない」と言明している。それなのに、ヒラリーさんやマスコミからの今回の攻撃は民主党内では大方と異なる主張をする異端児に対する「イジメ」にも見えるのだが。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

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木村太郎著
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理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。