“完全無所属”で圧勝も「無所属の限界感じたら・・・」

「私に与えられたこうした使命というものを自覚して、県民のため、国家国民のために全力を尽くしてこれからも頑張ってまいります」

参議院埼玉選挙区の補欠選挙の投開票が10月27日に行われ、8月まで4期16年に渡り埼玉県知事を務めてきた上田清司氏が、NHKから国民を守る党の立花孝志党首を破り当選を決めた。上田氏は衆院議員だった2003年以来16年ぶりの国政復帰となる。

当選した上田清司氏(10月27日)
当選した上田清司氏(10月27日)
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この選挙戦では、上田氏が“完全無所属”の立場を強調する一方、立憲民主、国民民主の両野党は県連が上田氏を自主的に支援した他、自民党は独自候補の擁立を見送るという、異例の事実上“相乗り選挙戦”となっていた。

当選を決めた27日夜、上田氏は記者団から、今後、特定の政党に所属するかについて聞かれると、「無所属での限界やパワー不足を感じたらそういうこともあるかもしれない」と述べ、当面は無所属で活動するものの、今後について含みを残した。

憲法改正は「旗を振る立場にない」

上田氏の今後の動向に注目が集まるのは、参議院で改憲勢力と非改憲勢力がせめぎ合っているためだ。参院では改憲勢力が憲法改正の発議に必要な3分の2に足りていないため、憲法改正の議論に前向きな上田氏の動向が一つのカギとなる。

上田氏は27日夜、改憲について「旗を振る立場にはないと思っている」としたものの、「大きな議論を展開していく必要がある」と指摘、さらに安倍政権下での改憲については「政権下であろうとなかろうと良い議論をするのは大事」と述べた。

自民党の下村選対委員長は同日夜のコメントで「今後、憲法をはじめとする国政上の諸課題について、活発に議論を交わしていくことを大いに期待したい」と秋波を送った。翌28日、自民党の二階幹事長は上田氏について「党としても全面的にお支えしていきたい」と持ち上げた上、上田氏が自民党入りを希望した場合の対応について「その時点で考えます」と述べた。

これに対し立憲民主党の福山幹事長は上田氏について、「野党側と是非しっかりコミュニケーションをとっていただいて、我々もご指導をいただきたいと思うし、ともに協力していただくことを望んでいる」と、こちらもラブコールを送った。上田氏をめぐる与野党の綱引きが早くも始まった格好だ。

5人に1人しか投票せず・・・異例の低投票率

一方で、この選挙は“不名誉”な形でも大きく伝えられることとなった。投票率が20.81%という異例の低水準にとどまり、国政選挙でワースト4位を記録してしまったのだ。奇しくも過去最低は同じく埼玉県で1991年に行われた参院補欠選挙で17.80%である。

有権者5人に1人しか投票しないという異常事態の原因はどこにあるのか。県の選挙管理委員会のHPでは、啓発を目的に、人気漫画に登場するキャラクターが「また選挙か・・・」とつぶやいているが、7月の参院選挙から立て続けに、8月の県知事選挙、そして10月の補欠選挙と、有権者がまさに「また選挙か」と「選挙疲れ」を起こしたのかもしれない。
選挙期間中の週末に、台風19号の影響で一部の期日前投票所が一時的に閉鎖されたことの影響もあるだろう。

NHKから国民を守る党の立花孝志党首(10月27日)
NHKから国民を守る党の立花孝志党首(10月27日)

しかし、最大の要因は、政界から「対決構図にならないと投票率が低くなる(与党幹部)」
「構図が問題だ。与党も候補者を出していないし、相手はNHKから国民を守る党だ(野党幹部)」という声が挙がるように、与野党の対立構図が成立しなかったため、争点が曖昧になってしまい、有権者が関心を持つことが出来なかったとの分析がある。

上田氏は異例の低投票率について「ほとんど報道されることなく、大半の人が宣伝カーにもすれ違ったことがなかった。残念だがやむを得ないと思っている」と述べた。さらに「こうした低投票率の中でも信任、付託を受けたことを十分意識して頑張っていきたい」と厳しい表情で強調した。

与党が独自候補の擁立を見送るという異例の構図で行われた埼玉補選だが、結果、有権者とは「遠い世界」で行われる形となり、なんとも後味の悪い選挙戦になってしまった。

(フジテレビ政治部 佐藤友紀)

佐藤友紀
佐藤友紀

フジテレビ報道局政治部