相次ぐ自然災害への対応

10月に入り、安倍首相の生活は、臨時国会に対応する仕様にガラリと変わりました。一方で、10月は台風などによる相次ぐ豪雨被害への対応にも追われる毎日でした。

9月に発生した台風15 号では、“政府の初動対応に問題があったのではないか”と報道陣や野党側から指摘されたこともあり、政府としては、今度は抜かりなく盤石な災害対応をアピールしたい考えでした。

そんな最中の12日に台風19号が上陸し、全国各地で甚大な被害が発生しました。これを受け安倍首相は、週明けの17日木曜日に福島県と宮城県へ、その3日後21日の日曜日にも長野県を視察しました。この日、首相は午前8時半すぎに都内の私邸を出て、自衛隊のヘリコプターで長野県に向かい、長野市の千曲川周辺を上空から視察し、広範囲にわたる水害の様子を目の当たりにしました。

その後、今度は陸路で千曲川の堤防が決壊した現場に足を運びました。ここで安倍首相は、千曲川周辺で犠牲となった2名に対し黙とうを捧げ、国土交通省の職員から当時の被害状況や現在の復旧状況について、パネルを使って説明を受けました。

「あっ!安倍さんだ!」大喜びの子どもたちとゲームも

続いて訪れたのは、長野市内にある避難施設でした。避難所内での撮影ができなかったため、記者団は窓からその様子をのぞき、総理が何をしているのか伺おうとしていたところ、避難所の外で遊んでいた3人の子供たちが「何を見てるんですか?」と近づいてきました。彼らも窓から総理の姿を確認するや否や、「安倍さんだー!」と言って、外で遊ぶのをやめて全速力で避難所内へ駆けこんでいったのです。

黒ひげゲームをする総理と子供たち:首相官邸ツイッターより

その子供たちと避難所の外で会うことができたため避難所内での様子を聞いてみると、「安倍総理大臣と一緒に、10回くらい黒ひげ危機一発のゲームをした!」と笑顔で語ってくれました。

このゲームは、「黒ひげくん」と呼ばれる海賊の人形を樽にセットして、剣を樽に刺していき、人形が飛び出した人が「負け」というルールの人気玩具ですが、子供たちによると、総理が刺した剣で黒ひげが飛び出した場面もあったということで、その時総理は「あぁ~」と落胆していたと話してくれました。そのほか、写真撮影にも応じてくれたということで、子どもも含め被災者に寄り添う姿勢を鮮明にした形です。

「即応予備自衛官」も活躍

安倍首相は、避難所内で被災者を激励した後、入浴サービスにあたる自衛官を前に、「入浴は疲れがとれるし、不安な気持ちの中で癒しの場にもなる。皆さんも大変ですがよろしくお願いしたい」と激励しました。

この自衛官たちは、「即応予備自衛官」と呼ばれ、普段は企業などで働いているいわゆるサラリーマンですが、招集がかかると各地の陸上自衛隊と合流し、現役自衛官と同様の任務にあたります。

政府は、台風19号の被災対応として即応予備自衛官と予備自衛官を当面200人、最大1000人招集すると決めています。即応予備自衛官の招集は、2018年の北海道胆振東部地震以来で、1997年の制度創設以来5度目の招集でした。

『これからどうなるのか不安だ』との切実な声を聴いた

そして午後、安倍首相は長野県庁で阿部守一知事と会談し、被災者の生活やなりわいの再建をはじめ、決壊した堤防や北陸新幹線などの迅速な復旧に向けた財政支援の要望を受けました。

総理は視察後、記者団に対し「被災者の方々から『今の状況も大変だが、これからどうなるのか不安だ』と切実な思いを伺った。発災から1週間が経過をしたが、被災者の生活となりわいの再建は待ったなしだ。農林水産業・中小規模事業者達が事業再開に向けた気力を失いかねない厳しい現状があることに対して、明日への希望を生み出すことが必要であり、それは私たちの責任である。予備費と災害復旧合わせた予算5000億円の財源をいかして、生活と生業の再建に向けて『対策パッケージ』を早急に取りまとめたい」と語りました。

そして政府は、29日の閣議で、台風19号による災害を激甚災害に指定する政令と大規模災害復興法による「非常災害」に指定する政令をそれぞれ決定しました。

政府の対応をまとめると…

ここで改めて、台風19号における政府の対応を振り返ると以下のようになります。

8日 (火) 局長クラスを集めた関係省庁災害警戒会議を開催
9日 (水) 気象庁の臨時会見
11日 (金) 関係閣僚会議を開催
12日 (土) 政府は「危機管理センター」で情報収集、台風上陸
13日 (日) 午前 関係閣僚会議を開催、 長官の臨時会見
午後 第1回非常災害対策本部会議を開催、28日までに計14回開催

今回の19号による被害は広範囲にわたっているため、15号の政府対応と比較するのは適切ではないかもしれませんが、15号の際に開催しなかったことを国会で追及された「関係閣僚会議」も発災前と発災直後に開催したほか、安倍首相自身の被災地視察を含め、政府は今回、より入念な態勢で対応にあたった格好です。それでも各地に大きな被害が出たこともまた事実ではありますが、政府が15号の際の批判を踏まえた対応を意識したことは確かといえそうです。

安倍首相にとって、自然災害への対応について、いかに盤石な態勢で臨み、被害を少しでも防ぐかは、異常気象が指摘される中で、引き続き重要な課題となりそうです。

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)