筆が進みすぎる?「原稿合宿プラン」で泊まれる旅館が大人気

一番「筆が進む」場所はどこだろうか?

集中して作業したい!と思っても、ついついテレビをつけてしまったり、掃除を始めてしまったりと、自宅には意外と誘惑が多いもの。
そんな悩める人たちにぴったりの、「原稿合宿」というものをご存知だろうか。

サークル活動や趣味で自作の漫画や小説を作っている、という人もいるだろうが、「原稿合宿」とはその名の通り、それらの原稿を書き進めるため、旅館やホテルに泊まって作業すること。

部屋に“カンヅメ”になって作業をし、疲れたらおいしい料理や温泉などでリラックス…という、さながら“文豪”か“漫画家”気分が味わえそうなプランは数多くの宿泊施設が展開しており、注目されているのだ。

そんな中、今、Twitterで話題となっている「原稿合宿プラン」を打ち出しているのが、千葉県東庄町にある創業明治5年の「圡善(どぜん)旅館」だ。

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注目のきっかけは、この合宿プランを体験したとあるTwitterユーザーの投稿。
24時間入れる人工温泉やおいしい食事が楽しめる他、漫画やイラスト作成に役立つ液晶タブレットやプロジェクターなど、自宅で揃えるには少々お値段の張る機材が無料でレンタルできるという内容が拡散されると、「行きたすぎる…」と羨望の声が挙がり、大注目されることになったのだ。

クリエイターにはうれしい内容だが、“先生”と呼ばれる人でなくてもこうした需要は多いのだろうか?
なぜこのような合宿プランを展開しているのか、さっそく、圡善旅館の土屋さんにお話を伺った。

「比較的女性の方が多い印象」

――なぜ「原稿合宿プラン」を始めた?

お客様から御要望があったのが、きっかけでございます。
弓道合宿も開発合宿も、もとはお客様の御要望によるものでございます。


――利用層は?


年齢層は若く、比率的に女性の方が多い印象を受けます。
機材の数や、提供できるお部屋が限られている為、お受けできる人数はそれほど多くありません。

畳の部屋に、長時間の作業がしやすいテーブル
畳の部屋に、長時間の作業がしやすいテーブル

――機材の貸し出しなど嬉しいサービスがありますが?

提案者はとくにおりませんが、前述の通り、お客様からの御要望がありまして、実現した次第でございます。

圡善旅館によると、この合宿プランやサービスは、客のリクエストによって今年生まれたもの。
「原稿合宿プラン」の他にも、プログラマーやエンジニア向けの「開発合宿プラン」や、旅館内の弓道場を使った「弓道合宿プラン」なども展開しているが、 それら全てがリクエストからできたものなのだという。

老舗の風情ある旅館でありながら、筆が進むための必要な機材を揃えているギャップもいい。「こんなの欲しかった!」と言いたくなるサービス展開に、これは“オタク心”がわかるスタッフさんがいるに違いない…と思っていたのだが、お客さんからの要望に向き合った結果、できあがったシステムのようだ。

貸し出し用のタブレット
貸し出し用のタブレット

そんなリクエストに応えて用意された機材だが、現在あるのは体験用のPCと液晶タブレットやiPadペンシル、トレス台、A4モノクロプリンターなど。
気に入った機材を後日購入したお客さんもいるそうで、「Wi-Fiや機材が充実していて静かで集中できるため、原稿が大変捗った」「液晶タブレットを長時間体験することができ有意義だった」との反響があるという。

もちろん、これらのレンタル機材は数に限りがあり、宿泊客全員が必ず使えるものではないため、使いたい画材やノートパソコンなどは持参するのが基本。  
しかし、これらの機材を試してみたい!と思っている人にはうれしいサービスであるのは間違いないだろう。
 

――その他「原稿がはかどるポイント」は?

当館所在の東庄町は、コンビニやスーパーはありますが田舎ですので、静かで落ち着いて作業できるかと存じます。
お客様からは「職場や家庭での横槍がないことから、集中して作業できた」と聞いております。
また、作業に行き詰った際に、気分転換にお風呂(人工温泉で24時間)でリフレッシュできます。 

ちなみに、宿泊客へのアンケートの中には「推し作品」や「推しキャラクター」を聞く質問も入っているのだが、それらを含めてアンケート結果は「サービスに反映していきます」とのこと。
自分の“推し”への思いが今後どのような嬉しいサービスに繋がるのかも注目ポイントだ。

裏サービス?“原稿監視”…気まぐれに巡回

さらに、もしかしたらこれが一番嬉しいかもしれない“裏サービス”もある。

せっかく合宿に来たのに、ついついお喋りやDVDなどの鑑賞会に夢中になってしまうこともあるはず。
そんな時は、旅館で飼っているという9歳の女の子のネコ「はな」ちゃんが「進捗どうですか」と巡回に来てくれるのだ。


――はなちゃんはいつ監視に来てくれる?

当館で飼っている猫のことでございますね。
性格はとても人懐っこいのですが、気分屋でございますので、フラっと来て、様子を見て遊んでもらってから、フラっと去るようです。
皆様と遊んでいただき、喜んでいるかと思います。ありがとうございます。

原稿監視員・はなちゃん。気まぐれな女の子だそう
原稿監視員・はなちゃん。気まぐれな女の子だそう

もちろんこれは正式なサービスではなく、来てくれるかどうかは運次第。
しかし、もしはなちゃんに見つかってしまったら、休憩はやめて原稿に向き直るのがいいだろう。

気になるお値段は1泊2食付きで6,400円~(税抜、利用は3名以上から)。

残念なことに4月25日現在、ゴールデンウイークの予約はすでにいっぱいとのことだが、おすすめは平日の2泊以上の連泊や、週末の金曜の夜~日曜までの2泊3日の宿泊プランだという。

注意したいのは、このプランはあくまで「原稿合宿」であり、作品を作りたい人専用ということ。
利用する際は、自作のサイトや活動しているTwitterのアカウント、イラスト投稿サイト「pixiv」のアカウント、もしくは制作した作品の写真や現物(本・小説・イラスト等)など、「実際に創作活動をしている」と確認できる物の提示が必須とのことだ。

純和風の庭園にも癒やされそう
純和風の庭園にも癒やされそう

――大きな反響がありましたが…

大変ありがたく嬉しく思っております。
微力ながら、クリエイターの方々をサポート、応援できればと考えております。


新しい「○○合宿プラン」については未定だというが、「今後もお客様のご要望から実現していきたいと考えております」とのこと。

“原稿がはかどる”アイテムにあふれすぎて、逆にあれこれと試してみたくなり原稿が置き去りになってしまうのでは…と思いすらする、この「原稿合宿プラン」。
至れり尽くせりの“文豪気分”や“漫画家気分”を味わってみたい人は、一度試してみてはいかがだろうか。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。