温暖化の影響でより良い葡萄が!

EUからの離脱をめぐり、毎週のようにデモが行われ、混乱や困惑のニュースばかりが伝えられるイギリス。しかし、この状況だからこそ世界へ目を向け始めた意外な業界や、色あせていないイギリスの魅力を取材した。

ロンドンから電車でおよそ1時間30分、イギリス南部にあるワイナリー、「ガズボーン」。イギリスにワイナリー?!そんなイメージはないかもしれないが、実はスパークリングのワイン生産が伸びてきている。

ガズボーン広報ジョナサン・ホワイトさんは
「イングランドはここ数年で温暖化の影響で良いブドウを栽培することができるようになった」と皮肉にも気候変動によりワイン生産が出来る条件が揃ってきたという。

このワイナリーでは9月になると90ヘクタールの広大な敷地が一面緑に覆われ、ブドウが実る。最盛期には100人がかりで1か月間、ブドウを収穫し、畑に併設された工場で加工する。取材した4月上旬は、出荷のピーク。スパークリングワインのボトルにラベルが貼られ、箱詰め作業が急ピッチで行われていた。

新たな市場開拓のチャンス!ターゲットは日本

日本にも輸出しているというロゼスパークリングワインを飲ませてもらった。
新鮮なブドウの香りがし、上品な味わい。晴天の畑で頂くワインは格別だ。このワインおよそ1本£49(およそ7000円)、このワイナリーではリーズナブルな価格帯のワインである。

イギリス国内のスパークリングワインの生産はフランスの1/35程であり、まだまだ少ないが、2018年は天候にも恵まれ前年比の3倍、およそ1000万本が出荷された。しかし、輸出量は少なく、およそ90万本にとどまる。輸出拡大を狙っているが、EU離脱問題が懸念材料だと、このワイナリーのCEOチャーリー・ホランドさんは言う。

ガズボーンCEOチャーリー・ホランドさん
ガズボーンCEOチャーリー・ホランドさん
この記事の画像(4枚)

「EU離脱がどう決着するのか、不透明なので私たちも困っている。EUとの関係の変化が輸出に影響を及ぼす。だからこそ、日本のような新たな国と取引をする必要がある」

EU離脱をにらみ、ヨーロッパだけでなく日本など世界各国との取引に力を入れようとしている。この日もアメリカ・ニューオリンズからワインバーのオーナーが視察に訪れていた。

アメリカから視察に訪れたワインバーのオーナー
アメリカから視察に訪れたワインバーのオーナー

「世界へ輸出を始めている。私たちの戦略は新たな市場開拓、今最も力を入れているのが日本だよ。日本人に好まれる味だからね」とホランド氏は言う。

 イギリスのワイナリーが世界に目を向けて勝負していく中、ロンドンではこんな見本市が開かれていた。

世界各国から集まったスパークリングワイン。多くのバイヤーが集まり、50種類以上のワインを味わいながら商談を繰り広げる。ロンドンは、ヨーロッパ各地のワイン取引の中心地で、離脱後もその価値は変わらないという。

ロンドンのトレンドが世界のトレンド

この見本市にシャンパンを出展していたワイナリーの担当者は「ロンドンはレストランも活気にあふれていてとにかく競争力が激しい。ロンドンのトレンドが世界のトレンドだわ」と重要な市場であると強調した。

ワイン輸入を手掛ける日本人
ワイン輸入を手掛ける日本人

会場には和食レストランのオーナーシェフや、ソムリエなど多くの日本人の姿も。
ワインの輸入を手掛けている日本人女性は、
「ロンドンはお金持ちが多いので世界中のワインが集まってきている。ロンドンで認められたら世界で認められたということになる」という。今や、世界中の美味しいワインが飲める街としてNYと並ぶというのである。

EU離脱後を見つめ、日本を射程に入れているイギリスのワイン生産業界。
混乱の中でもワイン貿易の中心として魅力溢れるイギリスへ、美味しいワインを飲みに足を運んでみてはどうだろうか。

【執筆:FNNロンドン支局 小堀孝政】

小堀 孝政
小堀 孝政

取材&中継の報道カメラマン。
元ロンドン支局特派員 ヨーロッパ、アフリカ各国の取材を経験