ヒナの姿も…雑木林に100羽以上

木から木へと移動し、住宅街のそばを飛び回る白い鳥の大群。その正体は大型の野鳥、サギだ。

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栃木県大田原市でサギが年々増殖し続け、道には羽が落ち、草はフンによって一面が真っ白に。卵の殻のようなものも見られるなど、問題となっている。

さらに、雑木林では全長2mにもなる羽を広げてサギの集団がバタバタと飛び交い、市によるとその数は100羽を超えるという。

実は今、サギは繁殖の季節。巣の中にはヒナの姿があるように、ますます増加し続けているというのだ。

昨年撮影した雑木林の映像を今年の映像と比較すると、さらに木々を占領していることがわかる。

広大な田んぼと多くの住宅に囲まれている雑木林を真上から見ると、サギの巣が無数にある。
近隣の住民に取材をすると、日常生活への支障が出ていることがわかってきた。

悪臭・不気味な鳴き声・健康被害への懸念

雑木林の周辺にはサギのフンが大量に散乱し、悪臭を放っていた。その横で農作業を行っていたという男性に話を聞いた。

60代男性:
まあ臭いですね一番は。もう、ちょっと1時間も2時間もここにいられない状態で、荒れた状態になってますよね。

臭いに耐えられず農作業を諦めたといい、畑は荒れ地となっていた。さらに近隣住民の生活を脅かしているのが、24時間続く不気味な鳴き声だ。

60代男性:
ヒナの鳴き声なんて、ひっきりなしに鳴いてるわけだよ。この音が一番嫌なの。時々鳴かれるんならいいんだけど、ずーっと鳴いてる。これが一晩中鳴いてる。

朝から晩まで24時間、聞こえてくる鳴き声。特にこの時期は、卵からヒナが孵って鳴き声が増しているという。
さらに、もうひとつ近隣住民の不安がある。

60代男性:

一番気になるのが衛生問題です。人に害があるのか。しかも粉が飛んで来てるからね。

取材中も乾燥したサギのフンや鳥の羽が空から降ってきた。

60代女性:
すごいですよね。羽が落ちてくるからちょっと気持ち悪いので、マスクしないではいられないですね。

近隣住民は、日常生活の中で常に心配しているというのだ。サギに詳しい専門家に人体への影響について聞いた。

筑波大学生命環境系・徳永幸彦准教授:
(雑木林には)大量のフンがありますので、それが乾いて舞い上がる。それで咳き込むのはあると思います。

田んぼのカエル・養殖魚にも被害

さまざまな問題を引き起こしているサギの大群。周辺の田んぼでは、ある変化が起きていた。

60代男性:
サギが住み着いてからカエルの鳴き声がなくなっちゃったんですよ、田んぼに。ここから少し離れるとカエルの鳴き声がするんですけど、聞こえないってことは全部食べられちゃったということですよね。

確かに、田んぼからはカエルの声は聞こえなかった。
専門家によると、サギはカエルが大好物で、繁殖期である今は朝晩含めて4回は取りに出かけるという。

さらに、雑木林から5kmほど離れた養魚場でも異変が…

関根養魚場・関根禎行代表:
毎日10羽ぐらいサギが飛んできて食べられてしまう。年間被害額は100万円ほど出てしまっている、死活問題ですよ。

大切に育てた養殖のサケやマスを食べられたと憤る男性。

6月14日に撮影された防犯カメラの映像を確認すると、画面右側から突如としてサギが現れた。

じっと水面を見つめた次の瞬間、羽を広げて勢いよく顔を水中に突っ込み、魚を捕っていた。

増え続けるサギをなんとかできないのか?そこには法律の壁が立ちはだかっていた。

どうして捕獲・駆除できない?

山﨑夕貴キャスター:
住民の生活に影響をもたらしているサギですが、捕獲・駆除できないのには2つの理由があります。

1つは、保護・愛護の観点です。鳥獣保護法では、基本的に“罪のない”野鳥を撃ってはいけないという大前提があります。
カラスなどは有害鳥獣駆除に指定されているので駆除することができますが、筑波大学の徳永准教授によると、サギは巣を作っているだけなので難しく、繁殖中はヒナがたくさんいるため、この観点から駆除ができないといいます。

また、取材した栃木県大田原市にはシラサギが5~6種類生息しているということですが、そのうちの1種である「チュウサギ」は準絶滅危惧種のため、駆除は難しいのです。

山﨑夕貴キャスター:
そして、この地域は「特定猟具使用禁止区域」に指定されています。住居が集合している地域・広場・駅など複数の者が集合する場所では、銃猟 が禁止されているため、現状では我慢するしかないということなんです。

小倉智昭キャスター:
しかし、都道府県知事の認可のもと「有害鳥獣」に認められれば、駆除はできますよね。
もう少し地域住民のことも考えてあげないと。ただ動物がかわいい、生かしてあげなきゃということだけでは共存できないよね。

(「とくダネ!」6月25日放送分より)

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