いま、24時間営業を見直す飲食・小売業者が続出している。

大手ファミリーレストランチェーン「ロイヤルホスト」は2017年1月に全223店舗で24時間営業から撤退。続くように2月には、「ガスト」「ジョナサン」を擁するすかいらーくグループも300店鋪以上で24時間営業を取りやめた。

さらに、コンビニもファミリーマートが見直しを検討していることが明らかになった。

なぜ、ここにきて転換期を迎えているのだろう。日本の消費動向に詳しい、みずほ総合研究所の宮嶋貴之・主任エコノミストの考察を聞いた。

みずほ総合研究所 宮嶋貴之・主任エコノミスト

人口減少×労働力不足が深夜営業を圧迫

24時間営業を見直す背景には、「人口減少により採算が合わなくなってきていること」「Eコマースなど新サービスの台頭」が挙げられるという。

「深夜帯の利用者の大半は、20代から40代の働き盛り世代であることが予想されますが、2010年代になってから、日本の総人口は減少の一途を辿っています。マクロ的観点ではありますが、こうした変化が少なからず深夜の来店客数に影響をおよぼしていると考えられます。また、AmazonなどのEコマース業態が軒並み勢いづいていることを踏まえると、ユーザーの消費行動も変化しているといえるでしょう」

利用者側の変化もさることながら、経営側からしても労働力を確保しにくい環境が、24時間営業の難しさに拍車をかけているようだ。

「サービス業では、営業時間の長さと売り上げは比例しやすい特性がありますが、夜間労働の時給は割増賃金が掛かります。それに輪をかけるように、慢性的な労働力不足で人材が確保しづらくなり、人件費がさらに高騰して採算が取れなくなってきています。現在、政府も女性や高齢者の就業促進を進めてはいますが、深夜帯とマッチしないので潜在的な労働力を掘り起こすことも困難だといえるでしょう」

諸外国では政府関与の営業時間規制もあり

儲からないなら廃止すればいい、というのは簡単だが、そうとも割り切れないのが実情のようだ。

「24時間営業を存続するか、廃止するかを検討するにあたっては、基本的には市場のメカニズムに委ねるべきと考えますチェーンだからと言って、一律24時間にする必要はないわけです。しかし、コンビニなどでは24時間営業が当たり前のサービスとして根付いてしまっている。そのため、縮小するとなると競合他社に利益を奪われることになりかねず、廃止の決断を鈍らせている根源と考えられます」

特に、フランチャイズ展開しているケースでは、本部としては加盟店の利益がどうあれ深夜営業で少しでも多くの売り上げが立てば御の字。ロイヤリティさえ入れば、24時間営業で人手がいくら掛かろうとダメージは受けない。利益の圧迫や人手不足で苦境に立たされるのは、現場を仕切るオーナーだ。

「儲かるか儲からないかでジャッジできればいいのですが、現場の判断で辞めたくても辞めにくいことが難しいというジレンマがあるのも実情です。そうした問題を是正するためには、政府の関与も手段の一つかもしれません。

たとえば、欧州では宗教上の理由や労働者保護の観点から、政府が店舗の深夜営業や日曜営業が規制されている国があったり、韓国では財閥企業が強いので中小企業保護を目的に営業日規制を設けていたりします。しかし、これも一長一短あり、日本での導入は経済の不活性につながりかねない面もあります」

実際に、フランスでは経済成長・経済活動振興に関する法案『マクロン法』によって、年間5回に定められていた商店の日曜営業を年間12回に緩和することで経済の活性化につなげようとした例もある。

24時間営業がスタンダードになっている企業が、一律で営業時間を規制することで、どれほどの損失になるのか見積もる必要があるだろう。

陰る24時間営業に差す光明

昨今、働き方改革の機運の高まりなどによって、24時間営業は一定程度自然淘汰されていくのではないかと宮嶋氏は考えている。

その一方で、深夜営業を約6割の店舗で撤廃していた「すき家」が、全店での深夜営業再開に向けて取り組んでいるという。また、「深夜帯の活動を盛り上げる新しい仕掛け」によって、24時間営業の需要はまだまだ掘り起こされる可能性がある。

「ナイトライフが盛り上がり、夜間経済を振興すれば需要も伸びます。たとえば、米国ブロードウェイでは夜間も興行していますし、ロンドンでは夜遅くまでやっているライブハウスもあります。政府や自治体を中心に、深夜交通の充実や治安の維持、騒音対策等に努める必要はありますが、美術館やレジャースポットの営業を後ろ倒しにするなど、工夫の余地はまだあると思います」

「すき家」が深夜営業を縮小したのには、夜間に1人で料理や接客を担当する「ワンオペ」が問題化した背景があった。今や世間では「働き方改革」が進行中で、夜間におよぶ長時間労働が是正されつつある。

そうした状況の中で、24時間営業を継続するには、技術革新を取り入れていくことが急務になるようだ。

「コンビニの場合、一番は無人レジです。ホットフードやおでんといった人手が必要な商品以外であれば、ある程度可能だと思います。ただし、来店客一人ひとりに最適なサービスが提供できるかは、まだまだ疑問の余地があります。また無人化にはセキュリティ面での不安がある。ただし、センサーを備えた警備ロボットなどが実用化されれば、クリアできるかもしれません」

スマホのアプリで決済が完了する無人レジ

ローソンでは、2018年の春に深夜帯のレジの無人化の実証実験を首都圏の実店舗で行うと発表している。こうしたテクノロジーの活用に加え、新たに深夜帯の活動が盛り上がる仕掛けを起こしていくことも、24時間営業をアシストする可能性もあるという。

24時間営業は、確たる需要に裏付けられているというよりも、止めるに止められない事情を抱える事業者のジレンマも見え隠れする。とはいえ、省力化投資や効率化はイノベーションにつながる。技術革新を取り入れながら、24時間営業店舗の選択と集中が必要なのかもしれない。


取材・文=末吉陽子/やじろべえ