自分のチームのモチベーションはなぜが上がらないのか? 自分なりに飴とムチを駆使して叱咤激励しているはずなのに…。その悩み、じつは昭和世代のマネージャーが抱える代表的なもの。

仕事に対する若者のスタンスは多様化し、「やればわかる!とにかく動け!」という昭和ロジックは通用しない。上司と部下のジェネレーションギャップは、相互理解を妨げる“呪い”となって両者の間に横たわっている。

ならばそんな呪縛を断ち切り、チームのやる気を引き出すリーダーになるにはどうすればいいのだろう。『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベスト新書)の著者であり、人材開発の専門家であるFeelWorks代表の前川孝雄氏に打開策を聞いた。

管理能力からリーダーシップへ。上司に求められる資質が変化している

前川孝雄氏
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新聞から会議中の会話まで、あらゆる場面で飛び交っている「チーム」「マネジメント」という言葉。何気なく使っているものの、定義がどんどん多様化している印象だ。チーム作りのスタートラインに立つためには、まずは正しい定義から知らなければならない。

チームとは、『ある目的を達成するために、個人の持ち味を活かし合う集団』です。たとえばAさんの短所はBさんが補完し、Bさんの失敗はAさんがカバーする。多様性によって価値の総和を高める考え方ですね。従来の日本企業は“金太郎飴タイプ”で、均一的な人材を作って同じ仕事ばかりさせるから正反対の方針です。

次にマネジメントですが、狭義の意味では『管理すること』。けれども、上司による目標管理や工程管理だけでは、部下から裁量を奪うためモチベーションを低下させます。これから必要なのは『リーダーシップ』。部下一人ひとりの強みや持ち味を引き出し、働きがいを感じられるようビジョンを示しながら、個人の活性化をうながしていく役割です」(前川氏、以下同)

管理能力からリーダーシップへと、上司に求められる資質は変化している。しかし、それに気づかず勘違いしたままの“呪われた”リーダーが多いとも前川氏は指摘する。あなたは当てはまっていないだろうか。

最も典型的なのは“伝書鳩上司”でしょう。上から指示された内容を、そのまま下に伝えるだけの上司です。また、もう一つ起こりがちなのが『クイック・ウィン・パラドックス』という現象。短期的な成果を求めるあまり、逆に失敗してしまうケースですね。これを引き起こす上司は、一から十まで部下に指示してしまうタイプ。どんなに指示が適切でも、部下としては“やらされている仕事”になるためモチベーションは落ちていきます

旧来の手法が通用しなくなった原因は、年功序列の崩壊による“我慢の無意味さ”

しかし、現在40代以上の上司としては「自分が育てられた通りの方法を実践しているだけなのに…」と納得いかない気持ちもあるだろう。どうして昔と今では、マネジメントの手法がこうも変わってしまったのか?

「かつては年功序列が機能していました。若手のうちは苦労しますが、じっと我慢していれば給与もポストもエスカレーター式に上がっていきました。いわば“後払いシステム”だったから、目の前の理不尽な仕事にも耐えられたのでしょう。

けれども、現代社会では同一労働・同一賃金が謳われ、年功序列は崩壊。いわば“即時払いシステム”です。こうなると賢い若手は『我慢しても意味がない』と気づき、より仕事の価値や働きがいを模索するようになります

とはいえ、急に「リーダーシップを磨きましょう」と言われても途方に暮れてしまう。

第一歩は、『自分がなんのために働いているのか』を見つめ直すこと。家族を養うためだけではなく、仕事を通じて世の中に提供したい価値はなにか考えましょう。そして、それを実現するには数年後、どんな姿であるべきなのか。まずはリーダー自身が仕事の意義、目的を理解することで、部下にビジョンを示せるようになります」

個性を活かせるリーダーになるには、部下への感謝を習慣化すること

現代型のチームは、それぞれの個性が化学反応を起こし、足し算ではなくかけ算で目的へと向かっていく。リーダーの資質には、隠れた個性を見極める“目利き”も求められそうだ。

「個性とは『光の当て方』です。たとえば、『頑固』というと弱みですが、『こだわりが強い』なら立派な長所になる。リーダーは部下にプラスの光を当てることで、ポテンシャルを最大限に引き出せるよう努めるべきです。

そのために必要なのが、あらゆる固定観念を捨てること。人間は経験によって作られた色眼鏡をかけていて、年齢を重ねるほどその傾向は顕著になります。たとえ視界に入っていても、見えていない部下の才能はたくさんあるでしょう。自分の常識を疑う勇気を持たなければ、個性はいつまでも見つかりません

個性の伸ばし方も重要なテーマだ。やっとの思いで見つけたダイヤの原石とも呼ぶべき個性を、いかにして磨き、チームへと還元させればいいのだろう。

「まず、部下を“管理”する行為は抑えめにしましょう。特に業務の工程管理に集中してしまうと、部下と話すときに粗探しをはじめる。たとえ成果を出してほしい一心だとしても、それでは多様性に富んだダイバーシティは実現しません。部下にどんどん裁量を与えて、仕事の工夫をうながすことが大切です。

私が推奨しているのは、感謝の日記をつけること。一週間の仕事を通じて部下のよかったところをメモし、週末・週明けなどの定例会議で、感謝の言葉とセットで褒める。部下の強みも発見できるし、半年続ければチームの雰囲気もがらりと変わりますよ」

また、一方で世の中には「空気」という呪いもある。一度不協和音を起こしたチームを立て直すのは至難の業だ。もし自分のチームがやる気の停滞期に突入してしまったら、どうすれば息を吹き返すことができるのだろう。

うまくいかないチームというのは、お互いが自己開示をしていません。本音を胸の奥に隠したまま、じわじわと不信や不満をつのらせている。一人ひとりと腰を据えて話し合って、早急に膿を出し切りましょう

もちろん、日頃から自己開示し合えるチーム作りをするのがベスト。そのための舵取りは、リーダーが弱みを見せることからはじまると前川氏は考える。

「リーダーが弱みを見せることも重要です。部下に対して『カッコよく見せよう』なんて思っていませんか? 部下の自己開示をうながすためには、リーダーが先頭を切って苦手なこと、辛いことを話しましょう。そうすれば部下も『じつは私も…』と続いてきます。自己開示は強制できるものではないから、リーダー自ら心をさらけ出すことでカルチャーを作っていきましょう


取材・文=佐藤宇紘
イラスト=いしあ

前川孝雄氏
「コミュニケーションが人と組織を変える」がスローガンの人材育成専門家集団(株)FeelWorksグループ創業者、(株)働きがい創造研究所代表。大阪府立大学卒。独自開発した「上司力研修」「人を活かす経営者ゼミ」などを通じて300社超の人材開発を支援、青山学院大学でも教鞭を執る。著書に『上司の9割は部下の成長に無関心』『「働きがいあふれる」チームのつくり方』などベストセラー多数。最新刊は『5人のプロに聞いた!一生モノの学ぶ技術・働く技術』(共著・有斐閣)
・株式会社FeelWorks
https://www.feelworks.jp/
・株式会社働きがい創造研究所
http://www.hatarakigai.jp/
・前川孝雄のブログ「はたらく論」
https://ameblo.jp/feelworks-maekawa