情報の精度は仕事の質に影響する。そこに異論の余地はないだろう。しかしネットを始め爆発的に情報ソースが増えた今、どこからどう情報を得るかは大きな課題だ。簡単に得られる反面多くの情報は凡庸になり、誰もが発信者になれた結果信用に足らない情報も溢れている。

各世代の第一線で活躍する人たちは、果たしてどんな情報源を持ち、その情報をどう活用しているのだろうか。トップランナーの情報収集と活用のテクニックを学んでみよう!

椎木里佳さん
この記事の画像(5枚)

「ニュース系はおもにTwitter、たまにFacebookも活用してキャッチアップしています。トレンドはTwitterとInstagramが多いですね。各世代向けブランドやファッションリーダーのポストをチェックしています」

こう教えてくれたのが、AMF代表の椎木里佳さん。15歳で起業したことが話題となり、現在も大学に通う傍らで会社を経営する。女子のトレンドをマーケティング調査し、さまざまなコンテンツに利用するだけあって、“生の声”が拾える情報源を活用しているようだ。

「若い人たちをターゲットにしているので、直接フォローできるメディアの活用にメリットを感じています。今の10代が思っている事を見るのが最も流行をキャッチアップできて、感覚を掴めると思うので」

一方で、それらを“鵜呑みにしない”ということも大事だとか。

視点の違う情報もあわせて見るなどもしています。ネガティブにあえて振っている記事や、過激な記事はデマという場合も多いので読みませんね。見た情報は人と共有して、考えを偏らせないことにも注意しています」

「どんな世界観で事業に取り組んでいるのか?」事業の裏にある思いを探る、古川健介さん(36歳)のヒントの得方

生活情報サイト「nanapi」の運営や広告事業を手がけるSupership取締役の古川健介さんの場合、「ニュースはさほど重要ではない」と考えているのだとか。“けんすう”というウェブネームでも知られる古川さんの情報収集術も、ある種トレンドを追うことを心がけているそう。

「Twitterが中心です。いわゆる最新情報のようなニュースは一次情報(編集が入っていないもの)であることを重視して、さらりと追う程度。それよりも、事業などを手がける人がどんな哲学を持ち、どういう世界観で今の事業に取り組んでいるのかなどの情報を大切にしています」

情報源は国内のみならず。海外の潮流や考え方を参考にウェブサービスを構築するのが、古川さん流のビジネスの作り方。とりわけBloggerやTwitter、Mediumなどを作ったエヴァン・ウィリアムズのブログは、かなり勉強になるのだそう。

「あとは、いろいろな業界のスタートアップの人から、その周辺情報を教えてもらうことが多いです。また、上場企業の決算資料を見たり、その書き起こし(ログミーファイナンス)が一番まとまっていたりするので、それを見たりします。紙媒体ではWIREDとForbesが好きですね」

「仕事の対象者に合わせてアジャストする」R25創刊編集長・藤井大輔さん(44歳)の情報“編集”術

藤井大輔さん

M1世代(25〜34歳の男性層)に向けたフリーペーパー・R25を編集長として創刊し、現在は富山で福祉の相談援助やコメンテーターをしながら、都内でメディアコンサルティング事業を手がける藤井大輔さんの情報収集は、メディアターゲットの“世代”に深く寄り添ったものだ。

「東京と富山の2拠点で仕事を始めてから、東京新聞と北日本新聞を購読するようになりました。東京新聞は格差や貧困、人権の問題意識が強いので、社会福祉系の仕事に役立つことが多く、気になった記事はスクラップ保存。雑誌では10年来『文藝春秋』(月刊の方)を読んでいます。60代シニアが好みそうな企画が多いのですが、意外と下世話な話も多く、団塊世代以上の行動原理がなんとなく理解できるようになりました。ちなみにR25の記事の一部は『文藝春秋』のネタを若者向けにアレンジしていましたね」

もちろんネットも活用する。Facebookのタイムラインに流れてくる記事や、自分とは異なる職種の違う感性を持つ人がシェアした内容に、特に興味を惹かれるそう。

どんな情報も、『書いた人はどんな立場か』『誰に向けているか』『それで何を喚起したいか』の3つを意識して読みます。その情報がどの位置に属しているのか、頭の中でマップを作るようなイメージです

こうして得た情報は、整理してアウトプットする。編集者ならでは情報活用術といえそうだ。

「過去・現在・未来に整理し、ニーズに応じて編集してアウトプットするようにしています。最近のコンテンツで多く求められるのが『わかりやすく説明してほしい』というもの。

同じネタでもテレビで視聴者に向けて説明するのと、地域の高齢者の集まりで説明するのとでは伝え方が異なるわけですが、『現在の問題』(現在)→『そもそもの問題が起こり』(過去)→『きっと好転する』(明るい未来)or『このままではこうなる』(暗い未来)という流れは共通。

あとは例え話を、伝えたい人たちの世代向けにアレンジしていくことで、調整していますね」

「情報は与えて得る。いい影響を与えるために自身が情報ソースになる」林信行さん(50歳)の情報の扱い方

林信行さん

『Give& Take」の法則というものがあります。記事や講演やソーシャルメディアで情報を発信すれば『新しいものを知っています』や『これも面白いですよ』など、どんどん情報が集まってくるので、情報はまずGive(提供)をして、それからTake(獲得)する。ネットにも情報は溢れていますが、それらは誰でも得られる情報。いずれは検索すらせず人工知能が教えてくれるようになるので、価値は低いんです。

ただし、たまに『もしかしたらこんな情報もあるかも?』と当てずっぽうに単語を組み合わせて検索すると、発見が多いですね。また自分とは違う業界の凄い人が集まる勉強会やパーティーに顔を出す。これも収穫が多いです」

ジャーナリストという発信者ならではの情報収集術に見えるが、ソーシャルメディアでの軽い情報発信でも十分」だという。

一方、多彩な情報ソースを活用するが、“検証”は欠かせないとも語る。

「情報を何かの形にする場合は、当然裏取りしますが、その際、同じ情報を多様性と時間の2つの軸で検証することが多いですね。ネットには複製情報や加工しただけの情報も多いので、まずはコピペではない一次発信の情報を複数見つけて比較するのが多様性の確認です。

もうひとつはその情報がいつネットに出回ったか、その際はどう取り上げられていたかを調べます。検証のうえで、その情報を一度Twitterなどに投げて、他の人からの指摘や追加情報がないかを確認してみることもあります」

得た情報をまとめて加工し、誰にどう届けるのか。そこに情報を“活用”する醍醐味があると林さんは考えている。

「知識にしかならない情報は価値が低いと思います。どう行動すべきかのヒントになる、“インスピレーション”を与えることにこそ価値がある。何かの『唯一無二の答え』に見えてしまう情報は世の中のためにならないことが多い。

だから、情報の提示はひとつだけではなく、ある程度の恣意性を持って同じ指向の情報を複数同時に提示します。たとえばタブレットが世の中に与えた影響に関する講演では、営業マンの活用事例1つだけを紹介してしまうと、それをそっくり真似する人が増えてしまいます。

しかし、ワイン農家での営業事例やセキュリティ販売での営業事例、中古車販売での営業事例など、同じ営業系の事例でも異なる情報を一緒に紹介すると、講演後に『いいヒントになりました』といった具合にインスピレーションを得て、独自の先駆事例を作りそうな人から感想をもらえることが実感として多いです」


いずれの第一人者も、その活躍する分野ならではの情報収集術を駆使していることがわかった。仕事のやり方が人それぞれであるように、収集方法、そして活用の仕方も人それぞれ。加えて、一朝一夕では身につかない“型”がある。

数多の情報からいかに役立つ原石を掘り出して加工するかは、それぞれに委ねられる。自分だけの手法を身につければ、きっと大きな武器になるに違いない。

文=吉州正行

【プロフィール】
椎木里佳さん(株式会社AMF 代表取締役)
1997年東京都生まれ。15歳で株式会社AMFを創業。慶應義塾大学に在学中。JCJK調査隊を結成し、女子中学生や女子高校生のマーケティングを行い、数々のコンテンツを世に送り出す。メディア出演も多数。
http://amf.tokyo.jp

古川健介さん(Supership株式会社 取締役)
「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもと、広告事業・インターネットサービス事業・プラットフォーム事業等の事業基盤を活かした新たな価値の提供を目指すデータテクノロジーカンパニーにて、新規サービスの開発を推進する。
https://supership.jp/

藤井大輔さん(株式会社プリフィクス 代表取締役)
リクルート社のフリーマガジン『R25』元編集長。R25世代はもちろん、その他の世代からも爆発的な支持を受ける。2013年にリクルートを退職し、現在は地元富山で高齢者福祉事業を営みながら、地域包括支援センター所長を務める。主な著書に『「R25」のつくりかた』(日本経済新聞出版社)がある。

林 信行さん
フリージャーナリスト、コンサルタント。テクノロジーが人々の暮らしぶりや社会をどう変えるかをテーマに取材を続ける。アップルプロダクトのエヴァンジェリストととして知られている。『ジョブズは何も発明せずに生み出した』(青春出版社)、『iPhoneショック』(日経BP)、『スティーブ・ジョブズ』(アスキー)など著書多数。
http://nobi.com