上司という立場上、部下や後輩の面倒を見ることも業務のひとつ。しかもそれは、当然ポジティブなことだけではなく、例えば、ミスを犯した時やトラブルを起こしてしまった時も同様。場合によっては、自分がミスをしていなくても、部下や後輩のために頭を下げなければいけないこともある。そんな状況になった時、あなたは平常心でいられるだろうか?

そこで、第1回で「良い謝罪」と「悪い謝罪」について解説してもらった「謝罪の作法」著者の増沢隆太さんに、再び話を聞いた。

部下の代わりに謝るのは上司の仕事?
個人ではなく、組織人として考えよう

冒頭でも触れたように、部下や後輩のために自分が頭を下げなければいけないシチュエーションはある。しかし、ミスをした本人ではなく上司が謝罪するというのは、必要なことなのだろうか?増沢さんは、以下のように話す。

「謝るべきかそうでないか、どんな謝り方をするかという問題ではなく、求められるのはすべきことが何かを考えることです。部下がいるという立場上、自分の組織(チーム)をマネジメントする必要があります。私が考える『良い上司』というのは、上司としての自分の立場や役割として求められていることを理解できている人

部下のミスでも自分のミスでも、誰かに謝らなければならないという状況があるなら、それは組織(チーム)の危機ということ。その危機にどう対処していくか。つまり、経営的に判断できているかが重要です。取引先や客が怒っているという状況なら、自分のプライドを守るのではなく、自分の組織を守るためにはこの危機をどう乗り越えて、どう収拾できるかを考えられる人が良い上司ではないでしょうか」(増沢さん、以下同)

謝罪をする場面というのは、ないにこしたことはない。できればしたくないと思うのは当然のこと。しかし、自分の気持ちやプライドよりも、組織に属している以上、組織の利益も考えなければいけないのだ。

上司だけでなく部下の“在り方”も重要
共同戦線を張れる関係を築くためには?

「『部下の代わり』という言葉に違和感を覚える」と増沢さん。さらに、「『自分事』として考えるのではなく、『共同戦線』でトラブルに立ち向かうべき」とも話す。

「部下の“代わり”ではありません。組織として見れば、上司と部下というよりも、いわば共同体。自分を中心に考えてしまう時点で良い上司ではないし、組織人としても失格だと思います。『お前の責任だ』『俺に迷惑をかけるな』ではなく、『トラブルが起きた以上、共同責任。一緒に頑張ろうな』と共同戦線を張れる関係づくりが大切です」

増沢さんは、「共同戦線を張れる関係を築けるか否かは、上司の言動や部下の在り方次第」とも続ける。

「何かトラブルが起きた時、『お前の責任だ』とばかり言っている上司だと、『この人にネガティブなことを言うと、自分は切られる…』などと考えてしまいます。そんなことを言われても、部下にはほとんど決定権がなく、どうすることもできません。信頼関係のない上司と部下では、おそらく部下は問題が起きても言い出せず、隠すようになるでしょう。

一方、部下としてのあるべき姿も当然あります。誰だって怒られたくないし、処罰をくらうのもイヤ。できれば隠しておきたいと思うものです。実際、トラブルが起きても報告しない人もいるはず。しかし、本当に何事もなく、完全に隠し通すことができるかといえば、そう簡単にはいきません。ネガティブな情報をいかにきちんと伝えるか。『ネガティブな情報こそ、早く正確に共有する』というのが組織の原則。上司も部下も組織人として、その自覚はすべきです」

「あってはならない」はもう古い!
「ミスはあるもの」と認識すべし

上司や部下といった個人の問題だけでなく、企業の危機回避への脆弱性も増沢さんは指摘する。

「多くの企業では、トラブルやミスといったネガティブなことはないものと思いがち。日本人は、『あってはならない』と、精神論的に考えてしまうのです。自分や部下、もっと言えば組織を守るためには『トラブルやミスはあるもの』という前提が大切で、危機管理の原則はそこにあります。しかし、現状は危機発生時に『なんでこんなことしたんだ!』と怒鳴るなど、「あるもの」を前提としていません。だから何かトラブルが起きた時にパニックになる。

火事は起きるのだから、起きた時にどうやって止めるか。部下であれ上司であれ、組織人としてはそこを自覚する必要があるし、良い組織ではそれが共有できています」

「企業としての利益」を求めるなら、「企業として」危機に立ち向かうべき。それを部下に伝えるのは上司の役目であり、それだけでなく企業のトップに立つ人間もそれを実践していかなければいけないということ。

誰かがトラブルを起こしたり、ミスをしたりすれば、関わりたくないと思うのは当然かもしれない。しかし、同じ組織に属している以上、個人のミスではなく、みんなのミスになる。そのことを理解しておけば、部下との関係もさらに強固なものとなるだろう。周囲の人間からの信頼を得られれば、結果として自分の仕事にも良い影響をもたらしてくれるはずだ。

■取材協力
増沢隆太
http://rm-london.com/

取材・文=明日陽樹/考務店