本特集では、おもにビジネスにおける謝罪について見てきた。しかし、謝罪をするというのはビジネスに限ったことではない。パートナーや友だちに対して謝罪することもあるはずだ。そこで、コミュニケーション専門家の藤田尚弓さんに、シーン別の“謝罪のお作法”を聞いた。

非言語コミュニケーションが重要!?
誰にでも共通の謝罪の極意がある

シーン別の謝罪のコツの前に、まずは謝罪の基本を教えてくれた。藤田さんがいうには、謝罪においては、「言語コミュニケーション」「非言語コミュニケーション」をセットで考えることが基本になるという。なかでも特に、「非言語コミュニケーション」が重要なのだとか。

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「言語コミュニケーション、つまり『ごめんなさい』という言葉だけでは、時に、『悪いと思っていないでしょ』と、こちらの気持ちが伝わらないことがありますよね。多くの人は、言語コミュニケーションにプラスして、声のトーンや表情といった非言語コミュニケーションを使って謝罪しているのです。

また、謝罪というのは、コミュニケーションプロセスにおいてノイズが発生しやすいシチュエーション。こちらが10謝っていても、相手には7しか伝わらないなんてこともしばしばあります。表面だけの謝罪だと感じられると人は許そうと思えませんし、心からの謝罪かどうかというのは、無意識に見極められています」(藤田さん、以下同)

さらに、わかりやすく3つのポイントを教えてくれたので紹介しよう。


ポイント1.謝る順番

「人は、意識しないと時系列で物事を話す傾向があります。謝罪の時にやりがちなのは、理由を話してから『ごめんね』と言うパターン。例えば約束の時間に遅れた時、『電車が遅れて』とか遅れた理由を話してから謝罪する人は多いものです。しかし、これでは“言い訳”に聞こえてしまいます。先に、『お待たせしてごめんなさい。実は…』とすると、“説明”に聞こえます。言い訳しているつもりはなくても、そう受け止められてしまうことが多いので、順番は大事です」

ポイント2.非言語コミュニケーション
「先ほども少しお話しましたが、『ごめん』というひと言でも、ふてくされたように言えば伝わらないし、明るく元気な声で言われても『本当に反省しているの?』と勘違いされてしまいます。言語と非言語にギャップがある場合、人は非言語を信じる傾向があるので『反省しているよ』と言われても、声のトーンや表情がともなわなければ伝わりにくくなってしまいます」

ポイント3.責任の受容、責任があることを認める
「謝罪会見とかでも責任の受容をしていないものは問題になっていて、例えば、タレントのベッキーさんや、つい先日話題になった参議院議員の今井絵理子さんもその一例です。『一線は超えていません』『裏切るようなことはしていません』と発言していて、問題への関与は認めていますが、否があったことは認めていません。これでは納得されない方が多いのも頷けます。悪いことをしたという、責任を認めた謝罪でない場合、反省の気持ちは伝わりにくくなります」

取引先とのトラブルは利害関係が絡む
良好な関係を続けるには“明示”すること

では、いよいよ本題に入ろう。まずは、取引先への謝罪のお作法を聞いた。

「謝罪相手が取引先の場合は、利害関係が絡んできますので、賠償に関して言及しなければならないケースもあると思います。ちなみに、ここでいう賠償というのは、お金のことだけではありません。やってしまったことに対して、その被害をどうやって回復していくか、どう対処するか。今後同じことを繰り返さないためにどうしていくのかなど、明示しないと信頼を回復し、良好な関係を続けるのは難しいと思います。特に、被害の回復は重要。どう対処するのかをきちんと示す必要があります」

取引先への謝罪は、必ずしもこちらだけに非があるケースだけではない。ただ、その立場上、自分は悪くないと思いながらも謝らなければいけないこともある。そんな状況で、心からの謝罪をするのは至難の業。どうしても「自分は悪くない」という態度が顔に出そうな時には、以下の方法を試してみてほしい。


【反省している顔の作り方】
1.奥歯を噛む
「口角が下がるとふてくされたように見えるし、口角が上がると笑っているように見えてしまいますが、奥歯を噛むと口角は真横にいきます」

2.相手の鼻とネクタイの結び目を交互に見る
「相手の目をしっかり見てしまうと、開き直ったような印象を与えてしまうことがあります。相手の鼻とネクタイの結び目を交互に見ながら、少し多めに瞬きをすると反省しているように見えやすくなります」

藤田さんいわく、「小手先のテクニックと感じる人もいるかもしれませんが、人間関係修復のために真剣に提案しています」とのこと。心からの反省を相手にわかってもらう手段として試してみてほしい。

プレゼント作戦の効果はある?
パートナーへの謝罪のお作法

ビジネスだけでなく、プライベートでも多方面との良好な関係は築いていきたいもの。特に、夫婦関係や恋人関係は気になるところではないだろうか。そこで、今度はパートナーへの謝罪のお作法を教えてもらった。

「夫婦間でありがちな例でいえば、『全然家事を手伝ってくれないじゃない!』とケンカになった時。『全然ってなんだよ。ゴミは出してるだろ!買い物行っただろ!』と、論点がズレている箇所にキレてしまうことがあります。ちょっとでも事実と違うところに、正当性を主張しすぎるのです。途中で些細なことを正当化するよりは、『仲直り』というゴールを目指したほうが良いのでは?」

さらに、パートナーの場合は、もうひとつポイントがあるという。

「パートナーの場合は、『あなたのことを大切に思っていて、決して軽んじているわけではない』と伝わらないとうまくいきません。『申し訳ない』という言葉も当然必要なのですが、それよりも『君が大事だ』と伝えるようにしましょう」

おそらく多くの男性に共感してもらえると思うのだが、筆者の場合、パートナーとケンカをした時など、“プレゼント作戦”をよく実行する。謝罪の気持ちを表しやすいし、幾分でも怒りが和らぐのではないかと期待してのこの行動に効果は…?

「先ほども話したように、多くの女性は、『自分のことを大事に思っているかどうか』で測るので、もらった物自体にはそこまで価値を置いていないと思います」

この藤田さんの言葉が幻であってほしいと願った人は、筆者だけではないはずだ。しかし、まだ続きがあるのでご安心を。

「もらった物に対してというよりも、『機嫌を取ろうとしてくれている』というところを評価してくれます。高価な物でなくとも、コンビニのアイス一個でもOK。『君が大切だよ』『仲良くしたいと思っているよ』という気持ちを伝える手段としては、わりと有効だと思いますよ」

あげる物自体ではなく、あげる行為に意味がある。パートナーとケンカ中の人は、さっそく帰りにケーキのひとつでも買って帰れば、仲直りできるかも?

友人とパートナーの対処法は似ている!
「軽んじているわけではない」と伝えよう

最後に、友人に対する謝罪のお作法を聞いたのだが、パートナーと友人の場合では、そのポイントが似ているのだそう。

「友人への謝罪のポイントは、パートナーのケースとよく似ていて、『あなたを軽んじているわけではない』と伝えるのがいいでしょう。借りた物を返し忘れたり、飲み会などの約束をキャンセルしたりといったことだと想定してですが、自分のことを軽んじられている気がして、それが寂しいから怒るというケースが多いのです」

たしかに、パートナーや友人となると、そもそも身内感が強く、謝罪もライトになりがち。相手が誰であれ、誠心誠意、謝罪をすることが重要だ。

取引先の場合は利害関係があるがゆえにトラブル対処を、一方のパートナーや友人は感情を。謝罪とひと口にいっても、それぞれ特徴が異なることを知っておけば、仕事もプライベートも、スムーズな人間関係が築けるはずだ。


■取材協力
藤田尚弓
http://www.naomi-fujita.com/

取材・文=明日陽樹/考務店