第4回では、水を過度に摂取すると「水中毒」という病気になる可能性があることについて聞いた。

では、適切に水分補給をするためにはどうすればいいのか。前回に続いて、聖マリアンナ医科大学川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科の講師・今井直彦氏に聞いた。

環境によって必要な水分量は違う

暑い夏は、こまめな水分補給が呼びかけられる。熱中症などの予防のために、「水を飲むこと」を意識している人は多いだろう。

もし、人間が水分補給を怠ってしまうと、どうなってしまうのか。

「夏場に適切な水分補給を怠ると“脱水”になります。“脱水”にもタイプがあり、タイプと程度によりのどの渇き、全身の倦怠感、尿量の減少や立ちくらみ、血圧低下などのさまざまな症状や所見がみられます」

こういった症状の中で、体重の減少や血圧の低下、尿量の減少・尿の色の3つは気を付けたいサインだという。

「例えば、炎天下の中でアメフトをすると何リットルもの汗をかき、体重が練習の前後で数kgも変化します。短時間の体重の変動は、体内の水分量を反映します。また、いつもより血圧が低値だったり、尿量が減少、尿の色が濃くなったりしていたら、“脱水”の可能性があります」

人間の体は、60%が水でできている。新生児は80%が水でできていると言われ、水は塩と同じく生命の根幹を担っている大事な要素。当然、脱水を防ぐためには水分補給が必要になる。

しかし、1日に必要な水分量は活動する環境によって大きく異なるという。

「炎天下で働いている人と涼しい部屋から一歩も外に出ない人では全く異なります。涼しい環境にいる人は1日に2リットル以下で十分。一方で、炎天下で働いている人は、発汗量などに応じて何倍もの水分量が必要となります。1日に何リットル飲めばいいという、一般化が非常に難しいです」

1日2リットルも飲む必要ある?

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最近は、美容や健康のためには1日に2リットルの水分補給が必要という話も聞く。実際にそうしている人もいるだろう。そんなに飲む必要はあるのだろうか。

「水を2リットルという量はよく目にしますが、日中の涼しいオフィスで働いている人は、そんなに飲む必要はないでしょう。一方で、日中外に出る機会が多い方や外で働いている方は、より多くの水分を摂取する必要があります。環境によっては2リットルをはるかに超える水分摂取が必要な職場もあります。環境だけでなく、年齢や健康状態によって大きくことなるため、難しいですし、何リットル飲めばいいという一般化は危険です」

「水分補給をしているから大丈夫」や「毎日2リットル飲んでいるから、水は足りている」といった安易な考えは危ない。自分の生活する環境に適した水分補給が必要だ。

さらに、「のどが渇いたら飲めばいい」というわけでもなく、年齢によって水分補給のタイミングは違うという。

「若年の成人で、涼しいオフィスで働いているならばのどが渇いたときに水分補給をすれば十分です。一方で、高齢者の多くはそもそものどの渇きを感じにくくなっているので、のどの渇きを水分摂取の目安とするわけにはいきません。こまめに水分摂取を習慣とするのがいいです」

特にこの時期は、どうしても冷たい飲み物をゴクゴクと飲みたくなってしまうが、水分補給に適切な温度はあるのだろうか。

「冷たい水を飲んでも構いません。医学的には、極端な温度でなければ、個人個人の好みで、飲みやすい温度で飲めばいいと思います」


今井直彦
慶應義塾大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科の講師。専門は腎臓病・高血圧・腎移植。

取材・文=多古 海月