SNSを活用して仲を深めている夫婦がいる一方、SNSが原因で夫婦の危機を迎える人たちもいる。

ホウドウキョクが実施した事前アンケートでも「相手が異性とやり取りしていることは不安」「浮気が心配なので必ず見る」という意見があったが、こうした男女関係への不安はもちろん、相手の嫌な部分を垣間見てしまうこともときにあるに違いない。

実際、夫婦でSNSを利用するのは吉なのか、凶なのか。『「うまくいく夫婦、ダメになる夫婦」の心理』の著者である早稲田大学名誉教授の加藤諦三先生に話を聞いた。

夫婦関係がうまくいかないのはSNSのせいではない!?

「SNSがきっかけで夫婦の危機に陥ったという話を耳にしたことがあります。しかし、それはSNSが原因で関係に亀裂が入ったのではなくて、もともとうまくいっていない状態だったところでSNSを利用したばかりに、その問題が表面化してしまっただけではないでしょうか」

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一般的にSNSによって発生した夫婦のトラブルとして挙げられるのは、「相手が自分よりもSNSに夢中になっている」「自分の知らないところで愚痴をこぼしていた」「知らない異性と仲良くしている」などだろう。しかしそれらは、SNSを利用したことで大きな問題に発展したのではなく、もともと夫婦が抱えていた問題がSNSによって浮き彫りになったに過ぎないというのだ。

「そうした問題の背景にあるのは“情緒的未成熟”です」と加藤先生は説明する。

この情緒的未成熟とは、相手が自分の期待する反応をしないと傷いたり、怒ったり、不安になったりする心理状態のことを意味する。逆に、成熟している人は相手の欲求を受け入れることができるので、大きな問題になることなく、解決していくのだという。

「恋愛関係も夫婦関係も、情緒的に成熟していれば相手の反応を見て反省できますが、未成熟の場合は頭にきてしまうのです」

関係悪化からの“SNS依存症”には要注意!

そして、こうしたパートナーへの行き場のない気持ちをSNSで発散してしまうと、状況はどんどんと悪い方向へ。夫婦関係に亀裂ができてしまい、それがさらなる悲劇に繋がる。

「夫婦関係がうまくいかないからとSNSに逃げてしまうと、SNS依存症になってしまう可能性もあります」と加藤先生。

アルコール依存症患者が現実から逃げるためにお酒を飲む構造と同じように、いつのまにか脅迫的にSNSをやっていなければいられない人になってしまうのだ。そうなると、SNSが自分や相手の負担になっているのに離れられなくなってしまう。

こうした状況を打破するためには、SNSで鬱憤を晴らすのではなく、きちんと現実と向き合わなければならない。

「夫婦関係がうまくいかないからとSNSに逃げてしまったら、自分はこの問題を解決できないという感覚を強めてしまいます。夫婦関係がうまくいっていないときほどSNSに手を出したくなるかもしれませんが、目を逸らさずにきちんと問題と向き合い解決していかなければいけません」

夫婦問題を解決するには、現実で向き合わなければいけない

冒頭の話でも分かるように、夫婦関係の亀裂はSNSが直接の原因ではない。夫婦関係が良好な状態であれば、SNSを利用することが悪い作用をもたらすのではなく、むしろプラスに働くことも多い。

お互いが情緒的に成熟し、愛する能力があれば、SNSを通じて関係を深めることもできる。それができていない夫婦は、SNSではなく自分たちの中に問題があることを自覚しなければならない。

「SNSを通じて相手の姿を見るのではなく、きちんと現実で向き合うことが重要」と加藤先生。

問題はSNSの中にはないのだ。

■加藤諦三
1938年、東京生まれ。東京大学教育学部教養学科、同大学社会学研究修士課程を終了。1973年以来、度々、ハーバード大学准研究員をつとめ、現在は早稲田大学名誉教授として、同校でも現役教授中。さらに、ニッポン放送系ラジオ番組「テレフォン人生相談」のパーソナリティーを半世紀近くつとめ、国内外の文化・文学に精通した作家としても活躍中。著書に『「うまくいく夫婦、ダメになる夫婦」の心理』(PHP研究所)をはじめ、『「自分の働き方」に気づく心理学』(青春出版社)、『なぜ、あの人は自分のことしか考えられないのか』(三笠書房)、『人生は「捉え方」しだい 同じ体験で楽しむ人、苦しむ人』(毎日新聞社)など、多数。http://www.katotaizo.com/



文=安東 渉(EditReal)
編集=村上 広大(EditReal)
イラスト=浜名 信次(Beach)
モーションデザイン=濱本富士子(Beach)