離婚率が年々上昇を続けている。熟年離婚や、高齢化社会の訪れにより、死別による単身者の増加も無視できない。ひとりで晩年を過ごすケースは、今や珍しくない風景になりつつあるといえるだろう。しかしその一方で、人口動態統計によると2012年時点で50歳以上の婚姻による女性との同居を始めた男性は2万5514人もおり、2000年代に入って熟年者の結婚や再婚のケースは急増している模様。年を重ねて再び恋に巡り会うことも増えているようだ。

「一人で生きていくのって、寂しいじゃないですか。それを軽減するための結婚は、いくつになってもすばらしいですよね」

こう語るのは、渋谷にあるワインバー「bar bossa(バールボッサ)」のマスター・林 伸次さん。いかにも優しい印象だ。男と女の複雑な人間模様をカウンター越しから見つめ続けて20年。男女の恋愛について様々な観点から考えを綴った「ワイングラスのむこう側」を上梓し、ネット上で恋愛相談も受ける“恋”のスペシャリストだ。

というわけで、ここからはマスターに恋愛相談の時間だ。

Q.年を重ねて結婚や再婚を諦めきれない…どうしたら恋に巡り会えますか?

「ピッタリの人は必ずどこかにいます。『私ダメかも。結婚できないかも』みたいな感じで落ち込んでいる方も、ポンと結婚されるケースって多いじゃないですか。積極的に恋を探して行動していると、いつか出会えると思いますよ。それはいくつになっても同じことです」

――じゃあ具体的に、どうしたら巡り会えるんですか?

「どの年代にもいえることですが、数を重ねなきゃいけないんです。法則があるそうで、24人くらいに会って、ようやくいい人と出会える程度の確率です。婚活アプリなども流行っていますが、ちょっとリスクがあったり、傷ついたり欺されるケースも多いですから、僕がオススメしたいのは結婚相談所です。思い悩んで悶々とするくらいだったら、そういうサービスを利用するのも手です。高齢者向けの相談も少なくないですからね」

――ただ、結婚相談所となると費用も時間も掛かりますよね? もうちょっと手軽な方法があるといいんですけど…。

「婚活パーティなんかいかがでしょう? 実はうちでもよく開催していて、男女10人ずつ集まってもらい、少しずつ話して、最後に気に入った人を5人まで書いてもらうんです。毎回『本好き集まれ』とか『スポーツ好き集合』とか、テーマを決めているんです。

こんな話があって。本を出している女性がいて、本屋でバイトをしている方なんです。派手でモテる感じじゃないんですけど、10人中9人が好きだという人気ぶりでした。男性って、自分が好きなジャンルを語れる相手は、もう一度会いたいなと思うらしいんです。でも彼女が『スポーツ好き〜』の方に出ていたら、そんなに人気じゃなかったと思うんですよ。

だからやっぱり、趣味や好みが合うところで出会うのが一番いいんだろうなと思うんです。趣味の集まりとか、読書会とかね。たぶん趣味や収入とか属性とか、いろんなものが合う場所だと思うから、熟年の方にとっても近道かなと思います。それに間に誰かが入って伝言してくれるのって、すごくラクなんですよね。とくに熟年になってくれば、自発的に恋愛に持ち込むのってすごくパワーが要りますよね」

Q.じゃあ実際に巡り会えたとして、どう恋を育んでいけばいいですか?

「様々だと思うんですが、相手が何を望んでいるかですよね。たまたま知り合えて、たとえば年を重ねたおじさんが『デートだ』と思って行ったら、お相手が若い女性だった場合『そんなことは考えられない』と感じるケースもあるわけじゃないですか。相手のトーンを見極めて、あとは昔を思い出しながら、いろんな手を試してほしいですね」

――それが恋愛の醍醐味ですもんね。醍醐味といえば、肌の触れあいについても聞いておきたいんですけど、そういう下心を相手にぶつけてもいいんでしょうか?

「いいとおもいますよ。60歳を超えてもお盛んな人はお盛んですから。20代の人が、30代や40代もセックスすると聞いて驚いた…なんて話を聞いたことがありますけど、実際にしている例は当たり前にあるじゃないですか。熟年者でも、やる気があればやればいいし、それが当たり前だと思うんです」

――確かに年を重ねても、性欲はしっかりありますもんね。そうやってちょっとずつ距離を詰めながら結婚や再婚を考える…。いくつになっても、人のやることは同じなのかもしれませんね。

Q.最後に、熟年結婚や再婚には、どんないいことがあるんでしょう?

「やっぱり、ひとりで死ぬのは寂しいとみんな思っているんですよ。特にだんだん高齢になってくると、怪我したり病気にかかる可能性も増えていきますから。そうなったとき、近くにいない友だちは『大丈夫?』なんて声を掛けてくれませんよ。一緒にいて『あれ、どうしたの?』と声を掛けてくれたり、救急車を呼んでくれるのは配偶者じゃないですか」

——ただ、熟年者の結婚にはハードルもありますよね?

「たしかに再婚の場合、すでに子どもがいるケースや、親族の理解を得られないということもあるかもしれません。でもひとりで住むより家賃も下がるし、生活の不便を分かち合えるという実利的なメリットもあります。でも一番大きいのが、これは当たり前のことですけど、気持ちの面でいいことだらけなんですよ。『ただいま』『いってらっしゃい』を言い合える相手がいるだけで、その人の人生はすごく豊かになります。帰りが遅いのを心配してくれたり、事故や地震のニュースを知ったら身を案じてくれるわけじゃないですか」

…このように、年を重ねても、結婚することの利点は実に大きいようだ。好きになって籍を入れて、支え合って添い遂げる。年を重ねるとなまじ知恵を付けて、難しくハードル高く考えるかもしれないが、蓋を開けてみればシンプルな話だと林さんは教えてくれた。年を重ねてもし寂しさを感じたら、好きになる人を探してみてはいかがだろうか。人と人との関係は、人と人とによってしか満たせないのだから。


(執筆:吉々是良)

林伸次さん
1969年生まれ。徳島県出身。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」店主。『Oggi』(小学館)で「渋谷のバーのマスターから、少しだけ恋に疲れたあなたに伝えたいここだけの話」連載中。著書に『バーのマスターは、「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』(DU BOOKS)、『ワイングラスのむこう側』(KADOKAWA)などがある。