別の目的で開発した商品が予想もしなかった用途で話題となり、化粧品として新たに販売されるという実際に起きたまさかの展開。

それは「美しく咲く花を長持ちさせよう」と沖縄の医大生ら男子学生が開発した園芸用品で、その成分そのままになんと化粧水としても販売することになったのだ。
成人の日の1月11日に、「株式会社 悟空のきもちTHE LABO」から販売開始される化粧水「ひとか」だ。

化粧水「ひとか」
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園芸用が同成分のまま“化粧品登録”

もともと、19歳の沖縄の医大生がコロナ禍の休校期間を利用して始めた「花を長持ちさせる」自由研究により開発したのは園芸用「花びら液」で、2020年10月より同社で販売されていた。
 

同じ成分でできている園芸用「花びら液」

直接花に吹きかけることで花びらを潤し、水に比べ1.3~1.8倍、花を長持ちさせる効果があるというものだ。
 

水と園芸用「花びら液」の比較(左:水 右:園芸用「花びら液」)

花を長持ちさせる仕組みは、花びらの細胞膜にある水分の通り道“アクアポリン”を透過させる目的で、独自の「ポリン最適化処理」により水に特殊な加工を施し、不純物を取り除き、植物細胞の内側まで潤いを届けるというもの。
 

潤いの仕組み

実は、このアクアポリンによる水分子の取り込みは、ヒトの肌でも起きているというが、ヒトの顔の皮膚約2ミリに比べ、花びらの厚さはその約10分の1である平均0.2ミリと薄く、もろくて弱い。保湿も苦手で、少しでも有害成分が入ると変色したり、枯れを早めたりする。人間に例えると敏感肌どころではない。
 

大手百貨店の電話「化粧水として売りたい」

そんな繊細で敏感な花びらにも潤いを届け保湿できる園芸用「花びら液」の転機となったのは一本の電話だった。
それは2020年11月、東京の大手百貨店からかかってきた「化粧水として売りたい」という電話だった。

その電話によると、一部の女性たちから化粧水として使えると評判になり完売が相次いでいるというのだ。同社は急遽、化粧品登録の道を模索し、園芸用「花びら液」を成分そのままに、化粧品登録することにした。

園芸用品を同じ名前で化粧品登録はできないことから、人間用はヒト科をモチーフに商品名「ひとか」と名付け、化粧品として新たに誕生したのだという。

化粧品「ひとか」は、1月11日販売開始であるが現在既にホームページにて、4300円(税抜き)で購入予約することができる。
ちなみに、園芸用「花びら液」も3100円(税抜き)で購入が可能だ。(同成分だが、「ひとか」は化粧品登録品のため価格は割高となっている。)

では実際、化粧品としてはどういった効果があるのだろうか?そしてこのまさかの展開にどう思っているのだろうか?

園芸用「花びら液」及び、新たに化粧水としても販売開始される「ひとか」を開発した19歳の医大生、悟空のきもちTHE LABOの太田旭さんに、話を聞いてみた。

「なんか大人に騙されてるんじゃないかって、ちょっと心配になった」

ーーそもそも園芸用「花びら液」を開発することになった経緯とは?

愛知から沖縄に来て、生まれて初めてハイビスカスを見ました。とても綺麗なので僕はこの花が大好きです。でもこの花、一日で枯れちゃうんです。摘んで帰ったら、家に着く頃には枯れちゃってたり。それでハイビスカスがもっと長く咲けば、僕のアパートの部屋をハイビスカス園みたいにできると思ったからです。

悟空のきもちTHE LABOの開発者・太田旭さん

ーー園芸用「花びら液」が化粧品として使用されているのは、どのようにして知った?

百貨店の商品担当の方にはじめて聞きました。「化粧水として使用できるという話を聞いたがどういうことか」という質問だったのですが、そんなことは知らないので答えることができなかったです。

しかし、そのあと人間への使用に関してラボに問い合わせがたくさん来ていて、本当に人に使われているんだなあと思いました。


ーー百貨店から「化粧水として売りたい」という電話が来た時、どう思った?

とにかく驚いたというか、電話が来てすぐには状況が飲みこめませんでした。一緒に開発した仲間内でも騒然というか、パニックに近い感じでした。

一旦よくわからなかったので、とりあえずみんなで海までドライブに行きましたが、なんか大人に騙されてるんじゃないかって、ちょっと心配になったくらいです。

園芸用「花びら液」

「化粧品なんて考えつくこともなかった」

ーー元々、化粧品として使用できるという考えはあった?

化粧品なんて元々使ったことなかったので、考えつくこともなかったです。化粧品として使用してることを初めて聞いた時も、ぜんぜん意味がわからなかったし。
でも、よくよく考えてみて、花びら液の作り方とかを思い出してみると納得がいきました。


ーー化粧品として販売することに対してはどう思う?

「花びら液」の化粧品としての効果を、栃木の化粧品会社シーランさんに確認してもらった所、すごく褒められて量産も可能ということで、化粧品として発売することに自信が持てたので、たくさんの人に使ってもらえたらいいなと思っています。

悟空のきもちTHE LABOの開発者・太田旭さん

ちなみに、太田さんは「アパートの部屋をハイビスカス園にしたい」という願いを、園芸用「花びら液」完成と共に実際に試してみたという。

大学近くのハイビスカスを30本ほど摘み、楽しもうとしたそうだが、1日しか咲かないハイビスカスを約2倍長持ちさせたとしても、2日しか保たないことに気付いてしまったんだとか。
「すごい達成感はあったけれども、あれ?できなくないか?とガッカリもしました」と、笑いながら話してくれた。

花すら枯れないほどの保湿力の高さ

ーー化粧品としての効果はどういったものなの?

花びら液の優れている点を一言でいうと、「花すら枯れないほどの保湿力の高さ」です。
花びらの厚さは人間の肌の10分の1。一般的なほとんどの化粧水では花が枯れてしまうほどの超敏感、花びら液は保湿力が高く、肌へのダメージも圧倒的に少ない商品と自信を持っています。

他の化粧水との比較 真ん中が化粧水「ひとか」

ーー化粧品として販売するにあたり、苦労した点は?

まず、開発に関わったラボのメンバーは男子ばかりで、みんな化粧品についてほとんど何も知らなかったので、化粧品っぽい容器のデザインを考えるのが難しかったです。男子がたくさんの化粧品を買って、みんなで並べて眺めながら考えました。

他にも製造会社の栃木県のシーランさんとの量産化への開発や、容器ボトルの会社への依頼 ラベルや容器印刷の発注など、初めてすることやうまくいかないことなどがたくさんあり、いま考えると、僕たちの成人式に発売したいがために無理があったみたいで、多くの人たちに助けられながらどうにか発売できました。

開発メンバー(左から岡村健太郎さん、太田旭さん、岡村連太郎さん)

ーーなぜ成人の日に発売したいと思った?

園芸用がヒト用になるというのは、未成年が成人するのと似ているなと感じたので、成人式にかぶせました。

また、開発メンバーの多くが新成人なので、成人祝いの祝砲というか、最近暗いニュースが多いので、2000年生まれのみんなの明るい未来をお祈りする意味で、この日にしました。
僕も含めて新成人のみんなで、これから日本を活気立たせていきたいです。

最初の発売用意分は数時間で予約完売

ーー実際に、化粧品として使用してみた?

電話が来てから初めていろいろな化粧水を顔に塗ってみたのですが、「ひとか」は他のものと比べて、さっぱりとしながらも、しっかり肌のモチモチ感を感じられる付け心地ですごいなって思いました。

化粧水を試す太田さん

ーー現在の反響はどう?

発表と同時に協力していただいている悟空のきもちのフォロワーに、発表のお知らせをしたのも効果が大きく、最初の発売用意分300個は発表して数時間で完売予約で埋まり、問い合わせも数多くいただいたため、現在製造を拡大し、次回は生産を4倍の1200個を予定していますが、もうすぐそれも完売の勢いです。

周りの友達に化粧品を作ったことにものすごく驚かれてます。「化粧品職人」とかふざけて呼ばれてちょっと嫌です。


ーーその反響に対してはどう思う?

化粧品なんて全然知らなかったのにこんなに売れて驚きました。それに、僕はもともと園芸用で作ってて、自分でも予想外のことが起こっているのに、「化粧品の人」みたいになってて恥ずかしいというか、複雑なきもちです。

また、化粧品として売り出すことに対し不安はあったのですが、株式会社シーランのお墨付きをもらえたことが一歩を踏み出すきっかけになりました。

左:園芸用「花びら液」 右:化粧水「ひとか」

百貨店からの「化粧品として売りたい」という電話にパニックになり、とりあえず海までドライブに行くという混乱っぷり。化粧品として使用できることにどこの誰よりも驚いたのは、開発したメンバーたちだったのではないだろうか。

なお、園芸用「花びら液」も化粧品「ひとか」も、どちらも“美しく長く咲いてほしい”という願いを込めていると話している。

寒さの厳しい冬の季節、乾燥が気になる人もいるだろう。繊細な花びらの潤いを長く保てる、保湿力抜群の園芸用「花びら液」…ではなく、化粧品「ひとか」を使って、肌に潤いを与えてみるのはどうだろうか。花びらのような肌を手に入れられるかもしれない。
 

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