晩婚化と共に増加する「DINKS」

「夫婦にはさまざまな“幸せの形”」がある。そう語るのは、Facebookで「子どものいない人生を考える会」を運営する朝生容子(あそうようこ)氏だ。キャリアコンサルタントとして、さまざまな子どものいない夫婦の悩みに答えてきた傍ら、自身も不妊治療経験があり、結果として子どものいない人生を歩んでいる。今回は、子どもがいない夫婦のリアルについて、朝生氏にお話を伺う。

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「『子どもを持つべきだ』と考える夫婦が減っているのは事実です(※1)。子どもがいても2人目はためらうという人も多い。その理由は晩婚化が進んだため、高齢出産を避けたいというものが第一にあげられます。また、夫婦が自分のライフスタイルを重視するようになり、結果として子どものいる生活を選ばなかったという例も増えているように思います」(朝生氏、以下同)

(※1)2015年出生動向基本調査
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/doukou15_gaiyo.asp

子どものいない共働き夫婦は「DINKS(ディンクス)」と呼ばれる。「DINKS」は「Double Income No Kids(2 収入 子どもなし)」の頭文字を取ったもので、「DINKS」を含める「核家族世帯」は年々増加傾向にあるようだ(※2)。自身が考える幸せの形を、子どもを持つこと以外で追求している人たちが、時代の流れと共に増えているのだろう。

(※2)平成27年 国民生活基礎調査の概況「世帯数と世帯人員の状況」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa15/dl/02.pdf

子どもがいない夫婦の苦悩

子どもを持たない夫婦と数多く接してきた朝生氏。その中で、最も印象に残った夫婦のリアルを伺った。

「夫が会社勤めで出張がちである一方、妻が自営業で、一緒に過ごす時間が短いにもかかわらず、仲の良い様子が印象的なご夫婦がいらっしゃいました。実は、望んだにも関わらず子どもに恵まれなかったのだそうです。『今でも思い出すと辛い』と話されますが、その苦しさを夫婦で乗り越えられたからこそ、夫婦のつながりが強くなったのではないかと感じました」

「DINKS」と一括りにしても、最初から子どもをつくらないと判断した夫婦と、不妊症などが原因で子どもを授かれなかった夫婦では大きな違いがある。朝生氏は続けてこう語る。

「同時に、子どもがいないからこその“苦悩”もあります。例えば、『まだ子どもをつくらないの?』ということを同年代で、同じ頃に結婚した人から言われることがあり、それが大きなプレッシャーとなるんです。また、少子化が進んでいる今、『次世代に貢献していない』と痛烈に批判された例も少なくありません」

幸福度の振れ幅が違う

子どもがいる夫婦といない夫婦では、「幸福度」に違いはあるのだろうか。朝生氏はこう語る。

「2008年から2012年に行われた米国プリンストン大学とストーニーブルック大学の調査によれば、子どもの有無によって夫婦の幸福度は変わらないという結果が出ています(※3)。ただ、幸福度の“振れ幅”は子どもがいる夫婦の方が大きいようです。例えば、子どもの成長が期待に添わず失望することがあれば、期待以上に育ってくれることもある訳です。自分ではコントロールできない別の人格が影響してくるため、幸福度合いは大きく変動します。逆に、子どもがいない夫婦だと、自分達の力である程度コントロールできますから、振れ幅が少ないんです」

(※3)子どものいない方が夫婦は幸せ? 米英で調査
http://www.cnn.co.jp/fringe/35042551.html

「結婚をしたら子どもをつくるのが当たり前」という風潮は、21世紀になった今も続いている。その一方で、「自分たちらしく生きていく」ため、子どもをあえてつくらない選択をする夫婦も着実に増えている。これから家庭を築こうと考えている人は、「子どもをつくるということは、あくまでも一つの選択肢である」と認識すべきだろう。これを機会に、今後どのような人生を歩みたいか、愛するパートナーと話し合ってみてほしい。

■朝生 容子(あそう・ようこ)氏
キャリアコンサルタント/講師
1965年生まれ。慶応義塾大学卒業後、大手通信会社に入社。
フェイスブックページ「子どものいない人生を考える会」を運営。
その後、社会人向け教育機関にて法人向け人材育成コンサルティング等に従事。
自らの不妊治療の失敗や、それに伴う仕事での挫折を契機に、2012年にキャリアコンサルタントとして独立。
主に40代以上の働く方を対象に年間200名以上の相談に従事。
子どもを持たない立場から、ダイバーシティ実現のための研修等の登壇や執筆活動も展開。

文:高橋一磨(ヒャクマンボルト)
写真:高山諒(ヒャクマンボルト)