妊活に対する一般男性の本音

2014年5月。お笑いトリオ、森三中の大島美幸さんが「妊活休業」を宣言したのは記憶に新しい。彼女の休業がきっかけとなり、「妊活」という言葉が世間に広く認知されたのは間違いないだろう。

しかし、世の男性陣は妊活に対してどのようなイメージを抱いているのだろうか。今回お話をうかがったのは、妊活関連の書籍を手がけているフリーライター、村橋ゴローさんだ。代表作となる「俺たち妊活部」では、101人にもおよぶ男性妊活経験者を取材しており、妊活に対する「男の本音」を紹介している。自身も妊活経験者である村橋さんは、一般男性の声を聞いて一体何を感じたのか。

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—―「俺たち妊活部」の取材にあたって、一般男性からどのようなお話を聞くことができたのでしょうか?

「奥さんがやりたいっていうから…」とか、「お金を出せばいつか諦めると思っている」といった声が実際多かったですね。おそらく、妊活や不妊治療に対する知識が無いから、消極的・無関心という人が増えているのでしょう。もちろん、妊活に対して協力的な旦那さんもたくさんいらっしゃいましたが、無関心な人の方が目立っている印象です。

そもそも、子どもが欲しいから妊活に協力的になるパターンって意外と少ないんです。男性の場合、自ら子どもが欲しいというよりも、「奥さんが望んでいるから叶えてあげたい」と考える人が多いみたいですね。

—―病院での採精(ブライダルチェック)が嫌になり、妊活をやめてしまう男性も多いと聞きます。やはり、そういった方々はいらっしゃいましたか?

実際は「ブライダルチェック」よりも、「タイミング法※」が苦手という方が多かったですね。決められた日にしなきゃいけないというプレッシャーが焦りとなり、性交渉に失敗してしまうケースも少なくありませんから。男性側が“その気”にならないと妊活はうまくいかないんですよ。

※女性の排卵時期に合わせて性交渉を行うことで妊娠確率を上げる方法

妊活夫婦が直面するリアル

—―取材を通じて、強く印象に残ったご夫婦はいらっしゃいましたか?

不妊治療を始めてから、何年経っても子どもができない夫婦がいたのですが、奥さんが「もし良かったら別れて欲しい。若い女性と再婚して、あなたの大好きな子どもを作った方がいいわよ」と切り出したそうなんですね。

それに対して旦那さんは、「そんな風に言ってくれる人だったら一生寄り添っていける」と改めて思ったそうなんです。妊活がきっかけで夫婦の絆を再確認したケースですが、取材した中で一番印象に残りました。

あと、僕が取材した訳ではないのですが、8年間で約3000万円かけて不妊治療を続けた結果、子どもができなかった人もいます。不妊治療って、真っ暗なトンネルの中をトボトボと歩いている感覚に近くて、子どもを授かれるかどうかもわかりません。「これだけ時間と大金を費やしたのだから今更やめられない」みたいな気持ちになってしまったのかな、と思いますね。


—―村橋さんも奥様と不妊治療に臨まれたそうですね。

うちは奥さんが39歳の時に不妊治療を始めたのですが、僕自身できるだけクリニックに同行するようにしていました。隣に僕がいるだけでも、本人は気が楽になるみたいだったので。

でも、院内には圧倒的に女性しかいないんですよ。不妊は夫婦で立ち向かうべき問題なのに、女性専門のクリニックかのごとく、付き添いの男性がいないことに最初は違和感を覚えましたね。「不妊って夫婦の問題じゃなかったっけ?」みたいな。

あと、僕たち夫婦が通っていたクリニックは、意図的だとは思いますが、患者に対してドライに接するところだったんです。優しく「今回は残念でしたね」なんて同情されたらたまらないですから、むしろ僕たちとしては気が楽でしたね。もし周りに妊活や不妊治療に取り組んでいるご夫婦がいらしたら、「つらいね」とか「大変だね」とは言わず、黙って見守ってあげるのが一番だと思います。

「予算」と「やめどき」を決めることが大切

—―妊活は仲むつまじい夫婦が取り組んでいるイメージがありますが、逆に夫婦関係が悪化してしまうケースもあるのでしょうか?

それが結構あるんです。妊活して子どもが出来たら全てハッピーに終わると思うじゃないですか。でも、妊活や不妊治療の時から「お金だけ出しておけば良いだろう」という男性だと、子どもが生まれた後に「育児不参加」になりやすいんですよ。下手したら「妊活離婚」にもなりかねません。男性側も当事者意識をもって、妊活や不妊治療と向き合うべきだと思います。


—―これから妊活を始める夫婦、あるいは既に取り組んでいる夫婦にアドバイスがありましたら教えてください。

一番やってはいけないのが「一喜一憂」です。妊娠に至るまでにはA・B・C・Dのような関所が待ち構えているのですから、それを越える度に喜んだり、悲しんだりしていたら心が保たないんです。妊娠後も流産のリスクがありますし。

妊活中はあまり感情的にならず、淡々と取り組むのが長続きさせるポイント。後悔をしないためにも、「予算」と「やめどき」を夫婦で決めておき、計画的に進めるのが良いと思います。


—―ありがとうございました。

大島美幸さんのイメージもあり、妊活に対して明るく前向きなイメージを持っている方も多いだろう。しかし、その裏側には、越えなければならない数々の問題があり、子どもを授かるまでの道のりは想像以上に険しい。だからこそ、男性側も妊活に対して積極的な姿勢を見せ、強い当事者意識を持って取り組むべきではないだろうか。


■村橋ゴロー氏
1972年生まれ。ほとんどの家事とまあまあの育児をこなす、ライター・コラムニスト。千原ジュニアや田村淳など芸人連載の構成を多数手掛ける。その一方、ママ向けサイトit mamaでは、「どの口が言ってるんだ」という感じだが、妊活や育児についてのコラムを執筆中。また、『ゴー! ゴー!! バカ画像MAX』シリーズ(KKベストセラーズ刊)は累計190万部を突破。近著に『俺たち妊活部「パパになりたい!」男たち101人の本音』(主婦の友社刊)がある。Twitterは、 @muragoro

文=高橋一磨(ヒャクマンボルト)
写真=高山諒(ヒャクマンボルト)