「不妊」の定義とは?

一口に不妊といっても、どこからがそれに当たるのか不明瞭だ。「いつか授かるだろう」と気長に考えるカップルもいれば、高齢出産のリスクを恐れて焦るカップルもいるだろう。

一体何をもって不妊と考えればよいのだろうか。男性不妊に詳しい泌尿器科医の小堀善友氏に話をうかがい、男性不妊の真実に迫った。

「不妊の明確な定義はありませんが、1年以内に子どもができなければ、男性・女性どちらかに原因があると考えて検査を受けた方が良いでしょう。もしどちらかに原因があった場合、不妊治療を行わないまま、数年後に自然と子どもを授かるという確率はかなり低いです。そして、加齢とともにさらに確率は下がり、リスクは増えるため、早めに判断して医師に相談をしてほしいです」(小堀氏、以下同)

実際、一般男性300名に対して「妊活から何年以内に子どもができなければ不妊と考えるか」というアンケートを実施したところ、以下のような結果が出た(※)。

この記事の画像(5枚)

今回のアンケートでは、未既婚に関わらず、不妊だと思うまでの期間が「3年以上」という回答が最も多かった。さらに未婚者は不妊だと疑うまでの期間が長く、それに対して既婚者は、期間が短い傾向にあるよう。しかし、小堀氏が警鐘を鳴らすように、1年以内に子どもが出来なければ、早い段階で医師に相談すべきだ。

女性を苦しめる、不妊への先入観

実際、不妊を疑ったカップルは、まず女性の検査に訪れるというケースが多いそうだが、不妊の48%は男性にも原因があるという。約半分という高い数値に“寝耳に水”と感じる男性は少なくないだろう。しかし、何故男性の不妊は女性に比べて認知されていないのだろうか。

「これは簡単な話で、歴史的な先入観に問題があります。キリスト教の聖書にも、子どもを授からない女性を示す石女(うまずめ)という言葉(※現在は差別用語とされている)が登場する通り、古くから『妊娠は女性の仕事・不妊は女性に原因がある』という意識が根強く残っています。ちなみに、私が以前住んでいたアメリカでは、男性不妊の治療を行える医師が1人もいないという州もあるほど、不妊に関する間違った認識は、日本だけでなく世界的な問題です」

「男性不妊」の定義とは?

不妊の半分は男性にも原因があるという真実を知ると、妊活や不妊と向き合う男性の気持ちも随分と変わるだろう。
では一体どういった状態が「男性不妊」にあたるのだろうか。

「WHO(世界保健機関)が2010年に出した精液検査の基準により、精子の精液量が1.5ml以下、精子濃度が1500万精子/ml以下、運動率が40%以下の場合、妊娠する確率が5%以下になると示されています。これ以下でも妊娠できる人もいれば、逆にこの値以上でも妊娠できない人もいますが、検査の結果としてはこれらの値をもとに男性に原因があるか否かの判断をしています。このような精子の“質”に問題がある場合以外にも、勃起しない、または射精しないといった場合も、男性不妊といえます」

小堀氏が話すように、精子の健康状態は不妊に大きな影響を与えている。そもそも、一般男性は自身の精子の状態を意識したことがあるのだろうか。アンケートを実施した結果は以下の通り。

やはり大多数が健康状態を意識したことが無いようだ。不妊治療に対する男性の意識の低さと、男性不妊の定義が明らかになったところで、次回は男性不妊の原因に迫る。

■小堀善友氏
獨協医科大学越谷病院 泌尿器科医。2016年4月24日 宮城県仙台市にて開催された日本泌尿器科学会にて、ボールレンズ(小さな拡大レンズ)を用いた精液検査をテーマにした研究発表が、総会賞を受賞。2016年5月6日 アメリカ・サンディエゴにて開催された、アメリカの泌尿器科学会(AUA2016)にて、ボールレンズ(小さな拡大レンズ)を用いた精液検査をテーマにした研究発表がBest Poster Awardを受賞。

Facebook:コボちゃん先生射精障害講座
連載:ヨミドクター「オトコのコト医師・小堀善友ブログ」

取材・文=下條信吾
写真=高山諒

(※インターネットによる独自調査。調査期間:2017年3月実施。調査協力:ネオマーケティング)