ここ10年、子どもとデジタルの関係性は急速に深まりつつある。子どもたちは、幼い頃からPCやスマホに囲まれて育ち、当たり前のようにデジタル端末やインターネットを使いこなす時代になった。

そんなデジタル世代の寵児として名を馳せた、天才プログラマーがいる。2012年当時、弱冠16歳にして、とある全国的な大会にてプログラマーとしての名声を確固たるものにした矢倉大夢くんだ。

その大会とは、朝日新聞社とテレビ朝日が主催する、高校生を対象にした科学技術の自由コンテスト「高校生科学技術チャレンジ(JSEC)」。そこで矢倉くんは、文部科学大臣賞富士通賞のダブル受賞を果たした。現在は、筑波大学に通いながら大企業相手にシステムの開発や提供を行っている。

彼を筆頭に、デジタル寵児や科学者の卵を発掘してきた“理数系人材育成の登竜門”ともいえるこのコンテスト。一体どのようなものなのだろうか。

現代のデジタル寵児を発掘した、科学者の登竜門的コンテスト

2016年に行われた国際大会「Intel ISEF」の参加メンバー。日本からは、2015年のJSECにて上位入賞を果たした高校生たちが参加している
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「JSEC」で募集しているカテゴリーは、動物科学、植物科学、化学、生化学、細胞・分子生物学、微生物学、行動・社会科学、物理学・天文学、地球・環境科学、計算生物学・バイオインフォマティクス、組み込みシステム、システムソフトウェア、ロボット工学・知能機械、機械工学、材料科学、エネルギー:化学的、エネルギー:物理的、環境工学、生物医学・健康科学、生体医工学、トランスレーショナル医科学、数学など、多岐に渡る。

上記のジャンルの中から、自由研究によって生み出した科学技術を各自レポートにまとめ、審査員たちに発表する。審査は、大学教授を中心とする専門家たちが行う本格的なものだ。

さらに、このコンテストの特徴的なところは、上位入賞者の中から数名がアメリカで開催される国際大会「Intel ISEF」に派遣される点。高校生の頃から世界における自分のレベルを知ることで、広い視野を持つ国際競争力のある人材として成長していくことが期待できるという。

情報系では、矢倉くんが「Androidにおける機械学習を用いた新たなマルウェア検知システム」というテーマで、ウイルスを自動的に判別するシステムを開発し、2012年に文部科学大臣賞を受賞。2013年には「ユーザーインタラクションを用いた楽曲の構造理解システム」をテーマに、科学技術政策担当大臣賞富士通賞をダブル受賞している。

2014年にはコンピューター科学の分野で、「白黒フィルム写真のカラー化」という研究テーマで上田樹くんが文部科学大臣賞を受賞した。

自ら考え、解決していくことのできる次世代型の人材を育てる

コンテスト開催の目的は、若い頃から「自発的に考えて課題を解決する力」を身につけてもらうことにあるという。こうした力は、暗記や詰め込み型の学習では養えない。科学の広い分野から自分で自由に研究テーマを探し、技術を深め、高度な専門家たちに向けて発表し、評価される機会が非常に大きな刺激になることだろう。ひいては、日本の科学技術水準の向上にもつながっていく。

コンテストにおいて、情報工学に精通する高校生の数は、ほかの科学の分野に比べるとまだ少ないという。しかし、矢倉くんのように高い実力を持ち、国際大会を目指して参加する優秀な高校生は一定数存在する。

今後、さらにIT化社会が進めば、情報系を目指して実力を磨く学生も増えていくかもしれない。将来、夢のようなイノベーション技術を生み出す、次世代の人材がこのコンテストからたくさん輩出されることだろう。

■JSEC 高校生科学技術チャレンジ
http://www.asahi.com/shimbun/jsec/


文=井上真規子(verb)