今季も熱い闘いが繰り広げられる中、7月1日、プロ野球・中日ドラゴンズの人気応援歌が演奏自粛となった。
ファンたちは公式応援団の突然の発表に困惑している。
30代男性:
もう何年もずっとやってたんで、急になんでかなとは思いました。
60代男性:
あの応援歌がないと、やっぱり中日らしくない。今の世の中、なんでも規制でね。
40代男性:
納得いく部分もあるんですが、これで自粛しちゃうというのは、まぁまぁ…グッと我慢して、別の応援歌で応援したいと思います。
チームは5連勝中だったが、その影響もあってか7月2日の巨人戦では6対0の完封負けを喫した。
なぜ応援歌が自粛となったのか?その真相に迫った。
「教育上良くない」人気フレーズに監督が提言
問題の応援歌は、ピンクレディーのヒット曲「サウスポー」の替え歌で、2014年シーズンから歌われているもの。
「スーパースターのお出ましに ベンチのサインは敬遠だけど 逃げはいやだわ」という歌詞を応援歌では次のようにアレンジしている。
「みなぎる闘志を奮い立て お前が打たなきゃ誰が打つ 今 勝利を掴め」
中日ドラゴンズの公式グッズのタオルにも「お前が打たなきゃ誰が打つ」とプリントされるほど人気のフレーズだが、選手のことを「お前」と表現していることをめぐり、中日の与田剛監督はこう指摘したという。
中日ドラゴンズ・与田監督:
「お前」という言葉を子どもたちが歌うのは、教育上良くないのではないか。
公式応援団によると、球団側から「お前」という歌詞を変更するよう求められたという。要請を受けた公式応援団は、「シーズン中の変更はファンに周知するのが難しい」として、7月1日に自粛を発表した。
「お前」の語源は目上の相手に使う言葉…親たちはどう思う?
では、「お前」とは本来どのような相手に使う言葉なのか?
日本語学者・飯間浩明氏:
「お前」という言葉は、もともと「大前(おおまえ)」という形で、奈良時代以前には使われていました。その頃は、神仏や位の高い人を指した言葉でした。
江戸時代の始めくらいまでは、目上の相手に対して使う言葉だったのですが、中期になると同等の相手に使う例が多くなり、後期になると目下の相手に使う例が増えてきて、現在に至ります。
この「お前」という表現を子どもたちが使うことについて、街の親たちの考えは…
2歳の親(男性):
応援ソングで歌うのはいいと思いますけど、「お前」という言い方はあまりよくない。
10歳と4歳の親(男性):
応援の歌で「お前」は全然問題ないかな。友達同士でふざけて「お前」とか言うような時もありますが、親としてはあまりうれしくない。目上の人に対しては絶対に言ってはダメだと思いますね。
さらに、教育の観点から専門家の見解を聞いた。
大阪教育大学・小﨑恭弘准教授:
応援の場などで気持ちや思いがこもったりすると、人を呼んだりする敬称はいろいろあってしかるべきだし、こんな使い方もあるんだということを経験できたらいい。
大阪教育大学・小﨑恭弘准教授:
日常生活で「お前」と言うのは、僕はよくないと思います。うまくコントロールできるようにしてあげたらいいんじゃないでしょうか。
与田監督「やめろとは言っていない」応援団は歌詞の変更も検討
2日夜、試合を前にスポーツ紙の取材に応じた中日の与田監督は、次のように話した。
中日ドラゴンズ・与田監督:
自粛して欲しいわけでない。「やめろ」とは一言も言っていない。応援団の方々をリスペクトしている。シンプルに名前で呼んで欲しいだけ。
さらに、「自分だけでなく他球団にも“お前”はイヤだという意見がある」と発言の真意を説明した。
応援歌を自粛した中日ドラゴンズの公式応援団は、自粛期間は未定で、「お前」を別の言葉に変更することも含めて検討し、来シーズン開始までには間に合わせたいとしている。
(「めざましテレビ」7月3日放送分より)