不眠に繋がるさまざまな要因とは

「ベッドに入ったのに30分経っても寝られない」
「寝てもすぐに目覚めてしまう」
「朝起きると体がだるい」

こうした眠りに関する悩みを抱えている人はいないだろうか。終わらない仕事、不規則な生活、連日の飲み会…ビジネスパーソンから良質な睡眠を奪う要因はたくさん存在する。逆に、理想的な睡眠を追い求めるあまり「眠らなければいけない」と強迫観念に陥られ、かえって不眠に陥るケースもある。

こうした“眠れない”人たちが、眠れるようになるためにはどうしたらいいのだろうか?

「睡眠は、“体内時計”と“ホメオスタシス”というふたつの法則に従っているとされています」

そう説明するのは、睡眠コンサルタントの友野なおさん。人間の生体リズムを調整する体内時計が存在することは多くの人が知っていることだが、ホメオスタシスとは何なのだろうか?

「たとえば日中に活発に動くと、その日の夜はぐっすり眠れるということがあると思います。人間の体は、疲労度に応じて眠りの質をコントロールしているんです。こうした働きをホメオスタシスと呼びます」

つまり、このふたつのメカニズムをうまく機能させていくことが、快眠への一歩というわけだ。

体内時計を整える鍵は、太陽光にあった!

不規則な生活をしている人ほど、体内時計は狂いやすい。まずはこれをしっかりリズムに乗せたいところ。そのためにまず必要なのが“太陽光”だ。

「人は太陽光を1日に30分以上浴びると、夜にぐっすり眠れます。その効果は、睡眠薬1錠分に匹敵するとも言われています」

とは、快眠セラピストの三橋美穂さん。体内時計は太陽光を浴びることでリセットされ、それから約15時間後に眠くなるようにタイマーがセットされるという。朝にしっかり日の光を浴びることで、夜の眠りに自然と誘われるようになるのだ。しかも、朝にしっかり太陽光を浴びると、日中のパフォーマンスも向上するという。

「太陽光を浴びると、“セロトニン”という神経伝達物質の分泌量が増えるため、やる気が高まって日中を活動的に過ごすことができます。しかもセロトニンは、夜になると睡眠物質である“メラトニン”に変化するので、快眠につながるんです」

また、体内時計を調整するためには食事も大切だという。

「人の体は、空腹時間が長いほど体内時計がリセットされやすくなっています。ですから、夕食は遅い時間に取らないように注意し、また朝はしっかりご飯を食べるように心がけるといいですね」

快眠のために夕方以降をどう過ごすのか

だが、こうした朝の努力も夕方以降の過ごし方次第で無駄になることもある。現役医師であり、医療経営コンサルタントも務める裴英洙さんは次のように話す。

「眠気は疲労の度合いに比例して強くなります。帰り電車のなかで寝ているビジネスパーソンを見かけることがありますが、家に帰る前に眠ってしまうと睡眠のリズムが崩れて寝つきが悪くなってしまいます。どうしても電車で寝てしまうという人は、なるべく席に座らないで帰るのが得策ですね」

また、カフェインの過剰摂取やコンビニへの立ち寄り、飲酒なども眠れなくなる要因になるという。

「覚醒作用のあるカフェインは、血液中の濃度が薄まるまでに2時間半〜4時間半かかると言われています。夕方以降は、カフェインを含むコーヒーなどの飲料をなるべく飲まないように心がけるのが賢明です。また、コンビニの照明は非常に明るいので、光の刺激によってメラトニンの分泌が妨げられる可能性があります。しかも、思わず夜食やお酒を買ってしまうことがありますよね。胃に食べ物が残った状態で眠ると消化器官に負担がかかりますし、お酒も肝臓に負担をかけるのでほどほどにしておきたいところです」

そのほかにも、激しいトレーニングや熱いお風呂、喫煙などは脳の覚醒を促すので、眠る前には避けたほうがいいという。その一方で、就寝の2〜3時間前に軽めに運動したり、ぬるめのお湯に浸かったりすると寝つきがよくなるそうだ。

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眠れない原因は、実は日々の習慣のなかに潜んでいるケースが多い。眠れないと悩んでいる人は、まずは自分の生活を顧みてみるといい。連載のラストとなる第5回では、自分の睡眠状況を把握して改善するための方法をこれまでの内容を踏まえて考えたい。


■取材協力者プロフィール


友野 なお
睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役、科学でわかる ねむりの環境・空間ラボ主催。日本睡眠学会、日本睡眠環境学会に所属。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とする。著書に『ぐっすり睡眠!疲れとり足首ウォーマー』(KADOKAWA)、『やすみかたの教科書』(主婦の友社)

裴 英洙
医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なっている。著書に『一流の睡眠』(ダイヤモンド社)、『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)

三橋 美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。現在は、全国での講演や執筆のほか、ベッドメーカーのコンサルティングなど、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』(かんき出版)、『脳が若返る快眠の技術』(KADOKAWA)



文=村上 広大(EditReal)
イラスト=浜名 信次(Beach)