「1分で眠れる」は睡眠不足のサイン!

「目を閉じるとすぐに夢のなかだ」「いつでもどこでも寝られる」このようなことを豪語している人は周りにいないだろうか。じつはこれ、『睡眠不足症候群』という症状の表れかもしれない。

「人は入眠するまでに10〜20分かかるのが普通。目を閉じて1分で眠れるというのは、睡眠不足による疲労で体が限界を超えてしまった可能性が高いです。とくに休日の睡眠時間が平日より2時間以上長い人は注意してください」

そう話すのは、快眠セラピストの三橋美穂さん。こうした睡眠不足症候群の人は、寝つきがいいと思い込み、自分が睡眠不足だと気づいていないことがほとんどだという。つまり、“隠れ睡眠不足”というわけだ。

こうした例を筆頭に、自身が十分な睡眠を取れているかを理解している人は極めて少ない。

ホウドウキョクが300人のビジネスパーソンに実施した睡眠に関するアンケート調査では、「自分の最適な睡眠時間について知っている」と回答した人はわずか16.3%。どれだけ自分の睡眠に関心が薄いかが浮き彫りになったと言える。

ムリに睡眠習慣を変えるのは間違い

それにも関わらず、巷では「デキる人は8時間睡眠」「人は訓練することでショートスリーパーになれる」といった言葉を鵜呑みにして、自身の睡眠習慣を変えようとする人がいる。だが、これは大きな間違い。

人の睡眠体質は、6時間未満の睡眠でも大丈夫なショートスリーパー、6〜9時間の間で流動的に眠れるバリュアブルスリーパー、9時間以上の睡眠が必要なロングスリーパーの3種類にわかれる。そして、これらを分類する要素は遺伝子によって決まると言われている。無理をして自身の睡眠体質を変えようとすると、大きな負債になって返ってくる危険性もあるのだ。

「たとえば、毎晩7時間半眠っている人が5時間しか眠らなかった場合、翌日の作業能力は15%ダウンし、ひと晩徹夜すると60%にまで低下すると言われています」

とは、睡眠コンサルタントの友野なおさんの言葉。たしかに睡眠時間が減れば、それだけ自分のやりたいことに割ける時間は増える。だが、それによる能率の低下を考えると、自分に合わない睡眠を続けるのは得策ではない。自分に最適な睡眠時間を見つけ出し、起きている時間のパフォーマンスを向上させるほうが効率的だろう。

睡眠ログを取って睡眠習慣を可視化

では、どのようにしたら自身の睡眠体質を把握し、最適な睡眠時間を知ることができるのだろうか。そのための有効なツールが睡眠を可視化できる「睡眠ログ」だ。その使い方について、現役医師であり、医療経営コンサルタントも務める裴英洙さんは次のように説明する。

「睡眠ログには、入眠時間・起床時間・睡眠時間・目覚め感・その日の仕事のパフォーマンス・体調に関する気になる点などを記載します。こうしたデータをある程度の日数ためていくと、自身の睡眠傾向がわかるようになります」

睡眠に関することのほかに、食事の時間や運動の有無、カフェインの摂取時間などを付け加えると、精度はより上がっていくという


とはいえ、忙しい日々を過ごしている人にとっては、こうしたログを取る余裕もないかもしれない。

「その場合は、5つのチェック項目から考えてみてはいかがでしょうか?」と友野さん。下記の項目にひとつでもチェックが入る場合は、睡眠不足の可能性が高い。

1.朝スッキリ起きられるか
2.朝の決まった時間に排便があるか
3.起きてからすぐに朝食を食べたいと思うか
4.午前中に眠気があるか
5.休日に寝溜めをしていないか

また、平日の睡眠時間が圧倒的に少ないと感じている人は、ゴールデンウィークやお盆など、ある程度まとまった休みがあるときにログを取ってみるといいだろう。その場合、ムリに寝起きするのではなく、眠くなったときに眠り、目覚まし時計などを使用せずに自然と起きた時間を記録するのが大切だ。

こうして睡眠ログを取り、比較・検証していくと、自分がベストパフォーマンスを発揮できる睡眠時間や、逆にどれだけ忙しくてもこれだけ眠らなければいけないという最低のラインが見えてくる。そうすると仕事ができる時間や、ムリをしても大丈夫なアディショナルタイムがわかるので、仕事への意識も変わってくるはずだ。

■取材協力者プロフィール

友野 なお
睡眠コンサルタント、株式会社SEA Trinity代表取締役、科学でわかる ねむりの環境・空間ラボ主催。日本睡眠学会、日本睡眠環境学会に所属。行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とする。著書に『ぐっすり睡眠!疲れとり足首ウォーマー』(KADOKAWA)、『やすみかたの教科書』(主婦の友社)

裴 英洙
医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なっている。著書に『一流の睡眠』(ダイヤモンド社)、『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)

三橋 美穂
快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発部長を経て2003年に独立。現在は、全国での講演や執筆のほか、ベッドメーカーのコンサルティングなど、企業の睡眠関連事業にも広く携わる。著書に『驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100』(かんき出版)、『脳が若返る快眠の技術』(KADOKAWA)

■調査について

調査方法:インターネットによる独自調査
調査期間:2016年9月16~20日実施
調査対象:全国の35~44歳の男性ビジネスマン300名
調査協力:ネオマーケティング

文=村上 広大(EditReal)
イラスト=浜名 信次(Beach)