自転車によるあおり運転で全国初の逮捕

姿勢を崩し、けだるそうな表情で警察署を出て行く男。
男は2020年10月、埼玉県桶川市で、40代の女性が運転する対向車線の車に自転車で急に近づくなどした疑いで逮捕された成島明彦被告(33)。

送検される成島明彦被告  埼玉・上尾警察署 10月28日
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成島被告は全国で初めて自転車による妨害運転で逮捕された。

成島被告の妨害運転を目撃した人はその異常な運転をこう語っている。

「男は数分間の間に何度も対向車線にはみ出し、向かってくる車の運転手を驚かせていた。私が最後に見た運転手は女性だったが、その女性の表情は驚きではなく恐怖心のような顔だった。あのような異常な行動をとられたら運転手が男を避ける為にとっさにハンドルを切り、歩道側を運転している自転車等にぶつけてしまうような大事故だっておきかねない。」

ドライブレコーダーに映る成島被告 10月5日

成島被告はこの逮捕容疑だけでなく、以前から桶川市を中心に自転車による迷惑運転を繰り返していたとみられ、近隣の警察署には2020年に入り50件以上の相談が寄せられていた。

「運転手の驚く顔が見たかった」

成島被告は2019年も同様の妨害運転を行い、逮捕されている。

それは同じ桶川市の路上で、50歳の男性が運転している車の目の前にわざと飛び出し、急ブレーキをかけさせたもので、逮捕後、起訴され有罪判決を受けた。

逮捕された際の調べに対して「運転手の驚く顔が見たかった。急ブレーキをかけさせ、運転手の驚く顔を見ると楽しくなる」などと供述していた。

よく黒ずくめの服装にサングラスをかけている成島被告は、地元では「ひょっこり男」と呼ばれている。

ドライブレコーダーに映る成島被告 10月5日

捜査幹部「捜査は点から線に」

さいたま地検は成島被告を「道路交通法違反」の罪で起訴した。これにより、全国で初めて自転車による「あおり運転」の裁判が行われることになる。

捜査に関わった捜査幹部は逮捕の裏側を次のように語った。

「自転車によるあおり運転の逮捕は全国で初めてだった。全国初ということは言い換えると前例のない捜査だったということ。警察がある事件を捜査する場合、もちろん全てが同じ状況ということは絶対にないが、似たようなケースの事件ということはあり、その場合、これまでの経験でどのように捜査していけば犯人を逮捕できるという道筋は見えることが多い。
しかし、今回は自転車が車に対して行った妨害運転ということで、どのように立証していくのか、一つ一つ考えながらの捜査となった。

車が行うあおり運転の場合、あおり運転はA地点からB地点まで何メートルに及んで行ったと、被害者のドライブレコーダーや付近の防犯カメラから証明できるが、今回の成島被告の妨害運転は、秒数にして1秒ほど、一瞬だけ対向車線を走る車に対して向かっていくものなので、これを事件として立証するのは大変だった

今回の捜査は、ケガ人や死者が出てはないが、捜査員の気持ちとしては死者が出たような重要ひき逃げ事件と同じくらいの気持ちで行った。成島被告の妨害運転を一つの点として捉え、その点をたくさん集め、最終的に「線」にしていった」

注意する人ともみ合う成島被告(中央) 10月5日

「車の運転マナーが悪いので注意した」

成島被告は逮捕後の調べに対して、「車の運転マナーが悪いので注意を促した」と供述している。

自転車によるあおり運転で、全国で初めて逮捕・起訴された成島被告が法廷で一体何を語るのか注目される。

執筆:埼玉県警記者クラブ所属 河村忠徳