東京大学出身の国際政治学者・三浦瑠麗がMCを務める「三浦瑠麗×東大生」。今回のテーマは、今年4月から東大が女子学生を対象に開始した「住まい支援」。東京大学文学部4年生で東京大学新聞社所属の矢野祐佳さんに話を聞いた。

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三浦瑠麗
今日はテーマを持ってきていただいたんですけれども、それがこちらですね。

東大が女子学生にマンションを用意し、月額3万円を最長2年間支給

2016年5月までのデータで、東大の女子学生率(学部生)は、過去5年以上全体の20%未満を推移。東大は3年後の2020年までに女子学生率を全体の30%に上げることを目標としています。

今回の「住まい支援は」2017年度の入学者で自宅から駒場キャンパスへの通学に自宅から90分以上かかる女子学生を対象に、東大が民間のマンション100室を用意。そのマンションの入居者に月額3万円を最長で2年間支給します。学生の自費負担は、東京の相場的には4~5万円ぐらい。東大が用意する住まいは駒場キャンパスから30分以内の部屋で、セキュリティと耐震性に配慮した物件。

今回の支援について東大は「多様な学生が活躍できる支援体制の整備の一環」と説明しています。

「住まい支援」に対するネット上の反応は批判が多数

三浦
そもそも、東大の総長って男しかいないじゃないですか。女子学生を応援しようと思った理由は何なんだろうと思って気になったんですけど、最初の世間の反応というのはどんな感じだったんですか?

矢野
SNSやネットの記事についているコメントなどを読んだところ、お金で東大女子が来ると思っているのか、東大を受ける女子が集まると思っているのかとか、なんで男子にはないんだとか、そういう批判の方が目立っていて、逆にあまり見なかったんですけど、お金を支援すると発表したら、女子には響くんじゃないかっていう意見もあって、賛否両論であり、批判の方が多いという印象を受けました。

アンケート調査でも「住まい支援」は効果がないという声

三浦
(アンケート調査でも)住まい支援は効果がないかも、という声があるんですよね?

矢野
女子が東大に来ないのは経済的理由ではなくて、「女子は東大まで目指さなくていいんじゃないですか」という世間の風潮があるのではないか、という指摘ですとか、親御さんがセキュリティの問題などから、子どもを手元から離したくないという傾向があるんじゃないですかね、という指摘があります。

三浦
これは、経験者は語る感がありますよね。

矢野
(笑)。きっと、そうなんだろうなとは思います。

三浦
他はどうでしょうか?

矢野
東大全体に、男性中心的な考えが蔓延していて、その問題を解決せずに金銭的援助だけをしてどうにかなるのでしょうか、という意見がありましたね。

一方で「住まい支援」を評価する声も

三浦
「住まい支援」をプラスに評価する理由というのはどんなものがあるんですか?

矢野
アンケートをとったところ、金銭的理由から娘を東京の大学に行かせるのが難しいと思っている親御さんの気持ちを変えられるのではないか、あるいは、私も先ほど言いましたが、宣伝効果があって、東大を検討する女子が増えるんじゃないかというような意見がありましたね。

経済的支援の他に女子学生率を上げるために必要なこと

矢野
経済的支援以外に、女子学生の率を増やすのに効果的なのではないかなと学生が考えているのは、「女性が東大を受験すること」に対する親御さんですとか、高校の先生といった人たちが理解を持つことではないか。これは、男女ともに一番多かったですね。

矢野
あとは、安全面からということだと思うんですけれど、「女子を東京に行かせることの保護者の理解」。これは、女性の方がだいぶ多いですね。

三浦
この男女差、面白いですね。男性はこの現状を理解していない人が一定数いるにもかかわらず、女性は多くが理解しているわけですよね。だから、そういう問題が存在するっていうことを男性が知らないっていうのが、まさに男性優位社会の特徴ですよね。
ご自分では、このアンケートについてどう思われます?

矢野
私は、一番回答が多かった「周囲の理解」というところが…。これは社会的なことなので変えるのが相当厳しいと思うんですけれど、こういう問題があるということを認識し続けないと、変わらないんじゃないかと思って。

三浦
これって個人的にどうなんですか。女子で東大でっていうのを4年間、意識されてきました?

矢野
私はあまり意識したことがないんですけれど、周りから「女の子なのに東大なんだぁ」みたいなことを言われると、「はぁ」っていう。最初の「女の子なのに」は何なんだろうなぁって。

三浦
それは地元で?

矢野
地元(広島)ですね。あとは、親が言っていたんですけれど、「君の息子さん、東大行っているらしいね」って何回も言われたらしくて。「いや、息子じゃなくて娘なんです」って何回言っても、なかなか理解してもらえないっていうのは言っていたので、認識の違いというのはあるのかなぁとは思いましたね。

三浦
それは、「女子が一番いい大学に行く必要はない」っていうことに基づいているのかな?

矢野
根底には、東大に行く女子は相当少ないだろうという意識がきっとあるんじゃないですかね。わざわざ東京まで出てきて、東大に行かなくたって、地方の近い大学に行けばいいじゃないか、みたいなのはあると思います。

「東大女子=珍しい生き物」というイメージは不本意

三浦
世間の東大女子に対するイメージについてはどう思います?言いたいこととか、あります?

矢野
東大女子っていう珍しい生き物みたいな感じで捉えられているのが、私はすごく不本意なんですよね。

三浦
希少動物みたいな。チンチラみたいな(笑)。

矢野
東大女子っていうのが珍しさのウリになっているのが、そもそも、おかしいんじゃないかなぁって思っていて。

三浦
タレントさんも言っていますよね、「東大卒」みたいな。何年かに1回出てくるんですけれど。そこら辺は自分のプライドって、どういうところにあります? 東大に入ったのは、すごく自分が努力して入ったわけだから、実力が認められていいじゃないかっていうことだと思うんですけれど、「特別視しないでよ」というのもあるわけじゃないですか。ジャンルに入れないでみたいな。

矢野
東大生なら、別に東大生でいいじゃないか、女子ってわざわざ区切る必要があるのかなぁっていうのはすごく思いますね。

三浦
たしかに、そうですよね。

矢野
東大生っていうジャンルも、私は微妙だなぁって思うんですけど。

東大は男性偏重型だと感じる瞬間

三浦
(東大に対して)男性偏重型のイメージって感じます? 感じるとしたら、どんなイメージが男性偏重型のイメージですか?

矢野
すごく卑近な例になるんですけれど、食堂のメニューが男子向けだなぁって。量が多かったり、こんな脂っこいものを食べるのかっていうのはありますね。たぶん、あんまり意見を言う人がいないのかなぁ。男子がよければ、食堂には人が来ますから。

三浦
あとはトイレね。

矢野
そうですね。トイレの数、だいぶ増えてきたらしいんですけれど、ちょっと少ないかなぁって思いますね。

三浦
昔は、私がいた農学部は男子トイレを改造したものだったので、新しくなる前までは。完全に男子トイレを改造したっていう跡があったんですよね。なんだろうなぁ。トイレとか食事とかっていうのは、結構、馬鹿にできない分野で。
あとは、保育園に子どもを連れて行って、東大のキャンパス内にある保育園に一時期入れていたんですけれど、おむつを替えるシートってあるじゃないですか、カパってなる、トイレに付いているやつ。

三浦
あれは普通は、障害者用トイレとか多目的トイレに入ったら、必ず付いていますね、民間に行けば。東大だけないんです。
それって要は、障害者はいいんだけれども、それ以外の保育園児や乳飲み子を連れて働かなければいけない、あるいは勉学を続けなければいけない女子学生ないし研究者に対して、「NO」ということを明確に言っているわけですよね。
だから、思いつかなかったというよりも、積極的に排除しているという部分もありますよね。思いつかない部分がほとんどだろうけれど。

矢野
そうですね。

「住まい支援」の意味が受験生に伝わっていない

矢野
住まい支援について、アンケートで批判をする学生は多かったんですけれど、その中でも女子学生を増やすっていう東大の姿勢自体を批判する人はあまりいなくて、評価する回答者が多かったんですね。

矢野
ただ一方で、東大外からは「女子率をなんで上げなきゃいけないのか分からないよ」みたいな指摘があって、東大内では「今、少数派の女子が増えたら、多様性の拡大につながる」っていうことが理解されているんですけれど、肝心の今から東大に来る人たちには、あまり伝わっていないんじゃないかなという風に、この企画を通して、私は考えましたね。

三浦
問題意識の共有っていうのは東大をよくすることにもつながるけれども、社会に対しても東大は貢献していくことも大事なので、そこら辺のビジョンが2020(東京オリンピック)なんかとも関係しているんじゃないかと思います。


(執筆:FLAG7)