旧優生保護法のもと聴覚障害者も被害

旧優生保護法のもとで、障害者への不妊手術が強制された問題では、聴覚障害者も被害を受けている。

こちらの女性は25歳の時、月経が長引き病院に行ったところ、十分な説明がなく子宮を摘出され、子供を産み育てることが出来なくなった。

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82歳の女性:
(病院に行ってから)1~2年しても子供が出来ないのでおかしいなと思い母親に聞いたら赤ちゃんは出来ない体だと言われた

障害者に中絶・不妊手術を強制したのは「優生保護法」。1948年から1996年まで存在していた法律でその第1条には「不良な子孫の出生を防止する」と記され、都道府県が認めた場合は、本人の同意を得ないまま不妊手術を行うことが認められていた。

香川県聴覚障害者協会・太田裕之常務理事:
障害者そのものに対する偏見・差別があった時代なので障害者は社会の陰にいた

岡山県に残されていた県の審査会の資料では、29歳の女性に対し「手術が適当」と認めてる。国の衛生年報などから岡山県内では、全国で3番目に多い845人が、香川県内では180人が本人同意のないまま不妊手術を受けたとされている。

岡山優生保護法被害弁護団団長・田中将之弁護士:
誰しも子供を産む権利というのは本人もしくは夫婦で決めることだが、その権利を一方的に侵害し奪ってしまった

1月に岡山市で開かれた弁護士による相談会では聴覚障害者にも配慮し、電話以外にFAXやメールで約6時間受け付けたが、この日の相談は1件もなかった。
全日本ろうあ連盟によると、全国で去年12月までに、聴覚障害がある男女136人が断種や中絶・不妊手術を受けたことを告白。しかし、岡山県は0人、香川県は女性2人に留まっていて、被害を受けていても名乗り出ない人がいるという。

香川県聴覚障害者協会の太田裕之常務理事は「過去のことを知られたくない忘れたいという気持ちの人もいるのではないか」と話す。

25歳の時、子宮を摘出された高松市の女性は、生まれつき聴覚に障害がある。ろう学校や服飾の専門学校を経て、洋服の仕立ての仕事をしていた24歳の時に結婚。その1年後、長引く月経で病院を訪れたが、医師が尋ねたのは結婚の有無だった。すぐに妹や両親が呼ばれ、手術が決まったという。

ーー手術の時に手話通訳はありましたか?

高松市の82歳の女性:
その時は手話通訳はいませんでした。説明がわからないまま頷いているだけだった。自分の子供に可愛い服を縫ってあげて喜ぶ姿を見たかった

子供を持てなかった悔しさ

兵庫県明石市にも旧優生保護法によって子供を産み育てる権利を奪われた夫婦がいる。生まれながら聴覚に障害がある小林宝二さんと、3歳の時に病気で聴力を失った喜美子さん。

2人が出会ったのは今から59年前でお見合い結婚だった。

小林喜美子さん:
男前の顔に引かれました

小林宝二さん:
活動的で力強い女性であるところに引かれました

常に笑顔が絶えない2人。結婚後2カ月で妊娠が分かるが、その直後、医師と2人の母親が話し合い、喜美子さんは中絶・不妊手術を受けさせられた。

小林喜美子さん:
本当に怒りを感じています。子供が欲しいと思っていたのに妊娠することもできない。堕胎もさせられたということで悔しい思いでいっぱい。子供が欲しかった。かわいたがりたかったがいなくなって寂しかった

小林宝二さん:
母に何でこんなことをしたのかと詰め寄るとそんなに言うなら私を殺しなさいと言われた。何も言わずに中絶手術をしたのは許さない。悔しかった。私は一生懸命泣く妻をなだめた。この思いは口では表せません

障害がある自分たちが子供を作ることを許さなかった旧優生保護法。小林さん夫婦は2018年9月、聴覚障害者としては全国で初めて、旧優生保護法が憲法違反だとして国を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。

小林宝二さん:
健常者は子供を産んでいる人がたくさんいてうらやましい。なぜ聴覚障害者は子供を産んではいけなかったのか

小林喜美子さん:
国に謝罪してほしい

国会では、今年4月、救済法案が成立、施行された。障害を理由に虐げられた声なき声を…

障害を理由に虐げられた声なき声を、今こそ受け止めることが求められる。

(岡山放送)

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