“オフィス離れ”実態は?多くの企業は情勢注視

2020年はテレワークが一気に浸透し、スタートアップ企業を中心に“オフィス離れ”が広がったといわれるが、実際どうだったのか。
コロナ禍が始まって半年が経過した10~11月に森ビルが実施した「東京23区オフィスニーズに関する調査」(12月23日発表)によると、
本社オフィスの変更について
「既に変更を決定している」企業は11%、「方針検討中」は14%。
一方、「特段検討しない」とする企業は53%と過半数を占めた。
本社オフィスの変更を決定した企業はまだ一部で、多くの企業は情勢を注視している段階にあるようだ。

森ビル説明会
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また、新規賃借予定のある企業の割合も24%と、ほぼ例年と変わらない水準となった。
ただ、このうち面積の「縮小予定」が42%で、「拡大予定」の33%を上回る結果となった。
例年と比べて「縮小予定」の割合が増加しており、一部ではオフィス縮小の動きがあることも明らかとなった。

森ビル説明会

空室率9カ月連続上昇も“適正水準”

オフィス縮小の一部の動きは、空室率の数字にも表れている。
オフィス仲介大手の三鬼商事によると、11月時点の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、前月から0.40ポイント上昇した4.33%となった。
上昇は9カ月連続で、4%台は2016年6月以来。
既存ビルでオフィスの縮小・移転などに伴う解約の動きがみられたことなどが背景にあるという。

ただ、不動産業界では一般に「適正な空室率は5%」と言われている。
つまり、空室率が5%以上になると借り手が優位な状態となり賃料は下がりやすく、5%未満だと貸し手が優位となり賃料は上がりやすい。
これまで非常にタイトだった状況もあり、上昇が続く現在のオフィス空室率は悲観するものではなく、むしろ適正に近づいている状況とも言えるようだ。

「グリーンビル認証」取得機運高まる

オフィスに求められるものが変わる中、不動産業界ではESG(環境・社会・企業統治)の取り組みの一つとして「グリーンビル認証」を取得する機運が高まっている。
グリーンビルとは、エネルギーや水などの使用量を削減し、環境負荷をできるだけ減らした環境にやさしい建物のこと。
デベロッパーは、その認証となる「グリーンビル認証」を取得することで、環境や社会への先進的な取り組みをアピールできる。
さらには、グリーンビルへの入居を希望するテナントが増えていることから、そのニーズに応えられるというメリットもある。

グリーンビルであるかどうかの認証は、客観的な評価で判断される必要がある。
複数ある認証の中でも、日本政策投資銀行(DBJ)が運営する「DBJグリーンビルディング認証」が、環境に加え社会的意義も評価する観点から注目され、取得棟数が急増している。

住友不動産では、12月21日、「DBJグリーンビルディング認証」で都内の認証取得オフィスビルが26棟、約77万坪となり、オフィスビル分野において最多延床面積となったと発表。
半世紀ぶりに大改修を行った、「三角ビル」の愛称で知られる西新宿の「新宿住友ビル」も5段階評価のうち4つ星を取得した。

改修後の新宿住友ビル

一般財団法人日本不動産研究所の調査によると、4つ星以上の物件は、そうでない物件に比べて賃料が高い傾向にあるという。
不動産価値としても高いことが明らかになっている。

改修後の新宿住友ビル

テレワークの導入が進み、働き方や働く場所が見直され、オフィスのあり方も大きく変わった2020年。
オフィスに行かなくてもできる仕事と、オフィスに行かなければ成し得ないものがより明確になった年だったとも言える。
リアルなコミュニケーションによって新しいアイデアを生み出す場として、オフィスはより価値を高めつつ、発展を遂げることが求められている。
コロナ禍収束後のオフィスのあり方にどのような変革が生じるかも、2021年は注目だ。

(フジテレビ経済部 土門健太郎記者)