三浦瑠麗が、新潮新書『国家の矛盾』の対談相手、自民党の高村正彦副総裁と再対談。
安保法制、トランプ政権で変わる安全保障、対北朝鮮政策、日本の政治など幅広いテーマで意見を交わした。

政府には最高裁の判断を覆すだけの権力はない

三浦:(新潮新書『国家の矛盾』の)最後に書いていただいたんですけど、やっぱり学者っていうのは本音を言えるし、自分が正しいと思う理論であれば、政府が採用している公式の見解でなくても自由に言えると。しかし、政治家の仕事というのは違うわけですよね?

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高村:実務家(政治家)は、たとえば憲法論にして言えば、そこに最高裁判決があれば、それに従ってやるんですよ。それに対して学者は学問の自由があるから、最高裁判決がどうであろうといいわけですよ。だけど我々(政治家)は100の学説よりも1つの最高裁判決ということで、最高裁判決の法理に従ってやるのが立憲主義でしょうね。

三浦:つまり、憲法は様々な人が解釈するけれども、最高裁がとっている判断を覆すだけの権力は政府にはないはずだっていうことですよね?

高村:そうですね。少なくとも、立憲体制のなかで解釈権はどこにあるかっていったら違憲立法審査権がある最高裁にある。内閣法制局でもないし、高名な憲法学者でもない。

「安保ただ乗り論」はアメリカ庶民の底流にずっとあった

三浦:戦争は巻き込まれるものだから、自分たちが何もしなければ巻き込まれないんだという考え方が日本人には強かったんですけれども、最近、私が感じるのが見捨てられるんじゃないかという懸念です。
ドナルド・トランプさんの発言で見捨てられるんじゃないかという恐怖が日本国民に多少なりとも浸透したと思われますか?

高村:少しは分かってきたんじゃないでしょうか。私は80年代、あるいは90年代初頭ぐらいの「安保ただ乗り論」をよく覚えているわけですよ。それは日本の経済が少し弱くなったこともあって、あまり「安保ただ乗り論」というものを声高に言わなくなったんだけれども、アメリカの庶民の底流にはずっとあったんですよね。
だけど、それをマスコミに出るようないろんな事件がないものだから、あまり言われていなかった。ずっとあったから、その層に対してトランプさんが選挙戦術として、「我々は日本を守るけれども日本は我々を守らない、不公平だ。どうしても守ってほしいって言うなら守ってやってもいいけれども、それなら駐留経費全部出せ」と、こういうようなことを言うわけですよね。

あれ、選挙のための発言ですからね。それ自体、それほど神経質になる必要はないけれども、我々が注目しないといけないのは、そういうことがウケる潮流がアメリカ社会の中にずっとあるということはしっかり覚えておかないといけないと思うんですよね。

北朝鮮にミサイル開発をやめさせるには米中協力が必要

三浦:北朝鮮に対して拉致問題で強く言う、抗議する、問題解決するために圧力も辞さない、軍事的には抑止も頑張る。だけれども基本的に北朝鮮が拉致問題を解決したり、核・ミサイル問題でちゃんと対話に応じたあかつきには国交正常化に応じたり、経済協力をしたり、国家間での経済協力というかたちで相当なお金が渡ることになると。
対話と圧力ではなくて、もう少し上のレベルである「国交正常化および経済協力」と「核共有」。非核3原則の一部である「持ち込ませず」を否定してですね、我々は米軍と核を共有する、したがって抑止力は自分たちでコントロールできるようになるという風なものを抱き合わせにしてやるべきだと申し上げているわけですね。

高村:三浦さんは、北朝鮮は確固たる意志で、核大国、ミサイル大国になると言っているんだから、これ(核・ミサイル開発)をやめさせることは不可能だという意見です。私はひじょうに困難だけれども、不可能だとは思っていないんですよ。
それはだけど、日本の力では不可能、日本が何やったからといって不可能。これを何とかできるのは中国とアメリカしかいないんです。アメリカがやるっていうのは叩くってことですよ。中国は本当に叩く決意をしたら石油を止めるかもしれない。
北朝鮮にそれ(核・ミサイル開発)をやめさせるためには、アメリカと中国が組む。それに対して日本が積極的にするぐらいのことを考えていかないとね。日本だけでちまちま制裁やったって、やめませんよ。

優秀な人が理想を遂げるのに一番いい場所が政治

高村:若者って理想があるじゃないですか。優秀な人が理想を遂げるのに一番いい場所は政治の場所なんだよっていうことですよ。政治っていうのは理想を遂げるのに一番いい場所の一つなんだと。
斎藤隆夫さんという方が、戦争反対とやって議員を除名されたこともある方なんですけれども、この方が言っているのは国民に信頼されて、政治がやれて、国民のために尽くすことができる、そのありがたさを思えと。こういうこと、必要ですよね。そういう気持ちになれば、政治というのはいい職業ですよ。