上野千鶴子の「平等に貧しくなろう」発言とは?

・人口が減り、衰退していく日本の今後について、社会学者の上野千鶴子さんの2月11日付の新聞記事が物議を醸している。
・この記事は「平等に貧しくなろう」と題された上野さんのインタビュー。
・日本は、人口増が望めず、転機を迎えていて、安倍総理は「人口1億人規模の維持」などを目標にしているが、上野さんは「泣いてもわめいても子どもは増えません」としている。
・さらに人口を増やすためには移民を受け入れるしかないが、「世界的な排外主義の波にぶつかった」ことや、「日本人は共生に耐えられない」から無理だとしている。
・そのうえで「だとしたら、日本は人口減少と衰退を引き受けるべき」で、「日本の場合、みんな平等に、緩やかに貧しくなっていけばいい。国民負担率を増やし、再分配機能を強化する。つまり社会民主主義的な方向です」と主張した。
・この上野さんの記事に対し、ネットでは反論が相次ぎ、ライターの中川淳一郎さんは「なんで全員揃って貧しくならなくちゃいけねぇんだよ。努力や工夫をして豊かになってもいいだろ」とTwitterに投稿した。

古市憲寿の視点「今さら物議を醸さなくても…」

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記事読んでみると、昔から上野さんが言っていることだから、そんな今さら別に物議醸さなくてもいいのかなぁっていう気は、僕はしたんですけど。
ネットでは主に2点が話題になっていて、1点目は移民に対する意見ですね。
日本は多文化主義に耐えられないだろうという移民受け入れの是非に対する議論がひとつと、あとは「平等に貧しくなろう」っていう言葉に対して、いろんな反感がきているみたいなんですね。
でもね、インタビュー記事で見出しだから、どこまでが上野さんの言葉でどこまでが記事としてまとめるなかでこうなったのかは分からないですけど、ただまぁ上野さんが昔から言ってることだから、今さらとくにこれで騒がなくてもいいのになぁっていうことは思いますよね。

「移民」に関する発言は左から「平等に貧しくなろう」は右から叩かれた

ライター 中川淳一郎さん

Twitterの反応とかを見て思ったことがまずあって、上野さんの書いていることってすごい客観的な話なのに、上野さんがあたかも移民受け入れ大反対派で人種差別をしているかのように捉えた人が多すぎたなぁって思ったんですよ。
世界を見渡すとこういう側面があるっていうことを上野さんは俯瞰して見て、書いてらっしゃったと思うんですね。
そこまでちゃんと読み取れるんですけど、たぶん今、上野千鶴子というリベラルの親玉までこんなことを言い出したから、「日本の排外主義はここまで進んだ、許せない」という勢力がキレたわけですね、今回。
「リベラルが移民反対をしているのはけしからん」と、上野さんを左翼のラスボスみたいに思っている人が怒ったっていう。
(「平等に貧しくなろう」という発言に関しては)右派とかは、上野さんのことを「お前はもう逃げ切れる金持ちだろう」っていう感覚を持ったんだろうと思うんですね。
だから両派から叩かれちゃった。

「人口減=衰退」はおかしい

この狭い国土で、今1億3000万人近くいるわけですけど、7000万人でもいいじゃないかって思うんですよ。
ロシアだってあんなにデカくても1億5000万人しか人はいないわけだし。
そう考えると、上野さんが衰退を受け入れろって言っていることについては「人口減=衰退」と考えないでいいと思うんですよ。
小さい国だって物価高いけど国民は金持ちなわけですよ。
人口が1億を割ったところで貧乏になるっていう断言はおかしいと思ったんですね。

「月2回勤務で年収1000万円」のお金を福祉に回せばいい

反骨心を持って「うるせえ、俺は稼いでやる」「いっぱい納税してやる」っていう気骨を持って若者が頑張ればいいって思ったのが、僕の上野さんに対する反論だったんですよ。
1か月に2日働くだけで1000万円もらえるような変なおじさんいましたけど、ああいう奴らに回す金を別の福祉とかに回せばいいんじゃないのって思いますね。

人口が減っても国民は貧しくならない

政策研究大学院大学名誉教授 松谷明彦さん

人口がどうやっても減る、どうやっても高齢化する、この辺りは間違いないんですけどね。
それで貧しくなるかって言うと、貧しくならないんですよね。
国が、国民が貧しいか豊かかって言うときに一般的に使われている指標が「一人当たり国民所得(=percapita)」と言われるものですね。
この一人当たり国民所得は、これから人口が減り、高齢化すると、一番悲観的な前提条件で計算してもマイナスにはならないんですよ。
経済学者の中では私が一番シビアに見ている方ですが、それでもマイナスにはならないんですよね。
人口減少で日本が貧しくなる、だからみんなで貧しくという、その最初の貧しくなるというところがやっぱり間違っているなと思います。

貧しくならないのは一人当たりの生産性が上がっているから

高齢者が増えるとですね、人口に占める働く人の割合が減りますよね。
そうすると働かない人も含めて一人当たり国民所得というのはマイナス方向に動くわけですよね。働く人の割合が減りますからね。
しかし、働いている人の一人当たりの生産性と言いましてね、1年間の間にどれぐらいのものを生産することができるかというのは技術進歩がありまして、生産性というのは上がっているわけですよ。
そうすると、生産性の向上のスピードと国民の中の働いている人の低下のスピードがほぼ拮抗していて、そう豊かにはならないかもしれないですけど貧しくはなりませんね、ということなんです。
少なくとも「貧しくはならない」ということなんです。

豊かな国であり続けるためには相当な努力が必要

日本が豊かな国であり続けるためには相当な努力が必要ですね。
戦後の日本は欧米で開発された製品を上手に真似してっていう楽なビジネスモデルしかやってこなかったわけですよね。
自分で開発するってことになると、相当なリスクもあるし、いつもうまくいくわけじゃないし。
相当なお金も労力も必要ですよね。
かなり思い切って、これからは日本自身が頑張ってやっていくんだと、相当頑張れば、日本は引き続き豊かな国であり続けると思いますけどね。
ただ、今のような状況だと、将来は暗いかなという感じですね。

古市憲寿のまとめ「日本にはまだまだできることがある」

人口のある程度減少しているとはいえ、少しでも出生率を上げながら、若者は子どもの数を増やしながら、生産性を上げていくっていう。
真っ当なことをしていくだけで、日本にはまだまだチャンスはあると思うんですね。
そもそも女性が働いている割合が少ないから、労働力の減少は女性とか高齢者で補える部分も多いでしょうし、まだまだやるべきことはたくさんあると思うんですね。
世界を見渡してみて、どこの国も大変ななかで、別に日本だけが大変なわけじゃない。
比べてみたら日本って、ましな要素が多いと思うんですね。
そう考えると、まだまだできることはあるのかなぁっていう気はします。