ピンク一色!こんな野球の試合 見たことない

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カープ女子に代表されるように、近年のプロ野球人気を支えているのは女性といってもよく、各球団がレディースデーなどで独自性を競っている。

そんななか有料ファンクラブの女性会員数が47%を占める ソフトバンクのスタジアムが女性で埋め尽くされると聞き、本拠地福岡 ヤフオク!ドームに足を運んだ。

午後1時試合開始だというのに3時間以上前からスタジアム内外の熱気がすごい。関係者に聞くと、女性ファンは男性に比べ出足が早いという。着替えやトイレなど準備に余念がないことに加え、イベントそのものをゆっくり楽しみたいという理由があるからだそうだ。

球場内へ足を踏み入れるとここが野球のスタジアムかと思うほど飲食売り場やグッズ売り場には家族連れ、女性同士の行列が。 
そしてスタジアムはを見れば ピンク一色。正直、こんな野球の試合見たことない、というのが正直な感想。まさにアイドルのコンサートに行ったような錯覚に陥った。

女性にやさしい「タカガールデー」

このイベントは5月11日から2日間、ヤフオクドームで行われた「タカガールデー」。女性入場者はこの日のために特別にデザインされたピンクのユニフォームや応援フラッグを無料でもらうことができる。そしてスタジアム内はとにかく「女性にやさしい」ことが目立つ。

スポーツ観戦で一番気になるトイレだが、今年から女性トイレを大増設し、さらに このイベントにあわせて、男子トイレの一部を「女性専用」するなどして対応した。それでもまだイニングの間には長い行列ができていたのはご愛敬。それでもファンの間からは「今年から格段に数が増えた。キレイになった」と概ね好評。

しかし「小さい子どもを置くスペースが少ないし、そのために長い列を並ぶのは…」とさらなる改善点を求める意見も少なからずあったことを付け加えておく。

ピンクリボン啓発運動ともリンク

乳がん啓蒙イベントに参加する選手 ユニフォームの肩にはピンクリボン
乳がん啓蒙イベントに参加する選手 ユニフォームの肩にはピンクリボン

タカガールデーはピンクリボン啓発運動とリンクし、来場者が無料でがん検診(マンモグラフィ)を受けられるコーナーが設けられた。2日間で400人の女性が検診をうけ、また選手たちが直接乳がん検診の大切さを訴える関連イベントも行われた。

選手たちが着るユニフォームもこの日だけの特別なもの。 今年選手たちは球界初となるピンクリボン運動をモチーフにしたユニフォームに袖を通しゲームに臨んだ。

「発信力が強い女性にふらっと来てほしい」

女性の希望者全員が試合終了後にグラウンドに降りて、キャッチボールができたり、バッターボックス&マウンドにあがったり・・・
芝の上に寝転んで自撮りするファンの姿にはちょっとびっくり。野球のスタジアムでこういう楽しみ方があると逆に教えられた気がする。

選手と同じ目線での体験はレアもので、ここで撮影された写真がSNSでアップされ、拡散されることを考えると、このサービスが新たなファン開拓や「次回も行ってみたい」という モチベーションになっていることは間違いない。

「いまや野球界に女性ファンの存在は不可欠である」ということはもはや常識。
福岡ソフトバンクホークス広報企画課の山下紗也さんは「消費生活において女性がとても重要であるとともにインスタグラムなどのSNSの発信力が強い」と女性ファン獲得の意味をこう語る。 

さらに、「友人から誘われたり、女性イベントがあるよって なんとなく来てもらって、女子会チックに楽しんでもらえればそれでいいんです。今後は野球にあまり興味がない女性、ふらっと来るようなライト層の女性を取り込んでいければよいと考えています」と野球ファン以外の広がりを重要視する。

実はこの「タカガールデー」は2014年から毎年行われている。 ホークスファンのファンのあいだではもはや定番となっているイベントだが今年はさらにパワーアップ。11日、12日と行われた「タカガールデー」は2日連続満員札止めとなり、両日とも3万人以上の女性が来場した。

特に土曜日の女性来場者は3万950人とヤフオクドームの過去最高を記録、観客動員4 万178人のうち4分の3 以上にあたる77%の来場者が女性という結果となった。

「スマートスタジアム」でのサービス競争へ

ラッキー7のホークスの攻撃時、ピンクの風船が一斉にドームに舞う
ラッキー7のホークスの攻撃時、ピンクの風船が一斉にドームに舞う

『プロ野球のサービスに関する調査』 によると「ファンサービスの充実度」「ファンと選手の交流」などの項目で12球団中ソフトバンクがトップとなっているのもうなずける。
(2019年1月下旬実施  慶応大学理工学部 鈴木秀男教授調べ)
今年は東京で初の「タカガールデー」を行うなど今後は全国展開を図りたい考えだ。

プロ野球では東北楽天のホームスタジアム「楽天生命パーク宮城」で、物販などの 決済 を原則全てキャッシュレス する「スマートスタジアム構想」が今季から始まっている。スマホアプリを使って座席にいながら飲食を注文し、売店で優先的に受け取ったり座席まで運んでもらうサービスはアメリカですでに始まっている。

スポーツ観戦も令和新時代に突入しており、 今後はこうした情報通信技術を駆使した「スマートスタジアム」におけるサービス面での”競争”も激化していくことになる。  

【執筆:フジテレビ 報道スポーツ部長 坂本隆之】

坂本 隆之
坂本 隆之

1990年入社後、カメラマン・政治部・社会部・スポーツ部・番組プロデューサー・クアラルンプール、ベルリン、イスタンブールの支局勤務を経て現在はマルチメディアニュース制作部長。バルセロナ・長野・シドニー・リオ五輪やフランス、ドイツW杯の取材経験あり。