健康な男女が「1年間妊娠しない」と不妊

日本において不妊症の割合は増加しており、現在は6組に1組が不妊であるともいわれています。

では、どういう状態を不妊と言うのでしょうか。

日本産科婦人科学会では、「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、1年間妊娠しないもの」と定義しています。

実は、以前は「2年間妊娠しないもの」だったのですが、2015年に「1年間」に変更されました。

日本産婦人科学会は「妊娠する年齢が上昇する中、定義の変更により、女性がより早期に適切な不妊治療を受けることにつながると期待(する)としています。不妊治療を受けるなら出来るだけ早めに、と言うメッセージでもある訳ですね。

「男性に原因あり」が全体の48%

不妊症の3大原因と言われるのは、女性の排卵障害(排卵されない等)、卵管障害(卵管の閉塞・癒着等)に、男性の造精機能障害(精子が少ない、精子がない、運動率が低い等)です。

ただ、不妊症の原因には多くの要因が関わっていたり、検査をしても原因が見つからない原因不明のものもあります。

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不妊の原因は女性に求められがちですが、男女別で見てみますと、「男性だけに原因がある」が24%、「男女共に原因がある」が24%。つまり、「男性に原因がある」とされるのは併せて48%あります。

35歳を越えての結婚は「生涯不妊率」が30%超

女性の場合、加齢とともに妊娠の確率は下がっていきます。ですから、晩婚化も不妊が増えている大きな要因の1つです。

厚労省の人口動態調査によると、2015年の平均初婚年齢は、男性31.1歳、女性29.4歳。

それに伴って、初産の平均年齢も6年前に30歳を越え、2015年には30.7歳になっています。

でも、「その程度なら妊娠・出産に十分間に合うのでは?」と感じるかもしれません。しかし、こんなデータがあります。

女性の結婚年齢が30歳を過ぎると、一生涯にわたって妊娠しない率「生涯不妊率」が10%を越え、35歳以降になると30%を越えています。

卵細胞の“年齢”と本人の年齢は同じ

妊娠するためには、まず男性の精子と女性の卵子が受精することが必要です。

男性の場合、いくつになっても生涯を通じて、精子は作られ続けます。常にフレッシュな精子が生成される訳です。

一方、女性は生まれたときに卵巣内にすべての卵子の元がすでに存在し、生まれて以降に新たに作られることはありません。

つまり、卵細胞は本人と一緒に年齢を重ねていきます。卵子の“年齢”は、女性自身の年齢と同じになります。

“35歳以上”の卵細胞では当然、染色体異常率が上昇します。よって、妊娠・出産に至らないリスクが高くなります。

生まれて以降、卵細胞の数は減り続ける

女性が生まれる前の卵巣には既に、約200万個の卵子の元が全て備わっています。
それが、月経が始まる思春期頃までに約180万個が自然消滅し、約20万個にまで減ってしまいます。

月経がはじまってからは、1回の周期に約1000個、1日に換算すると30~40個も減り続けると言われています。

30代半ば以降はそれに拍車がかかり、37歳で約2万5000個にまで減ります。

残存の卵子数「予測」が示す、不妊治療継続の“残り時間”

近年、卵細胞の残存数の目安を調べるAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査という検査が取り入れられています。

AMHとは、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、AMHの値と原始卵胞の数は比例すると考えられています。つまり卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを反映すると考えられています。

当然ですが、AMHは“妊娠出来る率”を表すのではありません。あくまでもAMHの値を元にした卵子の数の「予測」です。

卵子の数が少ないということは妊娠率が低くなるということではなく、不妊治療が継続可能な残された時間が限られてくる、ということを示すのであって、AMHが低いからほとんど妊娠できないということではありません。

AMHは血液検査で簡単に調べられますが、保険適用外のため5000円~10000円程度かかります。ほかに診察料も必要になります。

将来の出産のための「卵子の凍結保存」という選択肢

将来的には産みたいけど今は仕事を頑張りたい、あるいは まだパートナーがいない等々、状況的に出産が難しいというケースも多いと思います。

近年、パートナーがいない女性が、将来の妊娠に備えて自分の卵子を凍結保存する事例が増えています。

卵巣から卵子を採取し、薬剤に浸して水分を抜いて安定させてからマイナス196度の液体窒素によって凍結します。

そして妊娠を希望する時期に解凍して、体外受精を行い、子宮に戻されます。費用については、自費診療のためクリニックによって違いはありますが、卵子5個の採卵・凍結までの費用が30~50万円程度。凍結した卵子の保管費が1個につき年間2万円程度、5個であれば年間10万円程度。

解凍して、妊娠・出産に向けた治療再開時には、解凍や体外授精、受精卵の移植の費用が新たに必要になります。

卵子凍結しても母体の時間は止まらない

凍結融解した卵子を体外受精させ、子宮に移植した場合の1回当たり生産率(出産に至った割合)は平均10%程度と見られています。

卵子だけでなく、子宮や血管への加齢による影響も、妊娠・出産率に関わるためです。

体外受精での出産率を見ても、36歳で16.8%、40歳で8.1%、42歳で5%、45歳だと1%以下と年齢によって低下していきます。

日本生殖医学会は、「卵子の採取は40歳未満まで、受精卵の移植は45歳未満まで」等とする未婚女性が卵子を凍結保存する上でのガイドラインを、2013年にまとめました。

不妊治療に取り組んでいる女性には「妊娠や不妊についての知識をきちんと知っていたら、もっと早くから行動出来たのに」と感じる方も多いそうです。

まずは正しい知識を持つもつこと。

そして不妊治療に取り組む場合は、パートナーと共に早めに始めることが肝要です。


(執筆:Watanabe Chiharu)