東大生グループがプレゼンを終えると、会場は総立ちで惜しみない拍手を送った―。

3月に行われたサウスバイ・サウス・ウエスト(SXSW)インタラクティブ・イノベーション・アワード学生部門での一コマだ。

このように、世界に飛び出して存在感を示す日本人はどんどん増えている。一方で、「日本人は良い研究・ビジネス開発をしているのに、コミュニケーション下手で世界から認められない」という指摘は依然として多い。

「日本人のコミュニケーション」は何が問題で、どうあるべきか。日米のコミュニケーションの違いに詳しいお笑いタレント・パックンに話を聞いた。

ビジネスマンの能力はプレゼン力

――英語力ではない「日本人のコミュニケーションの物足りなさ」をビジネスの場面で感じることはありますか?

ありますね。ビジネスマンの能力はプレゼンの力を見ればわかると思うんです。

日本のプレゼンとアメリカのプレゼンはやり方が全然違って、おそらく成績にも反映するし、影響があると思うんです。

スティーブ・ジョブズはたまたまプレゼン力があったんじゃなく、見せる力があってこそ、あそこまでのぼりつめた男なんですよ。Facebookのマーク・ザッカーバーグとは違って、彼はべつにプログラミングができる人ではないんです。他の人に訴える力があってリーダーとしてトップを取ったんですね。

日本のビジネスマンが、いくら英語が上手でも、結局、“日本風のプレゼン”をしてしまったら相手に響かないなと思うんです。

マニュアル通りのプレゼンではダメ

――先日、私もメディアの集まりに参加する機会があったのですが、プレゼンが苦手な人が多いなと感じました。
パワーポイントを使いながら、「我々はこういう戦略を練っております。こちらをご覧ください。我々はこうしたアイデアを活かせば、今後のビジネスに与える影響も大きいのではないかと考えています」みたいなことを棒読みする。あれだけ記事を書くのが上手な人たちなのに、「どこでそんな日本語を覚えたのだろう?」と思うほどでした。

子供のころからそういう風に「プレゼンはこういうもの」だと教わっているというのが原因だと思います。挨拶をみるとわかります。日本の挨拶は何を言うか決まっているじゃないですか。マニュアル通りのコミュニケーションを子供のころからさせられているんですよ。

人前の話は大体決まり文句になります。運動会では「宣誓、スポーツマンシップにのっとって」とか言って。普段から「のっとって」なんて言うことないのに、そういう時には言う。

「発表します。私が読んだ本は〇〇でした。登場人物は〇〇。ストーリーは〇〇。私が感じたのは〇〇です。以上、私の発表でした」。それが学校でAを取る。というか、それじゃないとAを取れない。

こういうマニュアルを打ち込まれている方は、社会人になって記事が上手くてもプレゼンはああいうものだと思ってしまうのです。

あちこちで挨拶をするお偉いさんでも、結婚式では「ただいま紹介に預かりました〇〇です。これから乾杯の音頭を取らせていただきます」と言う。「乾杯の音頭をよろしくお願いします」って言われているのになんでもう一回言うのか。

他にも「以上、ご挨拶とさせていただきます」とか…。こういうのを思い出すだけでイライラします。僕らも集まって時間をかけて聞いているのに、喜ばせようとしないで業務連絡だけで済まそうっていうのが日本のマニュアル通りのプレゼンです。それだけだったら、どっかウィキペディアのページ読んだ方が早い気がするよね。

「付加価値はいらない」っていう考え方を見直したいんです。コミュニケーションは付加価値があってのコミュニケーション。情報も大事なんだけど、さらにその上に相手に「なんで頑張るのか、なんで協力するのか、なんで覚えなきゃいけないのか、なんで私にお金を貸すのか、なんで信用してくれるのか」とか、感じ方や考え方も伝えてほしいなと思っています。

プレゼンで冒険できる環境づくりを

――「定型文の方がいい」というタイプの先生は多いですよね。

僕の子供が「プレゼンをすることになった」と言うんですね。「新しいドラえもんの道具を考えよう」みたいな課題でした。

プレゼンと言うと、大体みんなは「私が考えたのは〇〇です。これがあったら〇〇ができるからいいなと思います。以上です」で終わる。これがA。

僕は「よし、プレゼンするときは質問から入ろうか」と提案したんです。

うちの子が考えていたのは「切り離せる影」。自分の影を切り離して代わりに何か仕事してもらえるみたいな道具です。

「例えば、どういうときに便利?」って子供に聞いたら、「サッカーの練習があるのに友達の誕生会もある日とか」と答えた。「そうだそうだ。それをみんなに問いかけてみようか」って。

「みんな部活と誕生会が重なったことない?塾とディズニーランドに行く日が同じになったことない?そんなとき、こんなものがあったら良いと思わないかい?」

そうすると、みんな他人事ではなく自分の人生で同じようなことがあるなと身近に感じるんです。

そしてプレゼンの日、学校から帰ってきて「どうだった?」って聞いたら「あぁ、上手くいったよ」って言うんです。でも、「問いかけから入った?」って聞いたら「いや、誰もやっていないから僕も普通にやった」って言うんですね。

まあ、そうだよね。先生が冒険できる環境を作っていないから。

例えば、先生が5つのプレゼンのパターンを教えるとかしたらいいと思うんです。問いかけから入るとか、物語から入るとか、まず動物に例えるとか。5つのパターンを先に伝えといて、何をするのか自分で考えてみる。

そのプレゼンの幅を見せていないから、みんなと同じパターンでやりたくなるよね。

――みんなと同じことやらないと「あいつ、なんなの?」と冷ややかな目で見られるという恐怖が子供にはありますよね。

特に日本の場合は、休憩時間に「お前なにあれ?テレビショッピングのつもりか?」ってなるかもしれない。怖いなぁ。

日本の大人から世界を変えたい

――なかなか教育が変わらないとして、大人になってからもプレゼンの手法は変えられるものですか?

当然ですよ。日本の大人から世界を変えようとしているんです。そのために本も書いています。

話を聞いてもらえないのはなぜなのか?それはあなたの伝え方が悪い。でも、大人は子供より覚えるのが早いんです。

僕は22歳から日本語を覚えて、2年間で能力検定試験1級を取った。これは絶対2歳児が取れないものですよ。大人はその仕組みをわかっている。方程式がわかれば頑張れる力、学習できる力がある。その力は子供より大きいですよ。

みんな逆だと思っていますけど、そんなことない。頭がいい分だけ、いろんな知識とか情報とか自己分析できている分だけ、はるかに子供より早いです。

子どもは脳が柔らかいのは間違いないし、もっと自然に身につくかもしれない。ただ、時間がかかる。子供は小・中・高を合わせると社会人になるまで12年も教育を受けているんです。誰でも12年かければ100%上手くなる。でも大人は12年なんて、かからないですよ。半年でも3ヵ月でも全然違ってきます。

特集を通して、日本人のコミュニケーションの現状や改善するための方法などを全5回で探る。