漁獲量が年々減少

刺身に塩焼き、竜田揚げ、日本の秋の味覚を代表するサンマ。

今年は漁の解禁が早まるなど、一足早く初夏でもそのおいしさが楽しまれているが、サンマはいま危機的状況にある。

日本のサンマの漁獲量は減少傾向で、不漁続きとなっているのだ。

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駒八 目黒さんまセンター 小野澤雅丈料理長:
これから旬に向けてサンマがおいしくなってくるから、入る量が少なくなるのは、うちとして困りますね。

利用客:
(サンマが高騰すると)残念だよね。いつも庶民の食べ物として食べているからね。

東京都内のスーパーで7月16日にサンマを販売していたのは、30軒中で10軒。1匹あたりの値段は平均約160円で、昨年の冷凍ものだという。

街の人からは、次のような声が聞かれた。

女性A:
(サンマは)好きで食べます。獲れなくなっているっていうのは、価格で感じています。

子供:
なくなると学校でも出なくなっちゃう。だから寂しい。

女性B:
去年とかも1匹400円だったんで、諦めちゃいました。うちは6人家族なので、今年も食卓に出る頻度が減ると思います。

では、なぜ不漁が続いているのか?

「海水温の上昇」と「海外需要の高まり」

東京海洋大学 勝川俊雄准教授:
最近、日本周辺の水温が高いので、サンマが日本のそばを通らずに(日本の水域の)外側を通って卵を産みに(南に)行ってしまう年が増えています。

専門家によると、 温暖化の影響による海水温の上昇で、サンマの回遊ルートが変化しているというのだ。
気象庁による北西太平洋の月平均海面水温のデータを見ると、1990年7月に比べて2018年7月では高い水温の範囲が広がっていることがわかる。

そして、もうひとつの理由は、海外でのサンマ漁が盛んになったこと。

2015年9月に取材した台湾のサンマ漁船は、一度に2500トンものサンマを凍らせて運ぶことが可能で、船内には冷凍されたサンマが箱にびっしりと詰められているという。

台湾では近年、家庭で焼いたりバーガーに挟んだりと、サンマ料理などが大人気。
また、獲ったサンマは、ベトナムや韓国などにも輸出しているという。

しかし、なぜ海外でサンマ漁が盛んになったのだろうか?

そもそもサンマは回遊魚で、秋ごろに近づく日本では、排他的経済水域内の近海で漁をする。

一方、台湾などは、サンマが日本に来る前の夏ごろに、自由に漁ができる公海でサンマを獲る。

つまり、海外の船が先取りするかたちになるのだ。

近年、台湾は漁獲量で1位だった日本を抜いた。中国も台頭している。

公海での“先取り”に待った 国際的合意へのハードルは?

7月10日、北海道の釧路港で初水揚げされたサンマは48キロと昨年の1割にも満たず、過去10年で最低水準だ。

漁業者:
去年より小さいよ。去年よりも全然ダメ。

近年、サンマ漁は「燃料代にもならない」と漁業関係者がこぼすほどの不漁続きで、サンマ漁をする船自体も減っているという。

それでも、近海で取れて新鮮な釧路の初サンマには、1匹2980円(税抜き)の値が付いた。

買い物客:
おいしそうだけど手が出ない。

こうした状況を打破するため、 日本は、7月16日から始まった北太平洋の水産資源についての国際会議「北太平洋漁業委員会年次会合」で、サンマの漁獲量に上限を設けることを提案し、資源量を回復させたい考えだ。

北太平洋漁業委員会年次会合(7月16日午前9時ごろ)
北太平洋漁業委員会年次会合(7月16日午前9時ごろ)

東京海洋大学 勝川俊雄准教授:
サンマが減っていく中で、漁獲枠を設定したいというのは各国共通。アジアの国ばかりでなく、EUなども注目してる数少ない資源でもあります。
新規参入がどんどん自由にできないようにしつつ、かつ日本の取り分は確保するというのは、なかなか難しい交渉が続くと思います。

公海での漁の制限を実現するには、台湾や中国など、8つの国と地域の全会一致が原則必要となる。
会合では、 2度に渡って反対姿勢をみせている中国にも注目が集まり、サンマ資源が世界的に減っていることから、国際合意が得られるかどうかが焦点となっている。

また、気になる今年のサンマの価格の傾向は、7月下旬に発表される「サンマ長期漁海況予報」次第だが、専門家はここ数年と大きな違いはないと予測している。

(「めざましテレビ」7月17日放送分より)