アメリカ大統領選の正当性

今週、サウジアラビアなど初の外遊中のトランプ大統領。外遊に行っている場合なのか?との批判もあるが、「ワシントンを留守にすると事態が沈静化するのではないか」という見方もある。壁に耳あり障子に目ありのホワイトハウスから離れれば、「トランプ大統領がこんなことを言った!」とリークされる心配もなくなるのだ。
窮余の策と見えなくもない『特別検察官任命』とあわせ、事態のクールダウンに繋がるという計算もあったのではないか?

『ロシア・ゲート』をめぐり大統領の弾劾話が盛り上がっているが、その背景にある最大のポイントは、「2016年のアメリカ大統領選の結果に正当性はあったのか」ということだ。

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トランプ弾劾なら次の大統領は?

ロシアの選挙介入に通じていたことが司法妨害の背景にあるとしてトランプ大統領が弾劾されたら、次の大統領は誰になるのか? 普通は副大統領だ。しかし、アメリカ大統領選挙は正副大統領候補をセットで選び投票している。そのため、トランプ大統領がダメならペンス副大統領もダメなのではないか?という議論が沸き起こる。

もしトランプ大統領が辞任、ないし弾劾が成立したら、
< 1 > ペンス副大統領
< 2 > ポール・ライアン連邦下院議長(共和党)
という継承順位がそもそも通用しなくなる可能性も考えられるのだ。

クリントンの勝ちか?アメリカ大統領選

そもそも、大統領選挙自体が民主党のクリントン&ケイン、共和党のトランプ&ペンスというふうに投票されるので、「共和党」が勝ったということ自体どうなのか?とさらに疑問視されることもなる。トランプとペンスのみならず、ライアン下院議長以下、共和党が大統領の継承者を出すことへの疑問・反発は避けられない。
こう辿ってくると、クリントンがトランプより一般投票で280万票も多く獲得している事実が重要になる。ロシアの介入にもかかわらず、有権者が支持したのはトランプではなくてクリントン。正当な勝者はクリントンだっ!という主張も当然出てくるだろう。

外国政府が悪意を持って大統領選挙に介入してくるような事態は、アメリカ合衆国憲法は想定しておらず、もちろんそんな前例もない。2016年大統領選では正当性が確保できなかったということになれば、“選挙取り消し”もあるかもしれない。あるいは議会下院が大統領を選び直す? 正にフロンティアを行くかのようなことが待ち構えている。
“ロシア・ゲート”は、単に一人の大統領の弾劾ではなく、アメリカの政治制度を根底から揺るがしかねない話なのだ。

実際のところ、トランプ大統領がアウト(=弾劾成立)となる可能性はかなり低い。現状、連邦議会は上院下院とも与党共和党が多数を握っているからだ。しかし政治の世界だから、どこで風向きが変わるか分からない。アメリカウォッチャーやトランプウォッチャーは、かつて経験したことがないような事態も想定しておくべきだろう。

さて、コミー前FBI長官が公聴会で証言することに同意したと発表された。日時はまだ明らかにされていない公開の場所で彼がどれだけの話をするのか、実は大した内容はない可能性もある。要は、コミー氏がいずれ証言に立つというアナウンス効果が大事なのだ。ムラー元FBI長官が特別検察官に任命されたことと同様、事態を鎮静化させる狙いがあると見ている。

巷ではローゼンスタイン司法副長官がトランプ大統領に反旗をひるがえし、独断でムラー特別検察官を任命したというストーリーが報じられているが、副長官も元々は共和党の人だ。クリントン弾劾の時代に司法省で勤務していた。ムラー氏が上司だった時もある。そういう経緯や背景も考えてみると、副長官が「任命」の前に議会関係者らとこの事態をどう乗り切ったらいいか話をしていると思えてならない。「反トランプ」に走る一部のメディアのストーリーをうのみにすることはないだろう。

ムラー氏が特別検察官に任命されたことによって、“ロシア・ゲート”の真相が明るみにでるかもしれない。一方、どれだけの時間がかかるのかという不確定要素もある。2018年の中間選挙をにらんで議員たちがどういう風に行動するかという点も注目しなければならない。
議員たちは自分が再選されることが第一。そのためにはトランプ弾劾について賛否どちらの立場をとるのが得なのか、あるいは触らぬ神に祟りなしを決め込むべきか、いろいろ考える。“良い悪い”で考えているわけではない。その意味でも、“ロシア・ゲート”の今後とトランプ大統領の命運は予断を許さない。