首脳集合写真に意外な配慮…そして意外と知られていないカラクリ

何かと話題のトランプ大統領の初外遊だったが、とりわけ印象に残ったのは、NATO首脳会議の写真撮影の際、モンテネグロの首相を押しのけて最前列に出てきた様子だった。「アメリカ・ファースト」ってこういうことかと納得した。『誰がNATOを支えていると思っているんだ。アメリカのおかげだぞっ!』という心情が行動に表れたと言える。

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G7のファミリーフォトで各首脳の並び順を見ると、どういう関係、配慮があるか読み取れる。並び方は会議の議長国、今回はイタリアの首相が決めた。

まず、ホストのジェンティローニ首相自身が真ん中に立つ。

議長にとっての右隣り(画面左)がプルトコール上の最上席になる。トランプ大統領がその場を占めているが、実は原則があって、国家元首の大統領は行政府の長でしかない首相よりも常に厚遇される。今回のように大統領と首相がまじっている場合はまず大統領が上席に着く。大統領が複数いる場合は大統領就任期間によって順番が決まる。トランプ、マクロンの2人の大統領を比べると、4カ月の違いで就任期間はマクロン大統領がトランプ大統領より短い。そこで、議長にとって左隣(画面右)の2番手の場所に立った。

残る4人は首相(EUは国ではないので末席になる)。首相としての就任期間はメルケル首相が12年で長いためトランプ大統領の隣になっている。次に長いのは安倍首相でマクロン大統領の隣に来ている。

事前に考えていたのは、トランプ大統領とメルケル首相を隣に置くだろうかということ。

もしかしたらトランプ大統領の隣にはどう見ても相性が悪いメルケル首相ではなく、安倍首相をという配慮があるかもしれないと予想したが、結果的にそういう配慮は一切なく、原則的なプロトコールに従った並びになった。

メルケル首相は女性で、かつ在任12年のG7最古参なので、そもそもメルケル首相がトランプ大統領の場所に来てもおかしくはない。しかし、それをしてしまうと、ホストの反対側に在任期間2位の安倍首相か同じ女性ということでメイ首相をもってこないと辻褄が合わなくなり、トランプ大統領が真ん中から外れてしまう。ある意味プロトコール通りで余計な配慮なしにやったことによって、トランプ大統領が一番いい場所になった。それが最大の政治的配慮だったのかもしれない。

メイ首相・マクロン大統領・トランプ大統領・ジェンティローニ首相の4人がG7初参加だが、プロトコールの原則通りに配置をしたら、議長も含めて真ん中3人が初顔という珍しいファミリーフォトになった。

ちなみに、議長、米、仏、独、日、加、英という席次は、首脳のみが着席する丸テーブルでも維持されていた。

プーチン大統領放出により浄化されたG7

主要国首脳会議は、3年前まではG8だった。そこにはプーチン大統領がいたが、ロシアのクリミア併合によりG8から放り出された。ロシアがいなくなったおかげでG7はある意味浄化された。

かつての「西側先進国」で、価値観、目指す方向、政策的な考え方も似たり寄ったり。それゆえに合意が作りやすい。リーマンショック後は、「これからはG20の時代」などと言われた時期もあったが、共有するものが少なくてバラバラの20カ国とは違い、こっちの7カ国は考えと足並みをそろえて声を大きくして世界をリードしていこうという、本来のG7の趣旨に戻ったのだった。

しかし、だ。わずか3年で別の不純物が…。

予想通りとはいえ、トランプ大統領がここまで「アメリカ・ファースト」「トランプ・ウェイ」一直線で譲らないとは…。純化したG7の中で、特異かつかなり外れた感じの存在感が際立った。

実際、メルケル首相やジェロンティローニ首相のコメントを聞くと、議論は散々だったようだ。各国の首脳は「トランプ大統領は本当に面倒くさい」と思ったに違いない。

結果出てきた首脳宣言は、前回の伊勢志摩サミットでは32ページ。今回のイタリアのサミットはわずか6ページだ(日本外務省の英語版HPで単純比較)。フォントの大小やレイアウトの違いはあるものの、量的に半分もないという印象だ。それだけ合意できることが少なかったということだろう。

注目は「パリ協定」と「自由貿易」の取り扱い

パリ協定に関してはトランプ大統領が今週離脱か否かを決める予定だ。というアメリカの事情を明記した上で、7カ国首脳宣言なのにもかかわらす、アメリカを除く6カ国は温暖化防止を断固推進するという書き方をした。つまり、トランプを説得できませんでしたと認めたわけだ。

6カ国首脳にとって頼みの綱は長女のイヴァンカ氏だけだ。彼女はもともと温暖化問題に関してはトランプ大統領よりは理解があり、夫のクシュナー氏、ティラーソン国務長官とともに離脱はやめようと進言していると伝えられている。といっても、温室効果ガスの削減目標を下方修正する形で国内的な配慮を示し、パリ協定離脱までは進まないということのようだ。

自由貿易に関しては、とある日本の総研系のリポートで「伊勢志摩サミットを概ね引き継ぐ文言が維持された」とあった。新聞各紙も「保護主義と闘う」という文言をトランプ大統領が受け入れたと伝えている。

が、伊勢志摩サミットの声明と比べてみると、今回の声明では「保護主義と闘う」の直後に「すべての不公正な貿易慣行に対してしっかり対抗しつつ」という一文が書き加えられている。「あらゆる形態の」という「保護主義」の形容詞も削除された。

とりわけ「不公正な貿易慣行」という文言は、1980年代90年代の日米貿易摩擦の頃の対日攻撃表現で、ここは間違いなくトランプ大統領がねじ込んできた部分。細かい駆け引きでもディール男ぶりを発揮している。

今回のG7をざっくり総括すれば、景色がすっかり変わってしまった。

6カ国首脳(特に独仏)はトランプ大統領との違いを改めて痛感したが、そうはいっても、トランプを放っておくと何をしでかすか分からない。そこで少なくとも今後3年の間、G7はトランプ大統領が致命的な逸脱をしないよう囲い込む枠組みとして機能し、6カ国首脳は、その役回りを辛抱強くやり続けることになるのだと思う。

決して再選なんてされないようにと祈りながら。

(特に独仏は、G7、NATOの枠組みは維持しつつ、経済でも安保でも英なきEUの一層の結束と機能強化へと向かうに違いない。)

ただ、このままいくと、2020年のアメリカ大統領選挙の年に、G7サミットは
アメリカでトランプ議長によって開催されることになる。それはそれで2020年選挙の見ものと言えよう。