投票前の予想上回る大差に

7日に行なわれた決選投票で、中道・無所属のマクロン氏が、極右政党「国民戦線」のルペン氏を破って勝利、フランス史上最年少の大統領が誕生した。

マクロン氏の得票率は66・06%、ルペン氏が33・94%で、マクロン氏がルペン氏を30ポイント以上、上回った。有権者に広がった既存の政党への不満から、右派と左派の2大政党の候補者が決選投票には進めず、結果的にマクロン氏の支持につながった。一方、ルペン氏は、根強く残る極右に対する警戒心に加えてEU離脱を急速に進めようとする姿勢などが、支持されなかった。

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マクロン氏が喜べない“圧勝”…ルペン支持が拡大も

決選投票では白票と無効票が合わせて11%余りにのぼり、マクロン氏もルペン氏も支持しないと意志表明した有権者が多かったことが分かる。

投票率自体、第1回投票の77.77%から決選投票では3.1ポイント下がった。この二人の決選投票なら投票所に行かないという有権者が、100万人いた計算だ。 

白票・無効票は、第1回投票は2.57%。決選投票は11.49%。なんと4倍になっている。「どちらも支持できない」というフランス国民の思いがここに表れている。

敗北したもののルペン氏は、第1回投票での獲得票数は770万票。決選投票は1060万票に増やした。ルペン氏とマクロン氏のどちらかを選ぶならルペン氏という有権者が300万いたということだ。もちろんマクロン氏は第一回で866万票、決選投票では2000万票と文句なく多いが、あえてルペン氏を選んだ人がプラス300万人いる点を意識したい。

もともとルペン氏の「国民戦線」に期待するというしっかりした基盤があり、今回の大統領選挙でも「国民戦線」に対する支持が全く揺らいでおらず、間違いなく増えている。フランスの大統領は任期5年だが、マクロン氏がフランス国民の期待に応えられない場合、次の選挙では極右政党がさらに伸ばしてくると思われる。

マクロン政権のチャンスでピンチ!…来月の下院選挙

えっ、なんで?と思ってしまうが、フランスでは大統領選挙をやったばかりなのに、来月は下院選挙が行われる。6月11日に第1回投票、18日に決選投票がある。この下院選挙がマクロン大統領の政権運営に大きく影響してくるのだ。

マクロン氏は「極右のルペンはあり得ないからマクロン」という二者択一の決選投票に特有の投票行動が効いて、66%の得票率で当選したが、中道無所属で確固たる支持基盤がない。

現在のフランスの政治体制は第五共和制というが、その大統領はアメリカの大統領ほどには絶対権力はなく、議会が選んだ首相を受け入れなければならない。

つまり、来月の選挙の結果を反映した下院の多数派が選んだ首相とマクロン大統領が一緒に協力しながら政権運営、行政を進めていかなければいけないのだ。

マクロン氏の出身母体の市民運動、「前進」は去年結成されたばかりで、決選投票前の数字だが、下院の定数577人に対し、65人の候補者しか擁立できていない。今は、全ての選挙区に候補者を擁立すると言っており、大統領に当選したのでそれなりに擁立できるかもしれないが、立候補届出書類の提出締切日は目前に迫っているし、全ての選挙区にしっかりした選挙基盤があるわけでもない。

「前進」だけで多数与党を実現できるはずはなく、様々な政党に一緒にやりましょうと働きかけないといけないが、それもどうなのか。

議会では右派共和党と左派社会党の二大政党が存在感を示すのだろうが、それぞれがマクロン政権とどういう風に距離をとるかというのがまだ見えない。

一方、ルペン氏の「国民戦線」はそこそこくると見られている。現在はわずか2議席だが、70議席に躍進などという予測数字も出ている。

どういう議会になるにせよ、大統領は議会が選んだ首相ときちんと協力できないと、議会運営が厳しくなる。

これまでも保守派の大統領と革新系の首相の組み合わせやその逆という例があり、その状態はコアビタシオン(同棲の意)と言われる。その場合、あくまで慣例的にだが、外交を大統領、内政を首相が分担するようだ。

今、フランスは内政のほうが大変だ。経済運営、失業率、格差の是正というのが大きな問題だが、大統領がそこに噛んでこないのはどうなのか。

フランスはもっと積極財政をうち、景気をよくして失業率を下げて‥といきたがるが、それはEUを基本的に牛耳っており緊縮財政のドイツが嫌がる。構造的矛盾を抱え、お互いなかなかうまくいかないというのがある。

とにかく6月11日と18日の下院選挙の結果、マクロン氏を支持してくれる多数派を形成できるか、そこが新大統領の最大のピンチでありチャンスである。

できるだけいわゆるハングパーラメント、議会が少数与党にならないように、大統領選と議会選を非常に接近したタイミングで実施してきた。政治の知恵だ。

ところが今回はそもそも大前提の2大政党制自体が崩れ、政党基盤のない大統領が選ばれたため、タイミングは意味をなさず、多数与党がどう形成されるか見通せない。マクロン氏が選ばれたこその下院選挙に大注目だ。