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北朝鮮では、4月11日の最高人民会議開催をはじめ、金正恩委員長が党・軍・国家の三権を掌握した最高指導者となって満5年、15日の金日成氏の生誕105年、そして25日の北朝鮮人民軍の創建85年と、新たな核実験やICBMの発射実験があってもおかしくない記念日が目白押しだ。

アメリカ海軍は「カール・ビンソン」の空母打撃群を朝鮮半島近海に派遣。北朝鮮へのけん制圧力を強めている。

こうした動きは、中国が北朝鮮に効果的な対策をとらないのであれば「アメリカ単独で対応する」とトランプ大統領が習近平国家主席との首脳会談で伝えことを、早速、行動で示したものと言える。シリアへの即断即決のミサイル攻撃の直後だけに、緊張が高まるのも当然だ。

空母派遣の背景には、1996年の台湾海峡ミサイル危機での成功体験があると思われる。民主的に行われる総統選挙で、独自路線の李登輝氏が選出されることを阻止しようとして、中国軍は多数の弾道ミサイルを台湾近海に打ち込む「演習」を強行。陸海軍を大規模動員した。これに対してアメリカ軍は「インデペンデンス」と「ニミッツ」の2つの空母戦闘群(今の打撃群)を海峡に派遣。中国軍を沈黙させたのだ。

だが、今回の相手は金正恩委員長だ。何をやるか分からない予測不可能な指導者という点では“定評”がある。

「カール・ビンソン」の圧力を容れる形で核実験もミサイル発射も行わず、何事もなかったように空母が回頭できればアメリカ側の思い通りの展開だが、万一、金委員長がけん制を振り払って核実験やミサイル発射に踏み切った場合、わざわざ近海に派遣された「カール・ビンソン」打撃群は何もせずにいられるのだろうか?

何事もなかったように事態をやり過ごすのだろうか?

もしそんなことになったら、北朝鮮のみならず敵対国も同盟国も、今後、アメリカの空母派遣を真剣に受け止めなくなるだろう。軍事的圧力としての空母派遣への評価はガタ落ちとなる。それはアメリカにとって決して受け入れられないことだ。

では、空母打撃群が対抗措置をとったとしたら?

例えば、東倉理のミサイル基地を攻撃したなら、金委員長はさらに反発を強めて複数の弾道ミサイルを…などなど、軍事的エスカレーションの可能性は数限りなくある。

アメリカと北朝鮮が同じ「ゲームのルール」でつばぜり合いをするのなら、不測の事態に発展する可能性は低いとも考えられるが、両国の間には、共通の「ルール」も信頼感も決定的に欠落している。


「カール・ビンソン」の展開は、予測不能なエスカレーションの端緒となる可能性をはらんでおり、その意味で、トランプ大統領は「派遣」を決めた途端に、後戻りできない「陥穽」にはまった…とも言えるのではないか。