「家事代行サービス」は、海外ではメイドとして定着しているものの、日本ではまだまだ普及率が低く、利用経験者は3%程度だ。
このサービスが広がると日本の暮らしはどう変わるのか、株式会社ベアーズの取締役副社長、高橋ゆきさんに話を伺った。

まず、「家事代行サービス」とは、どのようなサービスなのか?

高橋さんーー「ようやく耳にするようになってきたと思いますが、ハウスクリーニングとどう違うのか、まだまだ混乱しているようです。家事代行サービスは家庭のものを借りて、家族の代わりに家の中のことを代行する日常の暮らしのサポートです。具体的には、掃除、洗濯、料理とその片付け、お子さんの面倒を見ることなどです。一方で、ハウスクリーニングは、専門知識を持った人が、専門の機材や溶剤を使う清掃サービスです。」 

そもそも「家事代行サービス」をはじめたきっかけは、22年前の香港在住時代。当時高橋さん夫婦は仕事と家事、育児に追われていた。

高橋さんーー「まわりに自分を支えてくれる両親や友人はいませんでした。しかし職場のボスからフィリピン人のメイドを紹介され、家事や育児のパートナーを得たことで、180度変わりました。」「当初は他人を家に上げることへの不安やうしろめたさを感じていましたし、20代の夫婦がメイドを雇っていいのかと。ただ、香港ではメイドは富裕層だけのものでなく当たり前でした。」 

高橋さんが帰国したのは18年前。
しかし日本社会に戻るとまわりにいた女性たちは、「育児休暇が取りづらい」「育児も仕事も中途半端に感じる」と泣いていたという。

高橋さんーー「女性が泣いている日本社会をなんとかしようと、家事代行サービスを産業化しようと。女性が泣かなくていい時代を作りたかった。」 

「夫婦げんかが減った」「職場での時間生産性が上がった」

ベアーズの設立は1999年。当初の利用件数は年間2千件だったが、昨年度は34万件と急成長している。利用者はやはり共働き家庭?

高橋さんーー「5、6年前は圧倒的に共働き子育て世代でしたが、いまは半分くらいです。ほかには専業主婦や独り暮らしOL、男性、さらにシニアの利用者も増えました。」 

利用者からは、「夫婦げんかが減った」「やさしくなった、若返ったと言われるようになった」という声のほか、「職場での時間生産性が上がった」という声もある。

一方、従業員(ベアーズレディ)は20代から70代が中心で、最年長は86歳。ベアーズでは55歳以上の雇用創出に貢献したいと高齢者を積極的に採用してきた。彼女たちも自分たちの人生経験を活用して働き盛りの世代を支援できると喜んでいるそうだ。 

サービスエリアは、首都圏や都市部中心に23都道府県。料金は標準(デラックス)で、一時間あたり3300円、月2回から。
家庭ごとのニーズに合わせて、サービスの内容を変えている。

では、いいことばかりに聞こえる「家事代行サービス」が、利用経験者3%と普及が進まない背景に何があるのか?

高橋さんーー「経産省が行ったアンケートでは、利用経験者が3%の一方で、使いたいか?という問いには、使いたいと答えた家庭が86%でした。ではなぜ使わないのか理由を聞くと、多かった答えが思い込みによる価格の高さと精神的要因でした。精神的要因とは、他人を家に上げるのは恥ずかしい、プライバシーが気になる、女性として妻として母としてサボっているように思われたらどうしようという気持ちです。」 

普及を進めるために必要なことは?

高橋さんーー「まず、利用者の安心・サービスの安全を高めるために、事業者の認証制度、家事支援サービス認証を先月創設しました。これで業界自体の品質向上を目指します。さらに、暮らしの支援バウチャーや税制控除など経済面での負担軽減策もあると思います。」 

人手不足の中、働き手の確保も重要だ。先月東京都は戦略特区を活用し、暮らしの分野の海外人材の受け入れを始めた。ほか、神奈川と大阪でも受け入れを始めている。

高橋さんーー「暮らし方に特区、海外人材を受け入れるのは初めてです。日本としてもチャレンジですね。また、私たちは働き手の職業地位の底上げとして、一昨年、『家事大学』を作りました。小学生からシニアまで家事を学んでもらうと、家事の楽しさや大変さ、そして価値が理解できるようになります。」 

「家事代行サービス」を日本の暮らしの新しいインフラにしたいという高橋さんは、「女性だけでなく男女ともいきいきと暮らせる社会にしたいですね」と話す。