観光地熱海を鮮やかに彩る芸妓の舞台、湯めまちをどり「華の舞」は新型コロナウイルスの影響で上演を自粛していましたが、10月、約8カ月ぶりに再開されました。

花柳界の火を消さないように 熱海芸妓の思いを取材しました。

熱海花柳界の若手芸妓、琴千代さん。

「おはようございます。肌寒くなってきましたね」

この世界に入って8年、これほど長く舞台から遠ざかった期間はありませんでした。

熱海芸妓・琴千代さん 「4カ月お稽古事もなくなりました。行事も全部なくなって、これから熱海の花柳界はどうなってゆくのかなと思って不安になってましたね」

宴会がなくなり、観光客も激減した熱海。

お座敷に呼ばれることもなくなりました。

熱海芸妓・琴千代さん 「芸者衆の本業であるお座敷がまるでないのでね。それで芸者衆の中にはアルバイトだとか、いろいろ少しの間でもみんな一生懸命。そんな事でしのいでいたんじゃないかと思います」

芸者衆の稽古場を一般公開する、湯めまちをどり「華の舞」。

1998年に始まったこの舞台も、感染者が増え始めた2月を最後に公演を見合わせていました。

20年以上続く「華の舞」で初めての出来事でした。

自粛中、芸者衆は手作りマスクを縫って市内の子供たちに送りました。

その数、約3000枚。

熱海芸妓・琴千代さん 「芸者衆がお扇子を持つ手でね、針を握って。これがねえ、いつ元に戻れるのかしらと大変心配しておりましたの」

そして舞台休止から7カ月。

ようやく「華の舞」の再開が決まりました。

「(体温計)36.2度ですね」

琴千代さんも久しぶりの稽古です。

歌い手の間にはアクリル板を設置して、飛沫が飛ばないよう工夫しました。

熱海芸妓・琴千代さん 「お姉さんたちと全然お会いしてなかったので、やっぱりお会いできるとうれしいです」

これまでは舞台の前座をつとめていた琴千代さん。

今回は前座ではなくメインの踊り手として参加することになっていました。

厳しい指導を受けます。

「とって、見せるでしょ、見せたらそれをコンてこういうアクションつけるのよ。あげないわよって。なんかずるずるっていっている」

華の舞は1公演約30分。

琴千代さんは3つの踊りに出演します。

ふりを覚える事はもちろん、しなやかな表現には体力も必要です。

「ありがとうございました。お稽古にまだ体が慣れてなかったのでがんばります。ちょっとづつ、はい」

いよいよ再開の日。

観客は事前予約制で、定員を今までの半分50人に制限しました。

入場の際には検温消毒だけでなく名簿の記入もしてもらいます。

日本髪に整えた琴千代さんがやってきました。

「おはようございます。いい?せいの!はい、帯をこっちに貸して、手を、うん

(帯結んで閉める動作)」

熱海芸妓・琴千代さん 「(自粛で)気持ちが落ち込んでいた時もあるんですけど、こうやって今日を迎えられてうれしいです」

日本髪で踊らせていただくので前座の時より踊れるように。

公演自粛から8カ月。

華やかな着物、艶やかな踊り。

熱海市の花柳界が息を吹き返しました。

琴千代さんも稽古の成果を見せることができました。

熱海芸妓・琴千代さん 「密を避けて、少しお客様が少なくなっているんですけど、でもきょうは50人まででしたけど、けっこういらしてくださっていたのでうれしいです。本番終えて気が抜けないように、毎日お稽古精進いたします」

観光の街 熱海。

徐々に回復の兆しが見え始めました。

感染拡大で苦しい時期を耐え、伝統文化を引き継ぐ芸妓衆が「華の舞」を大切に守り続けています。