ここに一枚の写真がある。

撮影されたのはバングラデシュの片田舎。夜、街灯の下で勉強する一人の男子学生だ。

家では勉強のために電気代を払えない。街灯の明かりを頼りに本を読む学生の姿に、胸が締め付けられるような想いを抱く人も多いだろう。

しかし、この画像を見たときに、教育NGO「e-Education」の代表理事を務める三輪さんは、こう考えた。「あ、電気はあるんだな」と。

「授業」を受けた学生は計1万人以上

11月16日の「教育のキモ」のゲスト、e-Educationの三輪さんは、アジアを中心とした発展途上国に「授業」を送り届ける取り組みを行っている。

その国の著名な先生の授業を撮影し、先生が少ない地域にDVDで送り届けるのだ。

三輪さんたちが、この活動を始めたのは2010年。これまでに14か国で2千枚のDVDを制作し、計1万人以上の学生が授業を受けた。さらにインターネットによる授業の映像配信も始めているので、授業を受ける学生の数はもはや数えきれない。

最高の授業をその国の人々に届けたい

三輪さんがこの取り組みを思いついたのは、地方出身である自身の経験からだ。
三輪さんの住む地方には「予備校」がなかった。しかし、「東進ハイスクール」で著名講師たちの授業の映像を見て学ぶことができ、大学に進学できたのだという。

これまで、発展途上国の教育支援活動は、学校の建設や文房具や教材の供与が中心だった。

しかし、それには時間もコストもかかる。

そこで「授業」という、費用のそれほどかからない、しかしもっとも必要とされるソフトを、映像として学生たちに配布しようと決めた。

デジタル環境で生まれ育った世代ならではの発想だ(三輪さんは30歳になったばかり)。

現地の政府、地方行政までをも動かす活動に

これまでe-Educationの活動は企業などのスポンサーに支えられてきた。

しかし最近は、現地の政府や地方行政、教育委員会らが自ら予算をねん出し、動き出しているという。

また、e-Educationが活動していない国々でも、映像を活用した教育支援の動きが広がっているそうだ。

「発展途上国の貧しい地域で生まれた子供たちにとって、大学に行くことは夢のまた夢。しかし、そんなことないんだよ、と言いたい」

三輪さんは、国境を越えてデジタルネイティブな世代に、新たなかたちで教育をサポートし続ける。