「教育は学校だけで全うできるわけではありません。学校、家庭、地域がそれぞれの役割を果たすことが大切であり、『社会総がかり』で子供を育むことが必要であります。」

安倍総理は先月28日、官邸で行われた教育再生実行会議でこう語った。
第二次安倍政権のもと2013年に始まった教育再生実行会議は、これまで9つの提言がまとめられてきたが、8月に松野文科大臣が就任して5か月ぶりの再始動となった。

今回の会議のテーマの一つは、「学校と家庭、地域の役割分担の見直し」だ。
この議論が行われた背景には、教師の長時間労働問題がある。

日本の教師の勤務時間はOECD諸国の中で最も長く、平均で週50時間を超えている。
しかし、勤務時間に占める授業やその準備時間は半分足らずである。

教師の勤務時間が増え続ける原因は、いじめや校内暴力、少年非行の多発により生徒指導が増えたことや、校務に関する事務処理増、モンスターペアレントなど保護者からのクレーム対応なのである。

日本の教師は多忙を極めているにもかかわらず、本来あるべき子どもたちとの学びの時間が少ないのだ。
実際、学校関係者からは、「保護者対応に追われて、授業の準備に手が回らない。ひどい保護者は自分たちの離婚の相談までしてくる。」「作成しなくてはならない書類が多すぎる。」と、不満や憤りの声が上がっている。

日本の学校教育は、教師の長時間労働の上に成り立っている。


学校が担っている教育の役割を家庭や地域も分担しないと、このまま持続することは難いのだ。

欧米では、学びは学校、しつけは家庭や教会、スポーツは地域やクラブが中心となっているが、日本の学校は、知・徳・体を一体的に指導することを求められている。

しかし2020年度には教育改革がスタートし、授業の仕方はこれまでのものから、全員参加型のアクティブラーニングに変わる。
これだけの変革があと4年足らずに迫っているのだが、教育現場では日々の業務に追われて準備をする余裕がないのだ。

会議では、部活動や生徒指導など学校が抱えている役割を、家庭や地域が分担することで、教師がより授業に専念するできる方策が議論された。

学校が週休二日制になっても、教師は土日も部活動の指導や引率に駆り出される。
部活動の負担軽減について委員からは、地域にいる専門人材や、外部のスポーツクラブを活用する案が出された。

また、欧米の学校では、学校事務は事務職員、生徒指導はカウンセラーなどが配置され、教師は授業に専念できる。
これについても委員からは、学校事務の合理化や事務職員の在り方について提案があったほか、「教師がさまざまな業務を抱え込まず、家庭や地域と『チーム学校』を推進していくべき」との意見があった。

しかし、本丸である家庭の役割見直しについては、幼児教育や福祉との連携などの提案があった一方、「国が家庭教育に踏み込むことは慎重であるべき」「保護者の自覚を高めていくことが大事だ」と慎重な議論を求める意見が相次いだ。

家庭教育については、教師と保護者の間に大きな認識の差がある。

学校側がしつけは家庭が中心になって行うべきと考えている一方で、保護者の多くは「学校が社会のマナーや生活習慣を教えるべき」と考えており、学校へ期待する声は年々増えているという。

このまま教師の長時間労働を放置すれば、学校運営はいずれ立ち行かなくなる。

政府が「『社会総がかり』で子どもを育む」と言うと、「家庭に国が介入するのはいかがなものか?」という声が出てくる。

しかし、学校、家庭、地域の役割分担の議論は、学校教育をサステナブル(持続可能)にするために何が必要なのかという視点が求められる。