経団連の平成30年度税制改正に関する提言が明らかになった。
IoTや人工知能、バイオテクノロジーが進化する超スマート社会「Society5.0」に向けて、M&Aや事業再編を円滑化し、ビッグデータの活用を促す税制の整備が大きな柱だ。
また政府が進める「人づくり革命」に向けた人材投資への税制改正要望も盛り込んだ。

M&Aなどの加速を促す税制措置
経団連が『産業界にとって中心テーマ』としたことの1つが、M&Aや事業再編の加速を促す税制措置だ。
具体的にはノンコア事業の早期売却と買収によるコア事業の強化をすすめるため、事業再編を行った場合の、譲渡益に対する課税の繰り延べ措置を行うよう求める。
また、大型M&Aで先進国では一般的な、株式対価M&A時の課税繰り延べ措置を創設する。
さらに、人工知能やIoTの普及、ビッグデータの活用による生産効率向上、そして東京オリパラに向けたセキュリティ強化のため、セキュリティ関連などのIT資産やサービス取得時の税制上のインセンティブを整備する。
社員教育で法人税の減税を
日本では今後益々生産年齢人口が減少し、人手不足が厳しくなることが予想され、企業には幅広い人材への投資が求められる。
そこで、賃上げした企業に対して法人税を減額する「所得拡大促進税制」について、減税対象に社員教育の費用を含めることも盛り込んだ。
政府が「人づくり革命」で注目しているのが「リカレント教育」だ。
就職後新たなスキル獲得のため学び直す「リカレント教育」など、正規・非正規社員の教育費用を前年度より多くかければ、税控除の対象とする。
法人税を巡っては、国外からの投資を阻み、国内企業の競争力を弱めているとして、産業界はこれまで実効税率の引き下げを強く求めてきた。
しかし、今回の提言では、「アメリカの法人税を注視し、国際的な流れを見ながら中期的に議論していく」(経団連井上隆常務理事)として、企業に特定の取り組みを促す税制改正により主眼を置いた。
経団連は、「政府の中ではおそらく『人づくり』に関して議論が深まっていく」(井上氏)とみている。

また、提言では、地価上昇をにらんで、土地にかかる固定資産税の負担軽減を求めるほか、高齢者が有する資金の若年層への移管を促す税制措置の検討なども求めている。
これまで経団連は、与党が提案する「子ども保険」を「現役世代と事業主にのみ負担を強いる」、「教育国債」については「将来世代への負担先送り」だとして、それぞれ問題点があると指摘し、社会保障制度の財源として消費税率の10%への引き上げを主張している。
世界の企業の時価総額ランキングで、アメリカと中国のIT企業が上位を独占し、日本はトップのトヨタ自動車でもすでに47位と、日本の産業力の衰退ぶりが言われて久しい。
時代はすでに「国富を生み出す方程式が本質的に変化」(ヤフーCSO安宅和人氏)している。
IoTや人工知能、ビッグデータ活用を後押しする税制改正は、待ったなしだろう。