「睡眠負債を返済」シリーズも第5回となりました。夏休み本番、子どもたちはますます夜更かし、寝坊癖がついてしまいます。
子どもの睡眠をどう改善するか、悩む親が多いと思いますが、日本快眠環境科学ラボの顧問で、昭和西川株式会社の常務取締役、西川ユカコさんは「子どもの睡眠改善には、お母さんの働き方改革が大事」だと言います。 




ーーまず、子どもの発育にとっての、睡眠の大切さを教えてください。



西川:
人間の脳は睡眠不足、たとえば2時間不足していると、アルコールを飲んでほろ酔いの状態と同じ程度しか活動できなくなります。これは子どもも大人も変わりません。

睡眠不足の子どもが、勉強をできるようになるわけがありません。

まずやる気が出ませんし、集中力がなくなります。さらに、記憶力も低下します。

よほどIQが高い子どもなら大丈夫ですが、自分の能力を発揮するためにはまず睡眠をとることが大事ですね。


ーーほかにも睡眠は、子どもにどんな影響を与えますか?


西川:
きちんと睡眠を取れば、成長ホルモンの分泌が活発になるので身長も伸びますし、勉強への集中力や記憶力も増します。

また、性格的にも前頭葉の働きがよくなることで、他者への気づかいが出来るようになります。

運動能力もよく寝る子のほうが高いというデータがあります。

学習塾通いや宿題で睡眠時間を削っている子どもがいますが、寝させればもっと能力が伸びますし、やる気、集中力、記憶力を手に入れることができます


ーー睡眠時間は子どもでも個人差があると思いますが、どうやって適正時間を見つければいいのでしょうか?


西川:
学校がある月から金曜日は起きられても、学校が無い週末にたくさん寝る子どもは、睡眠が不足しています。目安としては、週末の睡眠時間が平日より2時間多いと睡眠不足です。これは大人も同様です。


ーー子どもを早く寝かすのも大変ですよね?


西川:
徐々に改善していくしかありません。最初から1時間早く寝かすのは大変なので、まずは15分早めて1週間、次の週にまた15分早めて、というようにやっていくのがよいと思います。

また、子どもが夜にコンビニに集まっている光景を見ますが、睡眠にはよくありません。

夜コンビニの光を浴びると、メラトニンという寝るための睡眠ホルモンが出にくくなります。

その結果眠りに入る時間が遅くなったり、睡眠自体が浅くなったります。

また、睡眠ホルモンが出にくくなると、性的な成長が早まると言われていて、女の子だと生理が早くなったり、早熟になったりすることがあります。

ませた子は夜更かしだとよく言われますね。


ーーしかし現実問題として、子どもを早く寝かすには、親も夜型から朝型に生活を変える必要がありますね。


西川:
はい。お母さんが寝るのが遅いと、子どもも寝るのが遅いというデータがあります

いま共働き世帯が多いので、お母さんが6時に仕事を終えて、家に帰って夕食を作ったら食事をするのは8時ごろになり、8時半に子供を寝かせるのは無理です。

一方で、子どもの寝る時間は、お父さんの寝る時間には左右されません

ということは、夜の家事の負担が、いかにお母さんにかかっているかということです。

OECD加盟国の睡眠時間調査では、日本人は2番目に睡眠時間が少ないのです。

その日本人の中でも40代の女性が、最も睡眠時間が少ないです。

この世代はお母さんであることが多い世代ですから、必然的に子どもの睡眠時間も少なくなります。
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ーー働くお母さんには相当の負担がかかっているわけですが、これを改善するためにはどうすればいいのでしょうか?


西川:
お父さんの家事分担はもちろんですが、家庭での食事への意識改革も必要です

昭和の高度経済成長期は、専業主婦が多かったので、夕食におかずがたくさん並んでいました。

しかし、共働きでは無理です。

お母さんが働いて家計を助けているだけで、十分にエライはずなのですが、たくさんおかずが並ばないと家事をサボっている、いいお母さんではないという幻想がいまだにお母さんにもお父さんにもあります。

何でも完璧を目指したら、お母さんの体が壊れますよ。


ーー昭和の呪縛があるのですね。


西川:
土井善晴先生が書いた「一汁一菜」に関する本があって、普段はごはんに具だくさんのお味噌汁だけでも十分だという提案がされています。

これでいいと思えば女性の気持ちが楽になるし、粗食でもOK!となれば家庭での食生活も多様性が出てきます。

昭和の呪縛から働くお母さんが解放されるためにも、どんどん広まってほしいです。

また、都会に住む日本人は、職場から家が遠い人が多いです。

それだけでも食事づくりに取り掛かる時間が遅いのに、子どもは塾が終わるのが遅かったりしたら、寝るのが遅くなる要素しかありません。

そろそろ日本人はライフスタイルと価値観を変えないと、大人だけでなく子どもの睡眠時間をどんどん犠牲にすることになりますね。


ーー子どもの睡眠不足の解消には、大人が変わらないといけないのですね。


西川:
日本人の慢性的な睡眠不足は、それぞれの家庭でがんばるにもムリがあるので、国を挙げて「大人の働き方」「子どもの育て方」「家庭の在り方」を改革しないと、子どもたちの睡眠時間が伸びないと思います。

少子化に向かっているのだから、これから先はますます子どもの能力を最大限に引き出すことが大切です。そのためには、子どもの睡眠不足の解消、そのためには大人の睡眠不足の解消が急務ですね。

昭和西川株式会社 西川ユカコ常務取締役