東日本大震災の津波で児童ら84人が犠牲となった、宮城県の大川小学校の遺族が、岩手県内の被災地を訪れ、防災や伝承に取り組む若者たちと交流した。

震災からまもなく10年、互いの思いの共有は新たな力を生み出そうとしている。

11月22日、岩手・大槌町に1台のバスが到着した。

降り立ったのは、津波で被災した宮城県石巻市立大川小学校の遺族らでつくる、伝承の会のメンバーだ。

大川伝承の会 共同代表 佐藤敏郎さん(57)

「(各地で)それぞれで伝承活動をしていて、共通することもあるし違う部分もある。そういうお互いの情報交換とか、実際自分たちの目で見ることは大事なことと考えて」

北上川河口から約4キロの大川小学校には地震の約50分後、津波が到達。

目の前に山がありながら避難が遅れ、児童74人、教職員10人が犠牲になった。

津波の避難場所が明確に決まっていなかった上、訓練も行われておらず、裁判でも事前の防災の不備が認められた。

遺族らは現在、教訓を伝える語り部の活動をしている。

この日、最初に交流したのは大槌高校2年生の植田詩季さん(16)。

全校生徒が持つ携帯のアプリで、今地震が起きたらどうするか、抜き打ちでアンケートを行うなど、防災について独自の研究をしている。

大槌高校2年 植田詩季さん

「大川小学校の事例から考えて、ただマニュアルに沿って逃げるだけではなく、個人個人が1人で行動し、1人で判断できる力を養いたい」

震災当時は小学1年生、熱意は大人たちを圧倒する程だった。

大川伝承の会 佐藤敏郎さん

「今、地震や津波が来たらどうするという判断力も大事だし、10年後20年後に自分の命や自分の大切な人を守れるかということだよね」

大槌高校2年 植田詩季さん

「助かることは簡単ですけど、簡単なことができないのが人間なので、簡単なことをいかにしていくかが大事」

大川伝承の会 佐藤敏郎さん

「深いよね。だからシンプルなんですよ。やることは」

そして一行は釜石市鵜住居地区でも若者と交流した。

伝承施設で語り部を務めている菊池のどかさん(25)。

当時、釜石東中学校3年生だった のどかさん。

学校では震災前から隣の鵜住居小学校と共に防災学習や避難訓練に取り組んでいて、発生当日には約600人が一斉に高台に避難した。

“奇跡”とも呼ばれたその行動は、大川小の被害と比較されることが多く、戸惑いを感じていたという のどかさん。この夏、初めて、大川小を訪れた。

(2020年7月)

大川伝承の会 佐藤敏郎さん

「学校のそばで、その学校の子供たちが、泥だらけでブルーシートにかぶせられて何十人も並べられていてはだめだと思います。なるべくとか、できるだけじゃない、絶対ダメだと思うんですよね」

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「どうしても(釜石が)”良い例”にされて、誰かが亡くなったとか そういう話はなかなか言えなかった立場だったけど、釜石であったことを誠心誠意伝えていかないといけないと思った」

大川小の遺族が釜石の伝承施設を訪ねたのは、今回が初めてだった。

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「中学校の副校長先生が指示を出してくれて、指示は簡単に2つです。やまざきデイサービスに行きます。中学生は小学生と責任持って手をつなぎなさいと。それだけでした」

のどかさんは避難中の出来事をつまびらかに語る。

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「私たちは山側に向かって歩いています。この車は逆向きです、海側に向かってきています。実はこれ(迎えの)保護者の車だったんです。防災教育をちゃんと受けていたと言わなければいけない感じになっていますけど、そうじゃないんですよね。やっていたけど、自分の親に伝えていたかというとそうじゃなかったし。なので実は、ここで(子供と)会っていなかったら、すごくたくさんの人たちが亡くなっていた。ここで(保護者が)一緒に逃げたので何とか助かった」

決して成功事例ではない。

失われた命にもしっかり向き合いたい。

そう考えていた。

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「たくさんの子供たちが助かった中でも、周りの人を助けようとして亡くなった子供たちも中にはいました。今まで “奇跡” と呼ばれる中で、この子たちの存在を隠し続けなければいけないような つらさもあったけど、こうやって亡くなる子たちがゼロになるように、ちょっとずつみんなと一緒にこの街を良くしていけたらと思っています」

当時大川小5年生の次女を亡くした夫婦が、のどかさんに思いを語った。

大川小5年の次女亡くした 紫桃さよみさん(54)

「すごくうらやましかった、あの当時。何でうちの子たちはって恨んだ時期もあった、正直。ごめんなさいね」

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「一生(遺族とは)本当はお話しできないんだろうなって思っていたから、きょうは嬉しくて」

大川小5年の次女亡くした 紫桃隆洋さん(56)

「今を大切に生きていかなければならないしね。また一緒に活動しましょうね」

いのちをつなぐ未来館 菊池のどかさん

「やっぱり伝え続けるってすごく大事だなと思いました。(今まで)なかなかお話しできなかった部分もあったけど、今日はそれじゃだめだなとすごく教えてもらえた一日でした」

大川伝承の会 佐藤敏郎さん

「しっかり向き合って伝えていく必要性を感じたし、心の底からというか、魂で伝えようとしてくれているので、すごく考えさせられました」

県を越えて思いを分かち合った1日。

震災からまもなく10年。

未来の命を守るため共に歩む決意を新たにしていた。