ウィーン発、今や宝塚の大人気演目『エリザベート』

ミュージカル『エリザベート』はオーストリア皇后エリザベートの数奇な人生を、彼女を愛する黄泉の国の王トートという存在を配して描いたミュージカルです。壮大で独創的な歴史ファンタジーをシルヴェスター・リーヴァイの素晴らしい音楽が彩るこの作品は1992年にウィーンで初演されるや大ヒットとなり、その後世界各地で上演されることになります。

宝塚歌劇団は初演からわずか4年という1996年に日本での初演を果たし、トートを主役として歴代の人気トップが演じ、名曲の数々を歌い上げる華やかで切ないこの作品は多くのファンの心をつかみ、今や宝塚の大人気演目の1つに数えらえます。

宙組は実力派ぞろい

現在の宙組のトップは朝夏まなとさん。近年、手足は長いけれど全体的に線が細いトップが多かったけれど、朝夏さんは舞台での存在感が本当にすごい(太っている、という意味では決してありません。太ってないし)。立っているだけで絵になるし歌も堂々として表現力もあります。娘役トップは実咲凛音さん。『エリザベート』には彼女が美容に気を使っていることを評して「ウエストが50センチしかない」という歌詞があり、その通りの華奢で可憐。その実咲さんがお転婆な少女時代から名だたる王女となり孤独に老いてゆく様を演じています。

そして今の宙組は充実しています。『エリザベート』は独唱も合唱もとても美しいけれどとてつもなく難しい曲が多い。しかし2人のトップはもちろん、それを支えるカンパニーがしっかりとそれを表現しているのが素晴らしいです。ひとつ付け加えるなら、私のイチオシはエリザベートの夫であるフランツ国王を演じた男役2番手の真風涼帆さん。歌も踊りも姿もいい!これから楽しみです。

その時まさかの…

二幕の、エリザベートが夫である国王の不義に絶望し各国を旅する、その場面でした。セリフの音が途切れた、と思った途端に舞台は真っ暗に。10月12日、東京を襲った大停電のその時でした。

東京電力の地下施設内で火災。大規模停電が発生。

もちろんその瞬間はそんなことを知るはずもなく、何らかの技術トラブルですぐに再開すると思っていました。しかしやがて客席の電気が付き、スタッフの方が袖に出てきて「全館停電」を拡声器で告げました。館内放送の機材も使えなかったからで、お手洗いも水洗のシステムが使えず水が流れない状態となりました。

先の見えない中断でしたが、一部のお客さんたちはロビーに出て電話をかけたり(私もちゃっかりホウドウキョクに電話リポートを)、スタッフに様子を聞いたりしていましたが、ほとんどの方は客席でそのまま静かに待っていました。

約1時間後に中断した場面の始めから再開。帰った方はほとんどいなかったようです。そのような状況でも集中力を切らさず演じきったキャストたち、それをあたたかく見守ったお客さんたちに感動し、「やっぱり宝塚っていいな」と改めて思いました。