イラン建国以来最悪のテロ事件

6月7日イランの首都テヘランにある国会議事堂とホメイニー廟がほぼ同時に襲撃され、12人が死亡、約40人が負傷しました。

これはおそらく、1979年のイラン・イスラム革命以後最悪の、つまりイラン建国以来最悪のテロ事件です。

意外かもしれませんが、イランというのはこれまで、ほとんどテロ・フリーな国でした。多少の語弊があるかもしれませんが、今回のテロ事件は、東京の国会議事堂と靖国神社で同時にテロ事件がおこった場合に日本人が受けるのと同じくらいの大きなショックを、イラン国民に与えたのではないかと思います。

そして、今回も犯行声明を出したのは過激派組織「イスラム国」です。

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この声明の後、たてつづけにもう2つ声明を出し、おまけに国会議事堂内部の犯行現場をうつしたビデオまで公開しました。

イスラム国がイラン国内でこのような大規模テロをおこしたのは、今回が初めてです。

しかし、イランはもともとイスラム国にとっては大敵で、いつかは「やってやりたい」相手ではありました。

その証拠に、去年からイスラム国の報道官はイランを名指しで攻撃せよと呼びかけてきましたし、ここ数ヶ月間は、イランを攻撃しようと呼びかけるビデオも公開してきました。

Telegramをみてイスラム国入り

今年の3月には、複数のイラン人戦闘員が「出演」し、イラン在住のスンナ派ムスリムに蜂起を呼びかけ、ホメイニー政権打倒を訴えて、シーア派民兵を殺害する、という大作ビデオが公開されました。

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イランの内務相は2016年8月、これまでに1500人のイラン人がイスラム国入りしようとしたのを阻止した、と発表しています。・・・が、それでもイラン人戦闘員はイスラム国にいるのです。

先週も、アフガニスタンのナンガルハルで戦闘員をしている、というイラン人のビデオが公開されました。彼はイランの西アーザルバーイジャーン出身で、Telegramをみてイスラム国入りした、と言っていました。イランでは、Telegramの使用者は数百万人ともいわれています。

話は前後しますが、なぜイランがイスラム国にとっての大敵なのかというと、第一に、イランがイラクとシリアで対イスラム国戦争に直接的に参加しているからです。イランの国会議事堂とホメイニー廟という、いわば「ど真ん中」を攻撃することは、モスル攻撃に対する「報復」の意味をもちます。

また第二に、イランがシーア派の「大ボス」だからです。イスラム国はスンナ派イスラムであり、彼らにとってシーア派は存在そのものが汚らわしい、ある意味欧米以上に敵視している相手です。理由を説明すると長くなるのでここでは省略しますが、要するに「近親憎悪」のようなものを抱いている対象です。ですから、今回の攻撃の持つ象徴的意味は、ロンドン攻撃以上に大きいともいえます。

イスラム国はおそらく、イラン国内に隠れ家をつくり、周到な準備をし、このラマダンにタイミングを合わせて攻撃を実行してきたのでしょう。

国内に絶対にイスラム国を入れない!と強調してきたイラン当局にとって、今回の事件が与えた衝撃ははかり知れません。


(執筆:Iiyama Akari)