生活再建が急ピッチで進む中の自爆テロ

非常に残念なお知らせですが、ここ数日、イラクの過激派組織「イスラム国」に復興の兆しがみえます。

イラクでイスラム国が最大拠点としてきたモスルに対する奪還作戦が開始されたのが、2016年10月17日。もうすぐ200日が経ちます。

2017年1月25日には、モスルの東岸からイスラム国戦闘員を完全に駆逐したと、イラク政府が発表しました。

ところがその東岸で21日、再度自爆テロが発生し、市民ら18人が死傷しました。

http://iraqnewsapp.com/1/Article/2244/135129186#.WP9BuI7iDjE
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つまり、東岸からはイスラム国戦闘員はまだ一掃されてはおらず、戦闘員が潜伏し、自動車爆弾による自爆テロを行う力を温存していたということです。

モスル東岸解放宣言がなされてから3ヶ月。避難していた住民も徐々に帰還し、生活再建が急ピッチで進む中の自爆テロでした。人々のショックは、はかりしれません。

さらに昨日から今日にかけては、まだ戦闘が続いているモスル西岸でも、イスラム国が一度は奪われた地区をいくつか奪還しました。

イスラム国は、奪還したとするバーブットウブ地区を撮影したビデオも公開しています。

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奪還作戦の成功を戦闘員が宣言しています。

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手前から二番目はおそらく欧米人の戦闘員、一番奥は10歳くらいの少年兵だと思われます。

装備品、武器弾薬の類も、イラク軍のものをそっくりそのままいただいたとのこと。

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イラク軍は、モスル西部もすでに60%は奪還し、イラク全体でみても、イスラム国が支配する土地はイラク全土の7%にまで減少した、としています。

イスラム国の拠点がどこなのかすら掴めていない

下の地図で黒く塗られた部分が、イスラム国の今の支配領域です。

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しかし、イスラム国が攻撃を実行しているのは、この黒い地域にとどまりません。

こちらは、ここ1ヶ月間にイラクで発生した主な治安事件を示した地図ですが・・・

ISW

首都バグダードを始め、サーマッラーやディヤラでも大規模な攻撃を行っていることがわかります。

サーマッラーの東にはジャラムという砂漠地帯が広がっており、イスラム国はここの地元部族に深く食い込み、拠点を築いているとされています。このエリアは砂漠だけに、治安当局はどこにイスラム国の拠点があるのかすら掴めていないと言われています。

一方、イスラム国はモスルの戦闘員の多くをすでにシリアに移動させたのですが、シリアで最大の拠点としてきたラッカも有志連合の空爆で危険にさらされているので、ラッカの南東にあるイラク国境近くのデリゾール(Deir Al Zor) に、首都機能を移転済みだとされています。

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モスルのほとんどを失いながらも、防衛戦に終始することなく一部の地域を奪還、さらに遠隔地にまで攻撃の手をのばしていること、モスルからラッカ、デリゾールへと首都機能を移転させていること、指導者であるカリフ、バグダーディーも数ヶ月前にデリゾール方面に脱出し、健在だと伝えられていること・・・これらのみを考慮しても、イスラム国が力を失ったと安心するのは時期尚早であるといえます。


(執筆:Iiyama Akari)