断眠を続けると人間はどうなるのか?

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72時間と言う長丁場の番組中には、出演者や視聴者からも「寝てなくて大丈夫?」「眠くないの?」との声が度々投げかけられました。
もちろん3人は番組中も、折を見て休養を取ったと思われます。

…では、人間はどれくらい起きていられるんでしょうか?
連続覚醒時間のチャレンジで最も有名な記録は、1964年に米サンディエゴの高校生ランディ・ガードナーが樹立した264時間、実に11日間にわたるものです。

これには、睡眠研究で有名なスタンフォード大学のウィリアム・デメント教授が立ち会い、詳細に観察しています。博士の記録によるとランディ青年は次第に変調をきたし、随分と危険な状態に見えたそうです。

では、ランディ青年に何が起こったのか?

●2日目…体調不良。記憶障害。目の焦点が合わない。視力や立体感覚の低下
●4日目…自分が有名スポーツ選手であるという誇大妄想
●5日目…感情のコントロールが困難。思考力や集中力等の脳の機能低下
●6日目…幻覚
●7日目…体の震え。言語障害
●9日目…まとまった話ができなくなり、無表情に。眼球が左右バラバラに動く
●最終日…極度の記憶障害 

…と、なかなかに壮絶な変化を見せていったようです。
その後のランディ青年ですが、15時間ほど爆睡した後に自然に覚醒し、精神面でもなんら後遺症は残らなかったそうです。
とは言え、明らかに人体に危険なことが明らかになったため、これ以降、ギネスには「不眠」の記録は載らなくなりました。

6時間睡眠×2週間≒2晩徹夜!

このような極端な断眠は別としても、慢性的な睡眠不足は代謝や免疫、メンタルヘルスに多大な悪影響をもたらすことがわかっています。
「蓄積した睡眠不足」のことを「睡眠負債(Sleep Debt)」と呼び、命にかかわる病気のリスクを高め、日々の生活の質を下げていることが明らかになりました。

実は、日本人は先進国の中でも平均睡眠時間が短く、国が毎年実施している調査によれば、睡眠時間が6時間以下の人は、2015年には約4割に達しています。6時間以下というのは、アメリカでは短時間睡眠とされる数値です。

米ペンシルバニア大学などの研究チームが行った実験では、「6時間睡眠を2週間続けた脳は、2晩徹夜したのとほぼ同じ状態」になることが明らかになりました。この状態で車の運転をしたら、大きな事故を起こしても不思議ありません。

「睡眠負債」によって、集中力・注意維持の低下や記憶・学習・認知機能の低下など、脳機能への影響があると考えられています。しかし、悪影響はそれだけではありません。

「睡眠負債」で太りやすい体に!

実は「肥満になりやすい」こともわかっています。
それは、「レプチン」と「グレリン」というホルモンのバランスが崩れてしまうからです。レプチンは脂肪細胞が分泌する、食欲を抑制するホルモン。一方、グレリンは胃で作られるホルモンで、食欲を増進します。睡眠時間が短いと、レプチンが減り、グレリンが増えてしまいます。睡眠時間が5時間の人は8時間の人に比べて、レプチンが16%少なく、グレリンが15%も増えるのです。

そのため、睡眠時間が短いと、食欲が増進して太りやすい身体になってしまいます。
そのうえ、グレリンが多いと高カロリー食を好むようになります。睡眠不足の時に、ケーキやこってりしたラーメンが欲しくなるのはこのためです。
「睡眠負債」の悪影響には、さらに深刻なものがあります。

がんや認知症のリスクがアップ!

東北大学が、宮城県の女性24,000人あまりを7年間追跡し、睡眠時間と乳がんの発症リスクの関係を調べました。
すると、平均睡眠時間が6時間以下の人では、7時間寝ている人に対して、乳がんのリスクが約1.6倍になることがわかったのです。

さらに、「睡眠負債」の状態に置いたマウスでは、アルツハイマー病の原因といわれるアミロイドβが脳に蓄積しやすくなることが分かっています。
アミロイドβは、認知症が発症する20~30年前から蓄積するといわれています。30代~50代の「睡眠負債」には留意が必要です。

多忙な人の「睡眠負債」対処法は?

そうは言っても、毎日仕事や家事で忙しくて、7~8時間の睡眠時間の確保は難しいという方は多いと思います。
そういう場合の対処法としては、10~15分間の短時間の昼寝をするのが、非常に効果的です。その後の仕事のパフォーマンスも大きく向上します。

もちろん横になる必要はなく、机に伏せて短時間の仮眠を取るだけで十分です。(1時間以上の昼寝は、夜間の睡眠を阻害するのでお勧めできません)

昼寝には他にも効用があり、2000年に国立精神・神経センターの行った調査によると、30分未満の昼寝をする人は、昼寝の習慣がない人に比べて認知症発症リスクは何と約7分の1だったのです。

ただし、やはり「ぐっすり昼寝」には注意が必要で、1時間以上昼寝をする人の発症リスクは、昼寝の習慣のない人の約2倍も高いという結果でした。(睡眠時間が8時間以上と長い場合は、逆に生命予後が悪いというデータもあります)

また睡眠の質を上げることも大切です。
「寝床での長時間のスマホ」「就寝前3時間以内のカフェイン」など、安眠を妨げるとされる生活習慣は避けましょう。

また、就寝前にたくさん食べると、胃や腸の働きが活発になり、睡眠が浅くなってしまいます。深夜のラーメンや牛丼は、睡眠の面からも要注意です。
夜の食事は就寝3~4時間前に済ませ、過食をしないことを意識しましょう。


(執筆:Kusaba Gaku)