日本ではHIV検査に心理的ハードル

エイズ(AIDS 後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって引き起こされる疾患です。

HIVに感染後、治療を受けなければ、免疫不全状態となりエイズを発症、2年以内に90%の患者が死亡します。しかし、複数のエイズ治療薬の開発などがあり、主要先進国では1996年以降、エイズ患者数は減少してきました。ただし日本は例外で、エイズ患者数には欧米のような減少傾向は見られていません。

これは、検査に心理的な抵抗を感じる人が多いことなどから、HIV検査が普及しないことが大きな要因です。保健所等での検査は減少傾向が続き、結果的に早期発見・治療に遅れが生じていると思われます。

性感染症に罹患したら、HIV感染にも要注意!

近年、若い女性などに梅毒の患者が急増しています。しかも、梅毒やクラミジア等の性感染症に感染していると、粘膜組織が弱るため、HIVの感染リスクが数倍高まるのです。クラミジアや淋病に感染している場合は3~4倍、梅毒では2倍以上も感染率が高くなると言われています。

また、HIVと性感染症は、重複感染が多いのです。

このグラフは男性間性交渉者に関するデータですが、B型肝炎、梅毒、クラジミアは、HIV感染との重複感染率が60%以上に上っています。つまり、性感染症に感染したら、HIV感染も疑う必要があります。

ネットで買える検査キットも

もし心配ならば、まずは検査することです。HIV検査は全国のほとんどの保健所等で無料・匿名で検査が受けられます。有料ですが、医療機関でもHIV検査は受けられます。

また最近は、ネットで買える検査キットを使い、自宅から検査物を郵送する方法でHIV検査を受けることもできます。

この検査は、非常に感度が高い「スクリーニング検査」です。「スクリーニング検査」で陽性の場合は、HIV感染による「陽性」と、HIVに感染していないのにも関わらず、非特異反応により陽性となる「偽陽性」も含まれています。(スクリーニング検査で陽性となったうち、50%が偽陽性とされています)

そこで、陽性になった場合は、引き続き「確認検査」を実施し、そこで陽性であれば「HIV感染」、陰性であれは「HIV検査陰性(スクリーニング検査の偽陽性)」となります。

検査キットで陽性となった人も、必ず医療機関で「確認検査」を受けて下さい。

街で献血をすれば「HIV検査」もしてくれる…?

日本赤十字社が行う献血では、安全性の高い血液や血液製剤を供給するため、非常に厳格なHIV検査を実施しています。しかし、結果は献血者本人には伝えないことになっています。

その理由は、感染リスクのある人の検査目的の献血を防ぐためです。 もし検査の結果を本人に通知してしまうと、献血が性病検査の代わりと考える人が集まってしまい、 献血の中に感染した血液が混入する可能性が高くなります。

実は、HIV抗体が体内にできて、検査で検出されるようになるまでに、4週間程度の時間がかかるのです。この検査をしても反応が出ない時期をウィンドウ期といいます。(「スクリーニング検査」も、より確実な診断のためには、感染の機会から3か月経過後の検査が勧められます)

「感染したのでは…」と不安に思う人が検査代わりに献血した場合、もしHIV陽性であっても、ウインドウ・ピリオド期であれば、検査をすり抜けてしまいます。そうなると、輸血された患者さんにHIVを感染させてしまう恐れがあります。

例え不安を感じていても、絶対に検査目的の献血は止めましょう!

「死の病」から「慢性疾患」になったが…予防が第一!

世界初のエイズ治療薬は、満屋裕明熊本大学教授が、米国立衛生研究所(NIH)の上級研究員だった87年4月に開発した「AZT(アジドチミジン)」でした。

この薬がエイズ治療の基本路線を決定づけ、これまでに数十種類の治療薬が生まれています。

HIV陽性であっても、エイズ発症前に適切な治療を受ければ、現在の死亡率はほぼゼロです。人工授精や体外受精を行うことで、妊娠・出産も可能になりました。未だ根治はできませんが、「死の病」から「慢性疾患」の1つになったとも言われます。

とはいえ、最も大切なのは予防です。

◆コンドームは性行為の最初から最後まで装着する
◆口を使った性行為でもコンドームを装着
◆不特定多数とは関係を持たない
…といったことを心がけましょう。