日常の生活圏に潜む「殺人ダニ」

「ダニ」と聞くと、畳やカーペットに住むイエダニを連想しますが、全く別の種類で、草むらなど屋外に生息するダニがいます。最悪の場合、死に至る病を媒介するので「殺人ダニ」とも呼ばれるダニ…それが「マダニ」です。

イエダニは1mm未満のものが多いですが、「マダニ」は通常時でも2mm~3mm程度あって、肉眼ではっきり見えます。山の中の茂みや草むら、裏山や畑、河川近辺に生息します。

しかし、郊外の住宅地や都市部の草かげ等にも潜んでいて、人間だけでなく、ペットのイヌやネコに寄生することもあります。

数年前に発見されたばかりの感染症

「マダニ」はいくつかの感染症を媒介します。その中でも、要注意なのは「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」です。

聞きなれない疾患ですが、「SFTS」は2011年に中国の研究者らが発見した感染症で、国内では2013年1月に、初めて感染例が確認されました。通常はウイルスを保有している「マダニ」に咬まれて感染します。また、感染患者の体液との接触、ヒト‐ヒト感染も報告されています。

そして今回、発症している動物の体液に触れての感染が、世界初の事例として報告されました。

致死率高い感染症

感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛、また頭痛、筋肉痛、意識障害、皮下出血といった様々な症状を引き起こし、重症化すると死亡することがあります。しかも、ウイルス感染症である「SFTS」には確立した治療法がありません。

これまでに西日本全域で、累計200人以上の感染患者が報告され、高齢者を中心に50人を超す方が亡くなっています。致死率が高い疾患なのです。「マダニ」は全国に生息しており、今後は東日本でも感染確認される可能性が高いと思われます。

吸血は1週間以上も続く

「SFTS」発症者は、「マダニ」の活動が活発になる5月~8月に多いので、まさに今の季節は要注意です!

「マダニ」は葉っぱなどに身を隠し、人間やネコ等の宿主の体に乗り移り、寄生します。そして、宿主の皮膚が薄い部分を探して吸血を始めます。
わきの下、足首、膝の裏、髪の毛の中などが吸血ポイントです。 しかし、あまり痛みやかゆみを感じないので、気づかないことが多いのです。

1週間以上もじっくりと吸血を続け、その間に「マダニ」はパンパンに膨れ上がり、体重は100倍以上、全長は1cmを超えるまでに大きくなります。

短パン・サンダルは要注意!

そこで寄生に初めて気がつくことが多いのですが、慌てて引きはがそうとするのは危険です。

「マダニ」は宿主の体に突起物を差し込んでいて、さらにセメントのような唾液で体をガッチリ固定しています。無理に引き抜こうとすると「マダニ」頭部や突起物が体内に残ってしまい、後に感染症をきたすことがあります
また「マダニ」を強く掴むと、ウイルスを含んだ「マダニ」の体液が逆流して、自分の身体に「注射」することにもなりかねません。直ちに医療機関を受診して、除去するのがお薦めです。特に、高熱や悪寒などの症状が現れたら、夜間・休日でも救急外来を受診しましょう。

予防策としては、草や木の多い場所では、肌露出が少ない服装にすること。そういった場所での短パン、サンダル履きは不適当です。自然の中で行われる夏フェス等でも注意をして下さい。


(執筆: 高山哲朗)