水災被害は、公的再建支援制度に加え、自助努力が必要

九州北部を襲った集中豪雨では、記録的な大雨が短時間で降りました。
多くの犠牲者が出ている一方で、18日午前7時の総務省消防庁の発表によると、被害の集中する福岡・大分両県では、先月30日からの累計で一部損壊以上があわせて200棟、床上・床下浸水が470棟を超え、家屋の被害も甚大なものとなっています。

大気の不安定な状態が続くなか、18日も、新潟県や福島県では、断続的に猛烈な雨が観測されています。

2014年に広島土砂災害、2015年には関東・東北豪雨と、このところ、大雨被害が頻発していますが、自然災害に対する被災者生活再建支援制度では、住宅が全壊し、建て直した場合でも支給額はあわせて最大300万円で、都道府県で独自の制度を設けているところもありますが、円滑な生活の立て直しに向けては、自助努力での備えを合わせる必要があると言えます。

 
 
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リスクを把握し、保険料とのバランスから判断

集中豪雨や洪水のほか、雨がもたらす土砂崩れなどで、住宅や家財が被害を受ける「水災」に対しては、「火災保険」や「共済」で備えるのが一般的ですが、現在の補償内容が妥当なのか、未契約の場合どのような商品を選択すべきかの判断にあたっては、実際に住んでいる地域で水災に遭うリスクがどのくらいあるのかをまずは把握しなくてはなりません。

近くの河川や山からの距離や高低差など住まいの立地条件を確認し、自治体などが提供するハザードマップも参照したうえで、可能性のある水位や地盤の状態、建物の構造などから、想定される災害の内容を見定める必要があります。
そのうえで、遭遇するリスクの程度と、支払う保険料とのバランスを考慮して判断することになります。

 
 

気温上昇が進むなか、早めの備えが必要

大手損保が販売している火災保険の水災補償は、免責額があれば、それを差し引いて損害保険金を支払うというのが一般的ですが、その多くが「床上浸水」や「地盤面から45センチを超える浸水」もしくは「価格の30%以上の損害」を条件としています。
つまり、「床下浸水」などによる損害の場合は、支払い要件を満たさなくなるケースがあります。

一方で、水災リスクの程度が地域により大きく異なるなか、水災補償を契約者のニーズにあわせて変えられる商品も増えていて、特約などで補償を縮小できるタイプも登場しています。

支払われる保険金の上限を損害額などの7割に設定したり、仮に損害額が建物や家財の価格の3割に達しなかった床上浸水の場合は、契約金額の15%とか10%以下しか支払われなくするなど、補償範囲を抑制するものですが、その代わり、保険料も一定程度安くすることができます。

商品によっては、水災での補償をまったく外し、「不担保」にできるものもあり、保険料負担の軽減効果は大きくなる可能性がありますが、道が舗装された都市部でも、ゲリラ豪雨で排水などが突然あふれる現象が頻発するなか、居住しているのがマンション高層階などではない場合、水災補償を狭めても大丈夫かどうかは熟慮が必要です。

また、これまでの保険をいったん解約し契約し直すというケースでは、水災以外の補償内容が変わってしまう可能性にも留意しなくてはなりません。

ちなみに、地震が原因の津波による浸水被害は、「火災保険」の水災補償の対象ではなく、「地震保険」にセットで加入しておく必要があります。


住まいを取り巻く環境を把握し、支払う保険料とのバランスを考えつつ、必要な補償を選択し、将来のリスクに備える。
温暖化による気温上昇が進むなか、増大する水災の危険性に早めに備える姿勢がますます求められています。
 

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、兜・日銀キャップ、財務省クラブ、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士
農水省政策評価第三者委員会委員